第4話 失われた声(続き)
「この家の守り手…?」香織は女性の言葉に驚きと戸惑いを隠せなかった。「どういうことですか?」
女性は静かに頷きながら、石碑の前に進み出た。「ここには古くから続く秘密があるのです。私はその秘密を守るために存在しています。」
涼介が一歩前に出て質問した。「あなたはその秘密を知っているということですか?」
「はい。」女性は頷き、続けた。「ここには強力な妖怪を封印するための力が宿っているのです。その力は時折、封印を破ろうとする存在によって動かされることがあります。」
香織は石碑を見つめ、その言葉の意味を噛み締めた。「その妖怪というのが『鬼太郎』なのですか?」
女性は再び頷いた。「そうです。『鬼太郎』はかつてこの町を守るために存在していましたが、何かが彼を封印し、その結果として姿を消してしまいました。」
「では、その封印を解く方法はあるのですか?」涼介が尋ねる。
女性は少し考え込んだ後、答えた。「封印を解くためには、特定の儀式を行う必要があります。その儀式には、純粋な心を持つ者が必要です。」
「純粋な心…」香織は自分の胸に手を当て、考え込んだ。「その儀式を行うことで、『鬼太郎』は再び現れるのですか?」
「はい。」女性は確信を持って答えた。「ただし、その儀式は非常に危険です。妖怪の力が解放されると同時に、封印されていた力も解き放たれる可能性があります。」
香織は決意の表情を浮かべた。「でも、私たちは真実を知りたい。そして、この町を守るために『鬼太郎』の力が必要だと思います。」
涼介も同意した。「香織の言う通りです。私たちはリスクを承知の上で、この儀式を行うべきです。」
女性は二人の決意を見て、ゆっくりと頷いた。「分かりました。それでは、儀式の準備を始めましょう。」
女性は石碑の周りに特定の模様を描き始め、古代の言葉を口にしながら呪文を唱えた。香織と涼介は緊張しながらその光景を見守った。
やがて、石碑が淡い光を放ち始め、周囲の空気が変わったのを二人は感じた。風が吹き荒れ、地面が震える中、香織は心の中で『鬼太郎』の姿を思い描いた。
「これで全てが終わるわけじゃない。でも、ここから始まるんだ…」香織は自分に言い聞かせるように呟いた。
儀式が進むにつれ、石碑の光はますます強くなり、その中心から何かが浮かび上がってきた。それは、小さな子供のような姿をしており、香織の記憶の中にある『鬼太郎』の姿そのものだった。
「彼が…『鬼太郎』…?」香織は息を飲んだ。
影の中から現れた『鬼太郎』は、ゆっくりと香織たちの方に歩み寄った。彼の目には何かを訴えるような光が宿っていた。
「ありがとう…」『鬼太郎』の口からかすかに声が漏れた。それはかつての記憶の中の声と同じだった。
香織と涼介は、『鬼太郎』の姿に驚きつつも、その真実を目の当たりにしたことで、新たな決意を胸に抱いた。
これから待ち受ける試練に立ち向かうために、二人は手を取り合い、再び歩みを進めることを誓ったのであった。
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