愛が欲しかった
しずく
第1話
人生とは何なのか、今まで生きてきた時間で何を手にして何を手放してきたんだろう。
そう考えたら自分の人生の振り返りを、少ししてみたくなった。
文才もない、駄文になるだろうけど書いてみたくなった。
私の人生の振り返りの始まり・・・よかったらお付き合いください。
1985年の夏の終わりに私は産まれた。嵐の中母親のお腹を最後に蹴り、この世に生を受けた。当時のことを私の母は「きっとこの子は男の子だ」と思うくらいの蹴りをお見舞いして出てきたらしい。
当時はお産婆さんで産むことが割と普通だったらしく、私はそこで生まれた。
母は二人目の出産ということで、陣痛から2時間という速さで私を産んでくれた。
夜中に産まれたということで、父や兄は産まれた日の昼間に面会に来たらしい。
ここで簡単に私の家族構成を話しておこうと思う。
母はバツイチで兄を一人で育てて生活をしていた。夜に働いていたスナックの客として、飲みに来てたのが私の父だったらしい。何回か通い父は母に交際を申し込んだと言う。
母は戸惑ったらしい。バツイチ子持ちで、生活の為に夜の仕事をしていただけだったから、交際を申し込んでくるような人が現れるとも思ってなかったらしい。
父は初婚、母の生活状況を知っても尚、一歩も引かずアプローチを続けたらしい。
「俺が父親になる。生活もすべて面倒を見るから一緒になってくれないか?」
不器用な父の最大限のプロポーズだったんだと思う。
兄は私の4つ上で、小さいころから気が小さく、でもとても優しい男の子だった。
再婚相手になる父とも最初こそぎこちなかったようだけど、父も歩み寄り徐々に距離感を縮めていって再婚に至ったらしい。そして再婚後にできたのが、私ということ。
話を戻して私が生まれてから幼稚園までは割愛しようと思う。記憶も特になく、面白みも無いから(笑)
4つ離れた兄は私をすごく可愛がってくれた。妹ができたと、とても喜んでくれたらしい。先ほども記載したが兄は気が小さく、私が幼稚園の頃父に車に煙草を忘れたから取りに行ってきてくれと言われ、一人じゃ怖いからと当時4歳だった私を誘い暗い車までの短距離ですら妹の後ろに隠れるような兄だった。
そんな兄だから同級生からも弄られることがあり、泣きながら帰ってきた話がある。
私は兄と違い男勝りの性格で「お兄ちゃんをいじめたやつを許さない!!」と、傘を持って仕返しに行ったらしい。頼もしい妹だっただろう(笑)
さて私は保育園から幼稚園に切り替わった経験をしている。
保育園の時私がお弁当をひっくり返してしまい、保育園の当時の担任は代わりの食事を摂らせるでもなく、親に連絡することもなく帰宅させたらしい。
保育園の帰り道にお腹すいたという私の話を聞いて、母は保育園にすぐに連絡を取ったが「娘さんが自分でひっくり返したので、こちらに非はない」の一点張りだったらしく、母は父に相談しその保育園から幼稚園に途中入園という形になった。
この頃には実は母はうつ病を発症していた為、入退院の生活が当たり前になっていた。兄は母方の祖父母の所に預けられ、私は父方の親戚の所に頻繁に預けられていた。どうして兄妹別だったかというと、母の祖父母が連れ子である兄まで父方に預けるのは申し訳ないと思ったらしい。
父は電気工事士として自営業で働いていたが、当時の母の入院費も生活していくお金も稼がないといけなく、私たち兄妹は預けらることが増えていた。
週末は兄が一時帰宅したりしていたので、兄妹で遊べることが嬉しかった。異性の兄妹にしては周りからも仲がいいと評判だった。
でもそんな生活も急に幕を閉じることになった。
入退院を繰り返していた母と父が喧嘩をすることが頻繁になった。父はもともとお酒を飲むのが好きだったのもあったし、母の情緒に少し振り回されて疲弊していたのもあるんだろう。
たまにしていた喧嘩が、毎日の様に繰り返されていった。酷い時には喧嘩の声で起こされ、母が包丁を握り振り回してる時もあった。
そしてその日は来た。今でもはっきりと思い出せる。
日曜日で家族がみんな揃っていた日だった。お昼頃突然父が「ホームセンターに行くから、お前も付いて来い」と言われるまま私だけ連れて買い物という名目の元、連れ出された。父が電気工事士だったからよくホームセンターに買い物に行っていたから、その時の私は特別違和感も感じなかった。
父は工具売り場、私はおもちゃ売り場やペットコーナーを見て数時間が経っていた。
帰る間際「お父さん、お家で待ってるお兄ちゃんにもお土産買っていい?」とおねだりして無事にお土産を手に入れた。お兄ちゃんの好きなお菓子と、私の好きなお菓子。交換しながら仲良く食べようって、ウキウキしながら自宅に向かったのを覚えてる。
自宅に着いて玄関を開けたら、そこに広がってたのは荷物の減った光景だった。
ぽつんと大きな箱のおもちゃと、茶色の封筒が置かれていて母と兄の姿はなかった。
