3話 帰り道でお仕事 3
終会が終わるとすぐに、下駄箱にワープした。豚どもに部活の勧誘で囲まれると面倒だから、あらかじめ回避したのだ。
「えっ、あの子、きれい……」
「たしか、A組の転校生の……」
壁に寄りかかって皇を待っていると、他クラスの生徒たちが私を見ながらひそひそしていたが、豚どものようにこちらに寄ってくることはなかった。
――来た。皇秀英。
皇は私を目に映すと、立ち尽くした。
「途中まで、一緒に帰りましょう。聞きたいことがあるので」
皇は放心しながら、「……はい」と呟いた。
歩き始めると、上から、「おーい! 皇ー!」と声が聞こえてきた。
見上げると、実験室から三人ほどの見知らぬ男が手を振っていた。
「部活、手伝ってほしいんだけど、ダメかー?」
「今日はダメ。明日また声かけて」
「この野郎! リア充になったら爆弾なげてやるからなー!」
「きちんと調合してよ」
驚いた。いつももそもそしゃべっているのに、こんなに大きな声を出せたのか。
休み時間も一人でいるから、てっきりジャパニーズ・ボッチだと思っていたのに、友人もいるとは。しゃべり方も普通。
……これは、もしかして。
女慣れしていない!? それで私の前だと照れて、もそもそと話して……!?
やばい……! 萌える! こんな顔のいい男が私に対してそんなうぶな反応をしているなんて……!
可愛い!
新しい扉が開く音がする……っ!
ん? それであれば、どうしてあんな萌え言動ができるのだろう。
そうだ。そもそもまじめで根暗なこの男のどこからそんな萌え言動が湧いてくるのだ。謎すぎる。
それも調べよう。
「それで、聞きたいのですが」
「おーい皇ー!」
前方のサクラの木の下にいた男たちが手を振っていた。また、部活を手伝ってほしいという声掛けだ。
終わったと思ったら、今度は後ろから、はたまた右から、左から、またまた上から……。
四方八方から声を掛けられる。
――やかましい! 人間の分際で私の邪魔をするなど小賢しい!!
ぶわり。
学校の敷地内に私の力がいきわたった。皇に手を振っていた男たちが皆、動きを止め、各々の活動に戻っていく。
神力を使い、奴らの記憶から一時的に皇の事を忘れさせてやったのだ。
皇はきょとんとした顔をしていたが、すぐに「足を止めてしまい、すみませんでした」と呟くと、歩き出した。
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