第10話 優木さん
「おはよーございます」
優木さんだった。
「おはようございます」
「改めまして。優木波瑠です。よろしく」
「柚木沙羽です。よろしくお願いします」
「早速だけど、コーヒーとか入れてもらうの頼んでいい?」
「はい。教えていただけますか」
「こっち来て」
パーテーションで区切られた向こうの、給湯設備があるところに案内してもらい、一通り説明を受けた。
「マグだけど、黒が鴨白さん、茶色が僕。で、ピンクが枝間さんで、青が久山さん。みんなにはいつかは会えるよ。それで、コーヒーは基本的にここのエスプレッソマシーンを使うから、そこの説明書読んで使い方覚えて。鴨白さんだけ紅茶で、この缶に茶葉があるから。紅茶は無くなりそうになったら、鴨白さんに言って。大丈夫そう?」
「はい」
「沙羽ちゃんも自由に飲んで。自分のマグ持ってきたらいいよ。今日はこっちの余ってるマグを使って」
いきなり下の名前で呼ばれて、優木さんの顔を見たけど、にこにこしている。
この人はこういう感じの人なんだ。
メモをとりながらいろいろ聞いていると、鴨白さんが優木さんを呼んだので、優木さんは行ってしまった。
それで、エスプレッソマシーンの説明書を読むことにした。
丁寧に淹れた紅茶を鴨白さんに持って行ったけれど、フル無視だった。
一方で、ボタンを押して淹れただけのコーヒーなのに、優木さんは「ありがとう」と笑顔を見せてくれた。
自分の分のコーヒーを持って席に着くと、領収書の入力の続きを始めた。
隣があまりに静かだったので、そっと横を向くと、鴨白さんは真剣にPCのモニターを見ていた。
何を見ているのかはわからなかったけれど、黙っていれば、端正な顔のイケメンであることは間違いない。
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