第6話 浸食の序幕
先輩って、あの先輩の事か?
と、いう事はこの
頭上に複数のはてなマークが浮かび上がる。
まあ普通に考えたら学校、だよな……。
少なくとも俺はこの
といっても選択的ボッチ(自称)で一日中机に根を張ってる俺がクラス以外の人間を知る
「そういえば。まだ自己紹介してませんでしたよね?」
彼女は手をポンと合わせて、嬉しそうに顔を綻ばせた。
いったい何がそんなに嬉しいのだろうか。
それに
そんな俺の気持ちなどお構いなしに彼女は自己紹介を始めてしまう。
「私は
くら、しな……?
やっぱ聞いたこともない名前だ。
ただ身体の成熟ぶりを見る限りでは高校生……の可能性が高そうか。
「ちなみに君は高校生だよな?」
「君って。いま名前を言ったばかりなんですけど」
「そうだったな。
そこで彼女はやっと首を縦に振る。
「はい。今年入学しました」
じゃあ一年で確定か。
敢えて学年を言わないのは
「君はこの辺りの高校? もしかして近くの正南高校か?」
「名前で呼んでください。
なんで初対面から女の子を下の名前で呼ぶんだよ。
どんな陽キャだよそれ。
「無理だろそんなの」
俺の事見て分かんないのか、ボッチ舐めんなよ。
「じゃあせめて
なんなんだこの
可愛いけど、かなり残念な
「もういいよ。そもそももう会うこともないんだしさ」
もし万一同じ高校だとしても俺の行動範囲の狭さを考えればほぼ会う事はないだろう。
それにこんな陽キャっぽい奴に関わったらせっかくの平穏な学生生活が大きく乱されそうだ。
「ほんとつれない。告白までしたのに」
「だからあんなの嘘だろっ。ばかばかし過ぎだって」
「本気ですっ。嘘じゃありません!」
彼女は両手をぎゅっと握り、瞳をうるうると潤ませながら俺を見つめてくる。
あり得ない。絶対からかわれてる。そうだと分かってるのに……。
吸い込まれるような彼女の大きな瞳に、俺の何か大事な部分が溶かされてゆきそうになる。
駄目だ。冷静になれ、俺!
それに俺には
……いや。もう、いないのか。
「なんなんだよいったい。ほんと悪い冗談はやめてくれよっ」
「どうしても信じてくれないんですね。下着を見られてまで助けたのに……」
彼女はそう言うと、頬を膨らませながら胸とパンティラインの辺りを腕と手で隠した。
白い腕と手の奥にあるイチゴ柄の下着が透けて浮かんでくる。
くそ。隠された場所を想像で補ってしまうのはきっと俺のせいじゃ無くて、俺の
「だからあれは不可抗力でっ」
そうだ、不可抗力だ。……少なくとも始めは。
それとこの
彼女はそんな俺を見て、はぁと軽く溜息を
「分かりました。あんまりしつこくして嫌われるのも
「だから今日はじゃなくて。もう会わないって」
「そんなことありません。私から会いに行きますから」
そう言うと彼女はさっさとマンションと反対側へ駆けて行ってしまった。
なんで俺を待ち伏せしてた彼女が反対方向に走って行くんだ?
っていうかそもそも何で待ち伏せ出来たんだよ。
あぁもうっ。訳分かんねぇ。
っていうか、なんかめちゃくちゃ疲れた……。
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