七つの大罪-共食いの章-

七星北斗(化物)

1.始点

 失敗作だと親に捨てられ、それでも悪いことはしていない。


 奪われた人生だった。


 常に何かに怯えて生きてきた。


 こんな人生に何の意味があったのか?


 僕は行き倒れの魔女を助けた。しかしそれがいけなかったのだ。魔女を匿ったとして、拷問を受けた後、僕と魔女は処刑された。


 出会ったときから魔女は、理解できない言語を話して泣いていた。


 生まれ変われるなら、この魔女のような悲しい存在を助けたい。


 だけど死ぬときが、一人じゃなくて少し安心した。熱は僕を包んだ、人は恐れと怒りの言葉を囃し立て笑っている。


 焼かれながら声一つ上げない僕、魔女は唱える貴方へのありがとうの魔法を。


 七つの大罪、暴食の罪。その刻印を僕に託して。


 目を覚ませば痛みもなく、変哲のない家屋の前に立っていた。


「入ってこい」


 濁ったガラガラな声の主は、僕を呼んでいる。


 扉を開けば独特なツーンとした刺激臭がした。中を見渡せば様々な動物の骨など、よくわからない物がたくさんあった。


「珍しいか、小僧」


 声を辿れば奥のテーブルに黒猫がいた。声の主は、どこにいる?


「ここにいるぞ、ワシだ」


「えっ!黒猫さん、喋れるの?」


「ワシは二千年の時を生きた黒猫ぞ、その程度の言語は身に付けておる」


「黒猫さん、ここは天国ですか?」


「そんなものを信じて死ねるのは、大変滑稽だな」


「じゃあ地獄なの?」


「天国や地獄は、人間の作り出した創作物の話だ」


「なら、ここはどこ?」


「分岐点とでも言っておこう。しかしこんな小僧が、大罪の役目とはな」


「大罪?僕は罪なんて」


「この世界には、七つの罪が存在する」


「七つの罪?」


「【傲慢】【強欲】【嫉妬】【憤怒】【色欲】【暴食】【怠惰】の七つだ。これらは人間の生きる糧であり、理由なのだ」


「僕たちは罪を食べて生きているの?罪が生きる理由?」


「そうだ小僧、それが性なのだ。奇しくもお前は、【暴食】の大罪人に選ばれた」


「暴食の大罪人?」


「同族を食べることで、その能力を奪える。相手が女であれば食わずとも、行為をすれば奪うのも付与するのも自由だ」


「僕はどうすればいいの?」


「お前が決めろ、自らの欲望に耳を澄ませ。そして罪を世界へ刻み付けるのだ」


「難しくてよくわからない」


「今はまだわからずともよい、どうせすぐにわかるようになるのだからな」


「わからないけど、頑張ってみる」


 黒猫が笑うと、なんだか急に眠たくなってきた。


「今は眠れ、今度こそよい人生を歩めるとよいな」


 視界がぼやける、もう意識が保っていられない。


 地面に倒れて、僕は眠ってしまった。

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