「この手紙を読みなさい」5歳だった私は何が起きたのか、状況も呑み込めないままその封筒を開けた。
大好きな母の字がそこにはあった。
もう一緒には住めない事。残念だけど兄とも別々になること。
綺麗な字ではなかったけど、ひらがなを覚えたての私でも読める内容だった。
「お母さんとお兄ちゃんはどこに行ったの?いつ帰ってくるの?どうして私は置いていかれたの?」父に間髪入れず質問しながら、もう戻ってこないんだろうと手紙で察していながら泣きながら父に答えを迫った。
「ごめんな、許してほしい」父はそういうとそれ以上何も言わなかった。
「お父さん、お兄ちゃんと食べようと思ってたお菓子はどうしたらいいの?一人で食べるの嫌だよ・・・」
沈黙が流れて私はそれ以上、父に詰め寄るのをやめた。お菓子は手を付けることが出来ず、いつか一緒に食べれると信じて大切にしていた記憶がある。
離婚が成立してから、私は幼稚園の後は学童に通い夜は父方のひいおばあちゃんの所に身を寄せていた。そこで私はひいおばあちゃんから料理の基礎を教えてもらった。
5歳の私にはリアルおままごとの様で楽しかった。
トマトの皮の向き方、包丁の様々な使い方など毎日が楽しかった。
日曜日には近所の個人がやってる八百屋さんに出向いて、キャベツの外葉で千切りの練習をしたりと料理の魅力にはまっていった。
6歳になる頃には簡単な料理位はできるようになっていた。
そんなある日たまたまお父さんの帰りを一人自宅で待っていた時に、自宅の電話が鳴った。
「はい、もしもし」元気よく電話に出ると「もしもし?お母さんだけどわかる?お兄ちゃんも隣にいるよ。元気でやってる?」母からの電話だった。
まさか母から電話が来ると思ってなかった私は言葉より先に、涙があふれて言葉が出なかった。急に居なくなったあの日からどれだけ経ったのか、考えると辛いから幼いながらに記憶から消そうとしてたのか、いろんな感情が混ざって声にならず少しの間電話越しに泣いていた。
少し落ち着いて電話の対応ができるようになり、最近料理ができるようになったんだとか、お母さんやお兄ちゃんは元気にしてるの?が話せた唯一の話題だった。
ほんの少しの会話でも嬉しくて、次はいつ掛かって来るのか毎日楽しみに生活していた。
幼稚園ではたくさん友達もできたし、それなりに楽しんでいたとは思う。
でも大人の中で生活がメインだった私は、みんなが教室で歌を歌ったり絵を書いたりしてる時間がつまらなく感じ、一人園舎で遊んでるような子供だった。
遊具で遊んでみたり、はたまた駆けずり回ってみたりと子供全開の自由奔放さで楽しんでいた。
幼稚園の先生方は心配して「お部屋に入ってみんなと遊んだりしよう?」と誘ってくれるけど「歌なんか歌いたくないし、つまらない事はしたくないから嫌だ」とはっきりと断ったのを覚えている。当時の先生方大変ご迷惑をおかけしました(笑)
そんな私もいよいよ卒園が近づき、卒園アルバムの写真撮影やアルバムに載せる絵を書いたりする時期に差し掛かった。
当時まだひらがなの読みは出来ても、書くことが少し苦手だった私は父に厳しくひらがなを習うことになる。
「もっと綺麗に書きなさい」「どうしてひらがなも書けないんだ」
毎日の様に怒鳴られ、泣きながら練習した。負けず嫌いを超絶発揮して厳しい練習を乗り越え、無事ひらがなをマスターした記憶。
「どうしてできないのか?」と聞かれた時私の脳内は「お父さんは産まれた時から、字が書けたのかな?初めてで出来ない事なかったのかな?」と疑問に思ったもんだ。
ひらがなを覚えた私は何の拘りなのか、幼稚園のどのお友達よりも綺麗に書くことに集中して自分の落書き帳いっぱいに、自分の名前を書きまくった。
その甲斐あって、先生やお父さんもびっくりしてくれる程上達して、満足のいく名前を卒園アルバムに残すことができたのだ。
今になって思うと子供だなぁ(笑)と思ってしまうが、6歳の私にとってはかけがえのない瞬間だったんだろうと思う。
そんなこんなでついに迎えた卒園式は、大好きだった先生とのお別れが辛くてめちゃくちゃ泣いて先生に「小学校の先生もして」と無理なお願いをした。無邪気な子供の発言に、先生は「嬉しいけどそれは難しいかな」と涙を流しながら答えてくれた。
ざっくりと書いたけれど、本当はもっと細かく色んなことがあった幼稚園時代。
大人の身勝手さを知り、周りのお友達と私は少し違うんだと思ったこともあった。学童にお父さんが仕事でなかなかお迎えにこれず居残りで一人残って寂しくて泣いたこともある。お母さんはお兄ちゃんだけが可愛いから、私は置いて行かれたんだと思い込んで過ごしたこともあった。
ここから小学生になる訳だが、書き起こすことを考えると少し憂鬱な気持ちがしないでもない(笑)でも心の整理は必要だと私は思うから、つたない文章でもつづろうと思う。
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