第20話 そうまでして下着が気になるのか?

 まるで最初からいなかったかのように孫娘さんこと白咲しろさきは消えてしまった。


 湯温の事でムキになったが、俺は孫娘さんが下着を探して欲しいと悲痛な声で懇願したことに胸を痛めた。


「時間がないと言っていたな……」


 ひょっとすると今、病院では孫娘さんの容体が急変して医師や看護師がバタバタしているかもしれない。


 間に合うかどうかはわからないが、俺は急いで下着を探すことにした。


 温泉にやってきた俺は脱衣所や温泉の中、それに孫娘さんが身を潜めていたという岩陰をくまなく調べた。


 しかし、下着は発見できなかった。


「そういえばここで紐を拾ったな……」


 俺は不意に、あの紐の事を思い出した。


「まさか、あれが下着とか……?」


 俺はそう思ったが、すぐにそんなことはないと考えを改めた。

 


「そういえばあの紐、どうしたっけ……? 宿のお婆さんに渡そうと思って、すっかり忘れてしまっていたな」


 俺があの紐を最終的にどうしたか思い出そうとしていると、温美あたみがやってきた。


有真ありまセンパイ、お待たせしたっス」


「遅いぞ、温美。ここの捜索はもう俺が終わらせた。残念ながらここに下着はないようだ」


 俺が振り返ると、温美はバスタオルを巻いた姿で立っていた。


「───ん? どうした、温美。何故お前は「」でいる? 温泉に入るのか?」


 下着捜索をしようと言っているのに温泉に入ろうとするとは悠長なヤツだ。

 孫娘さんの事を思うと温泉に入るのは今は諦め、下着捜索に専念して欲しいとも思ったが、入りたいというなら仕方がない。


「わかった。俺は別の場所を探しに行くので温美はゆっくり温泉にかり、終わったら下着捜索を手伝ってくれ」


 俺は温美の為に温泉から退散しようとしたが、温美に呼び止められた。


「違うっス。有真センパイ、待って欲しいっス」


 温美はギュッと両手を握りしめ、何か強い意思で決意を固めている様子だった。


「有真センパイに見て欲しい物があるっス」


 俺に見て欲しいもの? この場で俺に何を見せたいというのだ?


「わかった。それは構わんが時間がない。手短に頼む」


「───わかりましたっス」


 そう言うと温美は胸の前で止めているバスタオルの結び目をほどいた。


「お、おいっ! 温美っ! 何をするっ!? 裸になるなら俺がいてはまずいだろ? すぐにここから出るからちょっと待てっ!」


 俺は温美が急にバスタオルをはだけようとしたので驚いた。

 

「ダメっス、有真センパイ。いかないで欲しいっス」


 そんな俺を温美は呼び止めた。


「有真センパイに……有真センパイに見て欲しいっす」


 そういって温美はバスタオルを脱ぎ捨てた。


 ストンとバスタオルが温美の足元に落ち、があらわになった。


「───!!!

 な、何をしている、温美っ!!! そ、そんな姿を人前にさらすなんてっ!!!


 一糸まとわぬ姿を───…!


 一糸まとわぬ……


 一糸……


 いや……まて………………だと……?」


 よく見ると温美は生まれたままの姿ではなかった。

 温美のセクシーポイントにはが巻かれていた。


「な、なんだ温美、はっ……?」


 その紐はとても細かったが、かろうじて温美の胸の先端や下腹部の神聖な個所を隠していた。


「こ、これは紐じゃないっス。これは「女性経験のある男性でも即死させるデンジャラスセクシーランジェリー『ネイキッド☆ストリング』」っス」


 女性経験のある男を即死させるランジェリーだと……?


 以前、女性経験のない男を殺すセーターという物が流行ったが、女性経験のある男でも殺すランジェリーとは凄いな。

 確かにこの紐は、そのセーターのレベル100倍といった破壊力だ。

 後にこの『ネイキッド☆ストリング』の売り文句が「裸よりセクシー」ということを知ったが、確かにその通りだ。


「だ、だが、なぜそんなものを着用している? そして何故、それを俺に見せる?」


「そ、それはっ───!! ……有真センパイ、わからないんスか?」


「まて。そうか───そうか温美。わかった。わかったぞ」


「ほ、本当っスか? わかってくれたっスか?」


「ああ。わかった。紐だと思っていたが、あれは下着だったんだな」


「───え?」


「俺がここで拾った紐だ。あの紐も『ネイキッド☆ストリング』だったんだな」


「え? え? い、いや、有真センパイがここで何かを拾ったとかわからないんスけど……? そ、それに違うっス。ワタシがわかって欲しいのはそういう事じゃないっス」


「でかしたぞ、温美! それを俺にわからせる為に自ら『ネイキッド☆ストリング』を着用し、俺に見せてくれたわけだな!」


「ええ~っ!? い、いや、違うっスっ。そうじゃないっスっ。ワ、ワタシは有真センパイのことを───」


「そうとわかればあの紐を探さなくては……!」


 俺は温泉を飛び出すと、当時の自分の行動を思い返し、あの紐をその後どうしたのか必死に思い出そうとした。




----------

【後書き】


 私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。

 (๑•̀ㅂ•́)و✧

 なんか温美が負けヒロインみたいになってしまいましたね(苦笑

 (すまんのう、温美……)

 温美が体をはりましたが、今回のお話はどうでしたでしょうか?

 もし宜しければご意見ご感想などいただけますと幸いです。

 (⋆ᵕᴗᵕ⋆)ゼヒオネガイシマス!!

----------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る