第22話 歓迎会?

「おはよー」


朝の掃除をしていると、初めて見る女性が事務所のドアを開けて入って来た。


「おはようございます」

「え……」

「柚木沙羽といいます。事務として働いてます」

「あ、そうなんだ。女の子! 会社の中で久しぶりに見る! 枝間涼です。よろしくね。私、ほぼ在宅で、滅多に出社しないから会うの初めてだね」

「お会いできて嬉しいです」


枝間さんは、ショートカットの似合う、すらっとした美人だった。


「柚木ちゃん、何歳?」

「26歳です」

「26……若ーいっ。わたしなんてもう28だよーっ」

「そんな、変わらないじゃないですか」

「あーっ! 枝間さんしばらくぶりです」


枝間さんと話しているところに、優木さんが出社して来た。


「波留くん相変わらず元気そうだね。それに相変わらずの童顔」

「はい。これ、結構得なんですよ」

「かわいいフリして仕様変更を取り下げてるんでしょ?」

「人聞きの悪い」

「ねぇ、柚木ちゃん、波留くんの年知ってる?」

「いいえ」

「こう見えて、彼、28だから。見かけはどうみても23、4でしょ?」


てっきり同じか少し下だと思ってた……


「彼、訳アリだから」

「その誤解を生むような言い方、勘弁してくださいよ」

「鴨白くんは?」

「元気です」

「久しぶりにみんな揃うってことは、飲み会だね」

「ですね」


みんな?

確か久山さんという人がいると聞いた気がしたけど?


「あの、久山さんという方も今日は来られるんですか?」

「ああ、久山くん? あいつは福岡にアウトレットモールのオープン手伝いに恩師に連れて行かれてて、いつ帰って来るかわかんない。柚木ちゃん、歓迎会してもらった?」

「優木さんに」

「鴨白くんには?」

「いえ」

「あいつはダメダメだね。今日は柚木ちゃんの歓迎会に決まり」

「枝間さんは、どうやったって飲む方向にもって行きたいんですね」

「いいよね、柚木ちゃんも?」


断れる雰囲気ナシなんだ。


鴨白さんが出社すると、枝間さんは早速飲み会の話を始めた。

それを鴨白さんはにこやかな顔で聞いている。


「じゃあ、今日はもう帰って来ないから。後でね! ほら、鴨白くん急いで!」


枝間さんは、出社したかと思ったら、鴨白さんを連れて嵐のように去って行った。


「枝間さんは、相変わらずだなぁ。お店、後でメールしとくよ。僕も今日は昼から出かけたら帰って来ないから、時間になったら戸締りしてお店に来て」

「わかりました」



優木さん、年上だったんだ。

そうなると、優木さんの態度から見て、鴨白さんは優木さんより上のはずだから、30手前ってことになる。

優木さんも大概だけど、鴨白さんも童顔なんだ。

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