11番牢の異形 ~射干玉綺譚~
星羽昴
第1話 魔狼を屠る者
何て大きな人狼なんだ!
僕を守ろうとした騎士は、人狼の右腕の一振りで引き裂かれる。肉片の混じった血しぶきが僕の顔にまで届いた。
「うわぁぁぁ!」
生臭い臭いとヌルリとした感触に、思わず悲鳴を上げてしまった。
グルルル……
頭に突き立った耳をピクピクとさせながら、人狼の眼は僕に向いた。人狼がもう一度右腕を振り上げたとき、僕は恐怖で目を瞑ってしまった。
……!
予想した痛みが来ない。
恐る恐る目を開けると、人狼は姿を変えていた。頭は何かに囓り取られ、黄金色だった毛並みがみるみる黒ずんでいく。
「一体……何が起こったんだ?」
黒くなった人狼はヒビ割れて、更に黒い砂になって崩れ落ちていく。地面には狼の死骸が転がっていた。
女の人が近づいてきた。ボロボロの布を身体に巻き付けただけの姿だけど、とても綺麗な女の人だ。長い黒髪が風に靡いて、そこから覗く白い顔。僕の顔を覗き込んだ双眸は、髪と同じく黒い色をしていて、まるで射干玉の宝玉のようだ。
けれど、彼女は人間じゃない。ボロ布から突き出した右腕には鷲や鷹のような鉤爪があり、左脚には蛇が巻き付いている。しかも、その蛇は女の身体から生えているように見えた。
「若様!ご無事ですか?」
マーリンが5人の騎士を連れて駆け付けてくれた。
マーリンは、僕の父の下で魔の研究をしている魔道士だ。父の信頼も厚い。領主である父の騎士団は、このマーリンの護符や呪具で魔物と戦い、何度も退けている。
マーリンは僕の身体を抱きかかえると、軽く撫でて傷を調べる。怪我がないのを確認してホッと安堵のため息を漏らした。その間に4人の騎士が、槍を構えてボロ布を纏った彼女を取り囲こんでしまう。
僕を側に残る騎士に預けると、マーリンは立ち上がって騎士に囲まれている彼女に近づく。
「全く魔力の底が解らぬ。深いのか浅いのか、それすら読めぬ。だが、魔狼を屠った以上は相当な力を有した魔物に違いあるまい」
マーリンの左手が振り上げられて、幾種類もの護符が撒かれた。
彼女の周囲に白い靄がかかって、綺麗な顔が苦痛に歪む。ガクリと膝が折れて、地面に膝をついて項垂れてしまう。
……カチャン
彼女の首に、鎖に繋がった首輪が嵌められた。マーリンは「ふん」と鼻を鳴らした。
「隷属の首輪だ。私が魔力を込めれば、お前の身体は消滅する。逆らおうなどとは考えないことだ」
膝をついた彼女が、顔を上げてマーリンを睨め付ける。
「ほう、人の言葉を解する知恵があるのか。思わぬ拾いモノだ」
マーリンの顔には
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