孤毒〜カバマダラ〜
言ノ葉 隅
プロローグ 「邂逅」
日本の9月というものは肌寒くて困る。温暖化なんてのは所詮言葉だけで、実際は寒冷化してるんじゃないのかなんて思うほどだ。
「うぅ〜寒ぃ。校舎内で煙草の1本も吸えやしねぇってのも不便なもんだぜ。」
誰に向けた訳でもない愚痴をこぼしながら屋上への扉へと手をかけた。4階建ての校舎の屋上というのはやはり風が冷たいな。そんなことを思いつつ顔を上げると、そこには1人の少女が立っていた。いや、立っていたという表現は間違いに近いかもしれない。限りなく正解に近い言い方をするならば、重心をまだ地に残していた、という感じであろうか。飛び降り防止のためを挟んで俺と彼女は向かい合っていた。
「貴方も私の邪魔をする人?」
そう語りかけてきた彼女の瞳は、儚くも切なくもあり、なんとも形容し難い美しさがあった。それこそ、まるで毒を持った美しい一頭の蝶のようであった。
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