第19話 どう?自分の罪がわかった?

「どう? 自分の罪がわかった?」


 孫娘さんこと白咲しろさきは俺をビシッと人差し指で指差した。


 まさかあの時、岩陰に孫娘さんが潜んでいたとは……。まったく気づかなった。

 それは確かに申し訳ないが、しかし故意ではないので全面的に俺のせいにされても困る。

 俺はいささか理不尽に感じた。


 それより───


「39.2度ではない」


「……え?」


「39.2度ではない」


「な、なに? 何を言っているの?」


「温泉の湯温だ。39.2度であるはずがない。温泉の湯温は39.3度だ」


 それよりなにより、俺は孫娘さんが湯温を39.2度と判断したことに遺憾の意を示した。


「そ、そこなの……!? い、いえ、でもそれなら私も言わせてもらうわ。39.3度なんてありえないわ。39.2度よ。私は今まで一度も湯温を誤ったことはないわ」


「そこまでいうならこの勝負、受けて立とう。俺はを持ち歩いているのでそれで湯温を計測してやる。会長の孫娘だろうと容赦せん」


「なんでそんなもの持ち歩いているのよ! そ、それに貴方、無礼よっ。会長の孫娘をなんだと思っているのよっ」


「会長の孫娘だろうと、会社の社員でなければ上司でもなんでもない。赤の他人だ。そして俺は温泉の事となれば相手が誰だろうと一歩も譲る気はない」


 俺の不遜な態度に孫娘さんは大変ご立腹した様子だった。

 今まで会長の孫娘という立場で周囲からちやほやされていたのだろうか?


「おい。そんなにプンスコすると体に悪いぞ。温泉にでってリラックスしたらどうだ?」


「あ、貴方にそんなこと───……っ! そんなこと言われたくないわよ! ……うぅ……っ!」


 孫娘さんは急に胸を掴んで苦しみだすと、その場にへたり込んだ。


「ほらみろ。言わんこっちゃない」


 俺は孫娘さんを介抱しようと思ったが、そういえば相手は生霊いきりょうだった。

 生霊は介抱できない。これは困ったぞ。

 どうしたものかと俺が戸惑っていると、孫娘さんに変化があらわれた。


「ん───? お、おい、孫娘さん。体が薄くなっているぞ」


 孫娘さんは自分の手の平を顔にかざし、向こうが透けて見えてしまっていることを確認した。


「ど、どうやらそのようね……。残念だけど私には時間がないの……」


「おい、まて。すぐに湯温を計り、39.3度であることを証明してやるから」


 だが、孫娘さんはかぶりを振った。


「そ、それより……それよりお願いよ……。お願いだから、探して……下着を。あの下着……あの下着だけは見られたくないの……」


 そういうと孫娘さんは苦悶の表情のまま景色に溶け込むように消えてしまった。




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【後書き】


 私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。

 (⋆ᵕᴗᵕ⋆)ウレシイデス

 今回のお話はどうでしたでしょうか?

 この後も、皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります!

 (๑•̀ㅂ•́)و✧

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