1話 サクラでお仕事 7

 ダン!


 一気に飲み干した日本酒の一升瓶を、黒いテーブルに叩き置く。空の一升瓶やらおつまみのゴミやらで散らかった床をまさぐり、まだ開いていない一升瓶を掴む。これで三本目だ。

 悔しくて、飲まずにはいられなかった。

 

 この私が、失敗するなんて……!

 今頃、サクラを見ながら祝い酒を飲んでいるはずだったのに……!


 テーブルの上に、はらりと、髪に刺さっていた何かが落ちた。

 皇が私の髪に挿したもの……。

 それは、ちいさなサクラが二つ咲いた、細い枝だった。


 ……明日は絶対に、仕事を終わらせる。

 そして、本当の花見酒をしよう。


 小さなサクラを見つめながら、胸のざわつきを抑え込むように、甘い酒を口に含んだ。

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