第5話 大物〜〜♪ 釣れるかな〜〜♪

 今日はジュージュおじさんに川で魚を釣って孫に届けて欲しいとお願いされた。


 どうやら川でとびっきりビックリするくらい可愛くてデカイ魚を見かけたらしく、それを目撃して以来、飼いたいとねだっているのだそう。


 けど、ジュージュおじさんは腰が悪いため、魚釣りができない。


 そこで私の出番という訳だ。


 ちょうど今日は魚釣りをする予定だったので、早速釣り竿と餌、バケツを持って川に向かった。


 あと、絶対にないとは思うけど、万が一魔物が村に襲い掛かってきても即座に変身できるように球体を持ってきた。


 出来ればチュプリンと一緒に釣りをしたかったけど、どうやら私のペットの猫ちゃん達と遊ばなくてはならない用事があるみたいで同行できないとのこと。


 あいつ、いつの間に仲良くなったんだ。


 まぁ、いいや。


 色々と考えながら歩いていると、川に到着した。


 さてさて、釣りを開始しますか。


 釣り竿に餌を付けると、竿を後ろに引いた。


「いくわよ……そぉおおおおい!!!」


 私は大声を出しながら勢い良く竿を投げた。


 釣り糸がヒューンと飛んでいき、ポチャっと落下する。


 近くに手頃な岩があったので、そこに腰をかけて待つ事にした。


 釣りは忍耐だからね。


 焦っちゃ駄目なのよ。



 暫くボーとしていると、竿がクンと動いていた。


「よしっ! かかった!」


 私は竿を持って引っ張ると、向こうも抵抗してきた。


 グイグイ引っ張ったり緩めたりを繰り返しながら魚と格闘した。


 そして、出てきたのは小魚だった。


 うーん、悪くはないんだけど、私が欲しいのは大物なのよ。


 可愛いサイズだけど、とびきり可愛い訳ではないし……残念。


 小魚を川に戻して、餌を付けてから竿を投げた。


 それから何匹か釣り上げたが、どれも小物ばかりだった。


 はぁ、そう簡単にはうまくいかないよね。


 もうすぐ日が暮れそうだし、駄目でしたって謝ろうかな。


 なんて事を思って竿を投げた――その時。


 今までにないくらい竿がしなった。


 これに私は大物だと直感し、すぐに手に取った。


 おぉ、重い。重いぞ。


 これは確実だ。


 もうすぐ魚の顔が拝めそうだと思った――が。


「モプミさんですか?」


 背後からいきなり声をかけられたので、私は「おひゃべいっ!」と訳の分からない言葉が出てしまった。


 その拍子に竿を動かしてしまい、もう少しで水面みなもから飛び出すはずだった大物を逃してしまった。


「あぁ〜〜!!」


 叫ばずにはいられなかった。


 もしかしたらジュージュおじさんの希望していた『とびっきりビックリするくらい可愛くてデカイ魚』だったかもしれなかったのに。


「もう! 急になに?」


 私は半分怒りで顔を険しくしながら振り返った。


 そこには見知らぬ女性が立っていた。


 薄桃色のストレートヘアを猫の尻尾みたいに髪留めでゆわいていた。


 格好も赤のブーツに白黒のメイド服を着ていた。


 この村の人達の顔や容姿は把握しているので、この子を知らないという事は他所から来た事になる。


「えっと……お名前は?」


 私が聞くと、その子は淡々とし口調で「オーワンです」と何故かスカートをめくった。


 そこには『001』という数字が書かれていた。


 落書きかなと思ったが、それだったら汗で落ちるはずだ。 


 一体何者なんだ。


「あの、私に何のようですか?」

「はい。支配者マスターの命令により、あなたを誘拐しに来ました。もし従わなければ生パンツをいただきます」

「……は?」


 急に何を言っているんだ、この子は。


 オーワンと名乗っていた女性はどこからともなく、ナイフを取り出すと私に向かって斬りつけてきた。


「うわっ!」


 私は慌てて避けたが、その代わりに釣り竿が斜めに切られてしまった。


 この切れ味が私の身体にあたったりしたらと想像するだけで背筋が凍った。


 こいつ、本気で私を襲いにかかろうとしている。マジで生パンツを盗られるかもしれない。


 オーワンはすぐに私に何度もナイフを振った。


「おっ! ほっ! うほっ! はほっ! へへへほっ!」


 私は避けるのに必死だった。


 足場が悪いからか、一歩でも踏み外せば一貫の終わりだ。


 岩にゴンと頭をぶつけるのは嫌だ。


 かといって刺されるのもごめんよ。


 身の危険を感じながら私はポケットから球体を取り出した。


 チュプリンいないけど、使えるのかな。


 まぁ、いいや。試してみよう。


「メチャラモート!」


 私はそう叫んだ。


 すると、彼女は何かを察したのか、少し離れて構えた。


「うにゃあああああああ!!!」


 すると、天の方から叫び声が聞こえきた。


 見上げてみるとチュプリンが空を飛んでいたのだ。


 チュプリンは球体に吸い込まれ、変身する事ができた。


 なるほど、この球体さえ持っていればいつでも変身できるのね。


