第18話 アツいケンカ

 シンタがグラウンドの中央へ向かうと、修也が待ち構えていた。


「おぅ、来たな萬部!」


「へっ、待たせたなァ副会長さんよォ!」


「ハハッ、元気のいい一年生だな!」


「俺の名はシンタ、今からアンタをブッ倒す男だァ!」


「そうかシンタ、俺は光が丘高校生徒会副会長・日野修也だ!今日は俺とアツいケンカをしようぜ!」


「シャァァ!望むところだァ!勝つのは俺、

───いいや俺達 "シンシュン" だァ!」


 部員達はとても威勢のいい二人を眺めている。


「わぁ…二人ともすっごい熱苦しい。」


「息ぴったりだねぇ。」


「あれで初対面とは思えん……。」


 ルロイ先生は、シンタと修也の圧力が凄すぎて中々試合を始められずにいた。


「お前達そろそろ…位置に着いてくれ……。」


 二人はルロイ先生の話を全く聞いていない。


「ハハハッ、その意気だシンタ!」


「かかって来いやァァァァァ!」


 二人が大声を浴びせ合っていると、ルロイ先生の表情がどんどん険しくなってゆく。そしてルロイは両手の人差し指を打ち付け始めた。


「あぁ…ルロイ先生怒ってるよおぉ…。」


「ルロイ先生、とてもお怒りのようだ。」


 部長と会長は危険を察知していた。そしてその瞬間、ルロイの斬撃が飛び出した。斬撃はシンタと修也の顔の横を猛スピードで通り過ぎた。


「っ………!」


「せっ、先生……!」


「お前達は悪い子だ……早く位置に着け……。」


 シンタと修也はルロイの鬼の形相に言葉も出ず、位置に着いた。


「それでは、第二回戦開始!」


 ルロイの合図と同時にシンタは修也に向かって突っ込み、パンチを繰り出す。


「オ゙ラ゙ァ゙!」


 修也はそのパンチを受けてみせた。シンタのパンチはそこから、びくともしない。


「おぉ、いい拳だな。だが、まだまだ未熟だな!」


 そう言うと修也はシンタの腕を掴んで投げ飛ばした。

 シンタは地面に倒れ込んだ。シンタは立ち上がろうとするが、その隙もなく修也に蹴りを入れられる。


「ハハハ、勢いだけじゃ俺には勝てないぞ!」


 修也は笑いながら余裕を醸し出す。


 畜生ォ…コイツ能力無しでもクソ強えェ…!このまんまじゃ負けちまう…。こんな時シュンタならどうする……?


 シンタは考えながら、ふと足下に落ちていた矢に目を留めた。


「これは一回戦の…。そうだ……!」


 シンタは矢を拾って修也目がけて力いっぱい投げた。


「オ゙ル゙ア゙ァ゙ァァァ!!」


 矢は目にも止まらぬ速さで修也に向かって飛んでいく。


「速いっ…!」


 修也は辛うじてシンタが投げた矢に反応し、矢を弾いた。


「なんて速さだ…与一のよりも速いんじゃ───」


「隙ありィィ!」


 シンタは修也の頬にパンチを繰り出した。続けてシンタはパンチと蹴りを繰り返し叩き込んだ。


「ハハッ、やるじゃないか……!」


 修也は少しよろけたが、すぐに体制を立て直した。


「どうだァ!頭を使ってやったぜェ!!俺は小細工なんかァ使わず正々堂々とやるのが好きなんだけどよォ、親友シュンタはこんな風にするからなァァ!!」


 シンタは満足気に言い放った。修也もそれに呼応するように目の色が変わる。


「ハハッ、アツくなって来たな!俺もこの熱が冷めないうちに火を着けさせてもらおうか!!」


 そう言うと修也は身体に力を入れた。


着火イグニッション!』


 修也の両手に火が着き、激しく燃え盛る。


「その炎…もしかしてアンタ……!」


「普段は使わないのだがシンタ、お前は強い。故にここで使わせてもらう!!」


 修也の能力は、身体を燃焼させ火を飛ばす能力。自身の身体に着いている炎、身体から燃え移った炎は、火力や温度などを自由自在に操る事が可能で有る。


「行くぞシンタ!!」


 修也は炎を纏った拳をシンタに振るう。シンタはそれを受け流すが、確実にダメージを蓄積する。


「あ、熱ッ!」


「俺の攻撃を受け流すとはやるな!!ではこれはどうだ!?」


炎縄えんじょう!』


 修也の手から炎の投げ縄が現れた。


縛炎ばくえん!』


 修也はシンタを縛り付けようと炎の投げ縄を投げた。しかしシンタはそれをいとも簡単に躱す。


「………これを躱すだと!?」


 不思議だ…。始めて見る攻撃のはずなのに、見た事がある気がする。シュンタの記憶か?それとも俺はどっかでこの攻撃を見た事があるのか……?


 シンタがあれこれ考えていると、すかさず修也がシンタに攻撃を仕掛ける。


「小細工は効かないようなら、正々堂々と正面から戦うまでだ!!」


「来いよ、俺も全力で応えてやらァ!」


 シンタと修也、二人の拳と拳が激しくぶつかり合う。シンタの拳は修也を凹ませ、修也の拳はシンタを焦がす。


 10分後


 気付けば二人とも、どちらが先に倒れてもおかしくないくらいボロボロになっていた。 


「副会長さんよォ…いい加減倒れてくれよ……!」


「ハハッ、こんなに苦戦を強いられたのは、中1の頃に屈強な輩から少年を助けた時以来だな……!」


「少年を守った……?」


 修也の言葉で、シンタは気が付いた。


 そうだ分かった。あの日、俺はこの人に会っていたんだ。


 シンタの脳内に幼少期の記憶が鮮明に蘇る。


to be continued

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