不器用アラサーが転生して

@coh

第1話 生きるのが辛すぎる

「同時に作業できない。電話しながらメモをとるの難しすぎ!」


舞歌は嘆く。

なんで皆が普通に出来ていることが苦手なんだろう。


「早く仕事回して。」

先輩が早口で迷惑そうに舞歌に言葉を放つ。


「はぁ」

舞歌は、はいと言いたかったが滑舌が悪く元気が出なかったので、溜息のような返事になった。


舞歌は眼鏡屋に勤務して6年ほど経つ。

仕事は慣れない。苦手な作業ばかりで。


まず予約とかの電話は本当に苦手。

空いている日時を確認しながら、相手の希望を聞くとか難易度高すぎる。

しかもお客さんに担当者指名をされると、出勤カレンダーを見て担当に確認するという作業も上乗せされる。

うーん、苦手すぎる!


次に眼鏡の営業。

販売ノルマがあって、苦しすぎる。

お客さんに売らないとっていう店長からのプレッシャーと

お客さんは買いたくないっていう無言の拒否圧力で挟まれる。

メンタルが削がれる。本当に。


レンズの発注も、なんだかんだで苦手。

毎回レンズの設計とか機械で操作するから嫌になる。

ワンパターンじゃないから先輩に聞くと、

「毎回聞くな」

と怒られる。


毎日1個はミスをする。

ミスをカバーするのも苦手。

でも自分でどうにかしないといけないからストレスが溜まる。


プライベートでは

独身のアラサーで彼氏はいない。


毎日の楽しみは夜に動画を見ること。

時間を消費しながら、歳をとることにしている。

何かにチャレンジすることに本当に疲れてしまったのだ。


夜の暗闇がしんとして、風が服に入ってきて心地良い。

風は初夏の匂いがした。

知らない鳥の声が聴こえて、なんだか聴き入ってしまう。


五感が鋭い舞歌は自然の中だと落ち着けるのだ。現代は本当に刺激が多すぎる。


ベッドに横になると、すぐに眠りについてしまった。

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