3話 帰り道でお仕事 1
『今夜も、乾杯』
きゃ~~~~~~~~~~!!!! 緋王様~~~~~~~~~~!!!!
画面越しの緋王様に乾杯して、一升瓶を飲み干す。
これまでの「ひおさんぽ」を見ながら、乾杯のたびに一升瓶を飲み干していたら、いつのまにか朝になっていた。
夜通し推し活をしていたら、皇への萌え感情はすっかり落ち着いていた。
皇の顔は好きだが、萌え発言をするとき以外の皇に魅力は感じない。顔のよさプラス萌え発言をしたときのギャップの爆発力がどでかくて血迷ってしまっただけなのだ。
一方、緋王様は素晴らしい。普段の姿は涼やかで穏やかな京都人なのに、俳優として演じるとたちまち美しい登場人物になってしまう。普段はおっとりしているのに、激しいアクションも難しいダンスも華麗にこなしてしまうのも良い。しかもその時の本気の顔がもう、かっこよくってたまらない!
緋王様こそギャップの塊。魅力の塊!
緋王様しか勝たん。絶対、一生推す。
リン、と電話のベルが鳴る。
クソハデスか。
ため息をつき、指を動かすと、黒電話が大量の空き瓶の中から苦しそうに浮き上がってきた。
『おはよう、キル・リ・エルデ。三日目の日本だね。気分はどう?』
「いい気分です。どうぞご安心を」
『そう。じゃあ、僕のこともいい気分にしてよ。いい土産話を待っているから』
ガチャリと電話が切れる。
死ね。
私より二、三百年早く生まれ、全知全能の神から西洋の死神を統率するよう命じられたからといって、えらそうに。
私は、安定した堕落生活が送れるがためにこの地位にいてやっているのだ。そうでなければ、私の方が力は上だ。
怒りを鎮めようと、一升瓶をにぎり、日本酒を喉に垂らす。
しかし、一滴ほどしか落ちてこなかった。
あたりを探るが、空き瓶だらけ。
しまった。手持ちの日本酒をすべて開けてしまった。
日本酒は私にとって命の水。これがなくば仕事がままならない。
今日は任務帰りに日本酒を漁りに行こう。
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