「よーし、この姿になったらもう怖いものはない! やってやるわよーー!!」


 私は肩を回して、オーワンと対峙した。


 彼女は私の容姿が変わっている事に戸惑っていた。


「はい、はい……あれが注意すべき姿だったんですね。申し訳ございません、支配者マスター……はい、気をつけます……」


 私が話しかけていないのに、ブツブツと独り言を呟いた後、ナイフを持ち直して突進してきた。


「ポポポポーー!!」


 私は両手を出して呪文を唱えると、赤いオークにやった時と同じような風が吹いた。


「え? きゃあああああああ!!!!」


 オーワンは風で飛ばされ、あっという間に空に消えてしまった。


「よし、いっちょ上がり!」


 私は拳を突き上げて喜びを表現した。


 さて、釣りの再開を……と思ったけど、釣り竿が壊れちゃったら。何もできないや。


 万事休すかと思ったが、ふと自分が魔法少女だという事を思い出した。


 もしかして魔法で直せないかな?


 そう思い、釣り竿に向かって呪文を唱えた。


 すると、あら不思議!


 真っ二つだった釣り竿が新品同様に生まれ変わったのだ。


「魔法ってすごーーーい!!!」


 ようやく魔法の凄さが分かり感動していた。


 さて、危機は乗り切ったので釣りを再開しますか。


 竿に餌を付けて放り投げた。


 すると、球体からチュプリンが飛び出してきた。


 それと同時に変身が解除された。


「もう! 急に変身しないで! もうすぐでボス猫と親睦が深まりそうだったのに……」


 チュプリンは自分の予定が邪魔をされて怒っていた。


「ごめん! ごめん! 実はかくかくしかじか……」


 私はオーワンと名乗るが急に私の命を狙って来た事を伝えると、チュプリンの顔が曇った。


「ねぇ、まさかとは思うけど身体のどこかに数字が刻まれていなかった?」

「え?……あぁっ! あったよ! 太ももに『001』って……何か知っているの?」


  私がそう聞くと、チュプリンは何かを考えていて答えなかった。


「思い出した!」


 しかし、急に声を上げたので、危うく岩から落ちそうになった。


 すると、ポチャっと魚が跳ねる音がした。


 チラッと見てみると、かなりのサイズでお目々がウルウルしている魚を見つけた。


 もしかしてあれがジョージュおじさんの孫が言っていた魚かな?


 なんて思っていると、竿が折れるのではないくらいしなっていた。


 これは間違いない。


 私はすぐに竿を掴んだ。


 もちろん、大物なのでそう簡単にはいかない。


「チュプリン、バケツに水をくんで!」


 大物と格闘しながらチュプリンに頼んだ。


「……え?」


 突然の頼みに彼女は戸惑っている様子だった。


「早く!」

「あ、う、うん! 分かった……」


 私が催促させると、チュプリンはようやくバケツを口にくわえて走った。


「ぬぉっ! くっ! いけええええええ!!!」


 竿がこのまま折れるんじゃないかと言わんばかりにしなっていた。


 絶妙な力加減でグイグイ動かす。


 そして、雄叫びと共に思いっきり引き上げた。


――ザパーーン!!!


 水しぶきと共に現れたのは、さっき見たのと同じ魚だった。


 お目々がウルウルの魚だ。


「よっしゃーー!! 釣れたーー!!」


 お目当てのものが連れて、私の気分は最高潮だった。


 ちょうどいいタイミングでチュプリンが重たそうにバケツを運んできた。


 私は受け取ると、手早く魚を竿から放して、バケツの中に入れた。


 小さめのサイズだったからか、バケツが揺れるぐらいビチビチ暴れていた。


 どうにか逃げ出さないように抑えると、ジョージュおじさんの孫に向かった。



「ありがとう! モプミお姉ちゃん! 大切に育てるね!」


 すきっ歯の孫娘にこれでもかというくらい感謝のチューを受け取った後、家に向かった。


「そういえば、なんか話していたけど、何だったの?」


 私が隣で歩いているチュプリンに話しかけた。


 白猫は「あぁ、そうだった。えっと、さっきあなたが戦っていたのは人形だと思うの」と言った。


「人形? 人形って……見た目完全に人間だったけど」

「噂でしか聞いた事ないけど、昔人形遣いがいて、それを兵器にしたとかどうとか……うーん、あんまり詳しくないから分からないけど」


 うーん、世の中には私の知らない事がいっぱいあるんだな。


「じゃあ、オーワンは誰かに操られているってこと?」

「そうなるわね」

「誰だろう」

「うーん……」


 すると、チュプリンからクゥーとお腹が鳴った。


 たちまち顔を赤くする白猫。


「アハハハ! お腹すい……」


 笑ってやろうと思ったが、私も大きめのを鳴らしてしまった。


 お互い顔を合わせ、プッと吹き出し、笑った。


「……今日の晩御飯何だろうね」

「うーん……カボチャのシチューかな?」


 今日の夕飯の話をしながら夕焼けに染まった空の下を歩いた。

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