死女神キルコの推しごと

@yumedreem

1話 サクラでお仕事 1

 生きとし生けるものは、すべからく、美しいものを愛している。

 それを眺めて心の糧とし生きている。

 

 我々は、美しいものを愛するために生きているといっても過言ではない。

 

 私のように、永遠の命を持つ神でさえも。


 * * *

 

 暗闇を歩く。

 ヒールの高い音が、果てのない闇に響きわたる。


「呼びましたか」

 

 漆黒の机の前で足を止める。

 私の向かいには、死神結社西洋支部長――ハデスが、深い背の椅子にもたれかかって座っていた。

 

「東洋支部からの依頼が来た。日本に、どの死神にも殺せない男がいるとか。その魂の回収を君に頼みたい。

 死女神しにめがみ、キル・リ・エルデ」


「引き受けましょう。私にできない仕事などありません」


 かくして私は、日本につながる扉の「鍵」を受け取った。

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