ネココネコネコネコ

夕日ゆうや

1ネコ 「晴天ときどきネコ」

「にゃー、にゃ?」

(ネコのマネをしている少女)


「あ、いや。これは……!」


「ネコを呼んでいたのよ。悪い?」


「え。きみも?」


「ふ、ふん。そんなことを言って、騙されないんだからねっ!」


「てっ。その制服、うちの高校じゃない」


「え。転校生? そうなんだ。じゃあ、学校を案内するよ」


(ニャーン)


「ネコちゃんも一緒にいこっ」(少し弾んだ声)


「さ。君もいくよ」

(カツカツと歩き出す音)


「そういえば君の名前は?」


「わたし? わたしはルナ。天城あまぎルナ。よろしくねっ!」


「なによ? その顔。こんな美少女と一緒に登校できるなんて、嬉しいでしょう?」


「……なんだか、困る反応だね」


(ニャーン)


「それよりもこの子、捨てネコかな?」


「一緒に里親さがそ?」


「えー。つれないなー。せっかくの美少女と仲良くなるチャンスだよ?」


「自分で言って恥ずかしくないか? って、もうそう思うのなら、素直になりなさい」


「なによ? 胸ばかりみて」


「ふふ。いいわよ。それよりも手伝ってくれるわよね?」


「素直でよろしい。じゃあ、学校についたら友だちに相談だね♡」


「え。友だち、いない……? だ、大丈夫! わたしが友だちだし!!」


(恥ずかしさで顔を赤くするルナ)


「ええと。まあ、そう言う訳! いい?」


「ふふ。素直ね。嫌いじゃないわ」


(クスクスと笑うルナ)


「そうだ。この子、病院で診てもらわないと」


「え。その必要があるか? って?」


(おとがいに指を当てて考えるルナ)


「そりゃ、予防接種とか、健康状態の確認とか。必要だと思うよ?」


「なんなら病院で里親を探すのもアリね。経験者の方が預けることもできそうだし」


「なによ。わたしの見た目がちょっと目立つからって、真面目じゃないと思ったの?」


「素直すぎるでしょ、君。友だちがいないの、分かってきた」


「あー。ごめん、落ち込まないで! だって君、からかいがいあるんだもの」


(微笑むルナ)


「とりあえず動物病院いこっか?」


「ほら、ついてくる」


(病院のドアが開く音)


「すみません。捨てネコを拾ったのですが」

「あら。ずいぶんと可愛い子ね」

(助手がクスッと笑う)


「はい。この子はすごくかわいいです」

「いえ、あなたのことよ?」

「かっ! かわいい……!」


「いや、それよりもこの子の体調や予防接種を」

「はい。分かりました。……首輪はついていないみたいですね」

「そうなんですよ。里親も募集したくて」

(説明するルナ)


「分かりました。少しお待ちくださいね」

(ネコが連れていかれる)


「すべて終わりました。予防接種もしました」

「ありがとうございます。いこ?」


「ネコちゃんじゃなくて君だよ、君」

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