第36話 鉄壁の肉体

 メロスとシンタと修也と執行人隊員達は、お爺さんとの攻防を繰り広げていた。


「執行人相手に単騎突撃とはいい度胸してるよなァ爺さんよォ!」


「貴様らこそ、イレイザーに歯向かうとは良い度胸だ。全員まとめて捻り潰してやる。」


 メロスとシンタと修也はそれぞれ殴りと蹴りをお爺さんに叩き込む。お爺さんは三人をまとめてあしらうように相手をする。三人の打撃はどれも決定打には至らず、戦況は膠着状態だった。しかし執行人隊員達は現状を打破するべく、それぞれが装備を取り出して構えていた。


「三人とも一度離れて!」


 一人の隊員が叫んだ。声を聞いた三人は素早くお爺さんから距離を取り、物陰に身を隠した。


「総攻撃だ!撃て!手榴弾を投擲しろ!」


 執行人隊員達が一斉にお爺さん目がけて発砲し、いくつもの手榴弾をも投げ込んだ。銃声を聞いたお爺さんは両腕を顔面の前に出して身構えた。


「すげェ連携だ……!これが執行人の実力かァ!」


 眩い光と共に、辺りに轟音が響き渡る。強い爆風が吹き荒れ、爆音が大気と地面を強く揺らす。一同の周囲を煙と粉塵が舞い、お爺さんの姿が見えなくなる。


「やったか……!?」


 物陰から顔を覗かせ、様子覗うを一同の間に緊張が走る。直に煙幕が晴れ始める。そんな中、一同は絶句した。


「おいおいマジかよ……」


 そこには無傷のお爺さんの姿があった。爆発の影響で窪んだ地面に、無数の潰れた弾丸が転がっている。そう、どの銃弾もどの手榴弾も、お爺さんの身体に傷一つ付ける事も出来なかったのだった。


「俺の鍛え抜かれた肉体に銃弾など通らない。」


 お爺さんは口角を上げながら堂々と言い放った。


 お爺さんの能力は怪力。年齢に見合わないような常人離れした筋力を発揮できる。またその硬度も凄まじく、その鉄壁の肉体には刃物や銃などは一切効かない。尚、お爺さん自身は自分が能力者だと自覚していない。


「何なんだよこの化け物は…………!?明らかに前よりも強くなってやがる!」


 メロスは眉間にシワを寄せて物陰から焦りを募らせていた。すると、激しい金属音と共に地面が細かく振動する。音のする方に目を向けると、キャタピラを高速で回転させながら猛スピードで突っ込んで来る戦車の姿があった。


「全員耳塞いで伏せろ!」


 戦車から顔を出している隊員が周りの者達に訴えかける。その瞬間、戦車の砲口から一発の砲弾が放たれた。砲弾は空気を切り裂きながらお爺さん目がけて突進する。


 お爺さんは砲弾を避ける素振りを一切みせず、堂々と仁王立している。そして砲弾が顔面に到達する直前に、お爺さんは視界に捉えられない程のスピードで右腕を振りかざした。


「あの爺さん何を…………!?」


 すると次の瞬間、砲弾はお爺さんの手中に収められていた。


「マジかよあの爺さん!?砲弾をガッチリキャッチしてやがるぞォ!」


 熱を帯びた砲弾とお爺さんの指の間から白色の煙が上がる。お爺さんは砲弾を強く握り締めて振りかぶる。そして音を置き去りにして砲弾を真っ直ぐに投げた。砲弾の軌道の先にあったのは戦車。風穴を開けられた戦車はその場で爆散した。


「あの老人には兵器も効かないというのか!?」


 お爺さんに対して万策尽きてしまった一同は、撤退するか否かを思考していた。そんな絶望的な状況の中、メロスは必死に考えを巡らせていた。


 この中で爺さんとの戦闘経験があるのは俺だけだ。考えろ……考えろ……この爺さんをぶっ倒せる決定打を!俺は一度この爺さんを戸部と一緒に退けてるんだ。絶対に弱点がある。あの時俺達はどうした……?思い出せ……思い出せ……!


「そうだ…………!」


 メロスは何かを思いついたかのように、指を鳴らした。


「シンタ!修也!爺さんを思いっきりぶん殴れ!!」


「何を言っている、あの老人に打撃は大して効かないぞ!何を言っているかさっぱり分からん!!」


「そうだよメロス先輩!それじゃ俺達が潰れるまでジリ貧じゃねェか!!」


「お前らはみたいな阿呆ッ……いや、真っ直ぐな奴は何も考えなくていい!だからアイツの腹に渾身のやつを叩き込め!」


 修也はメロスの言葉に対して顔をしかめる事無く、爽やかな様子で親指を突き立てながら答えた。


「何か打つ手があるのだな?分かった、今はお前の言う通りにする!行くぞシンタ!!」


「おうよ副会長ォ!」


 シンタと修也は微塵の迷い無く、お爺さんに向かって突っ込む。


「おらァァァ!!」


「まだ足掻く気か?無駄だ。」 


 お爺さんは再び身構えた。二人の拳がお爺さんに到達しようとする。それと同時にメロスは高速移動で突っ込んだ。


 戸部の蹴りや警棒の殴打は効いていた。つまり爺さんの弱点は打撃!内部に響くくらいの衝撃だ!


 シンタと修也の拳が到達したその瞬間、メロスは二人の背中を後押しした。炎を纏った拳が、メロスの力で更に突き動かされる。


「一度目の衝撃に加えて二度目の衝撃……!これは受け止めきれない!!」


 三人の力に押されたお爺さんは、背後の瓦礫の山へと吹き飛ばされた。


「小賢しい真似を……!餓鬼のくせして生意気な!」


 次第にお爺さんの怒りが露わになる。お爺さんは先程よりも力を増すが、三人の攻撃を耐え凌ぐ事のは歯が立たない。


 その後も三人の猛攻は続く。お爺さんの視界に拳と炎と残像が絶え間なく映る。お爺さんの視界は段々とぼやけ始めた。そして反撃する事も出来ずに一方的な猛攻を喰らい続けた。


「まさか……こんな餓鬼共に…………グハッ……」


 お爺さんはよろけながらその場に倒れ込んだ。お爺さんの巨大が倒れた事で地面が揺れ動いた。その振動は一同を大いに歓喜させた。


 メロス、シンタ、修也の三人は執行人隊員達と喜びを分かち合う体力が残っておらず、疲労で地面に倒れこんだ。


「やっとぶっ倒せた……」


「手強すぎだろこの爺さんはァ……」


「ハッハッハッ、なかなかの強者であったぞ!」


 曇り空の隙間から、三人を祝福するように陽光が差し込む。そんな空を一機のヘリが横切る。


「ああそうだよな。こっからが本番だよな…………みんな、兵十を頼むぜ。」


to be continued

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