第4話 ふたりで温泉を貸し切りに

「どうだ、温美あたみ。見事な露天風呂だろう」


「そ、そうっスね。確かに絵に描いたような見事な露天風呂っスね」


「そうだろう、そうだろう。

 ところで、温美。いつまでバスタオルをまいているつもりだ? 温泉にタオルを浸けるのはご法度だ。早くとれ」


「わ、わかってるっス。でもやっぱりちょっと恥ずかしいっス」


「何が恥ずかしいだ。俺なんかとっくにすっぽんぽんだぞ」


有真ありまセンパイは逆に少しは恥じらって欲しいっス。堂々とこっちを向かないで欲しいっス」


「しょうがない。それなら俺がバスタオルをとるのを手伝ってやろう」


「───えっ? いや、ちょっと何言ってるんスか。有真センパイ、やめてくださいっス」


「遠慮するな。俺とお前の仲じゃないか」


「有真センパイ、“遠慮”って言葉の意味わかってるっスか? これは“遠慮”じゃないっス。そしてワタシたちはそういう仲じゃないっス」


「いいから俺に任せろ」


「ちょ、ちょっと有真センパイっ! 乱暴にしないで欲しいっス!」


「わかったわかった。優しくする。優しくしするから、じっとしてろ」


「ぜ、絶対っスよ……」


「ああ、絶対だ。さて、どれどれ───」


「あっ─────……。

 ─────………(///」


「ほう、温美、お前───。お前、意外と……」


「な、なんスか。い、意外と何なんスか(///」


「はっきり言おう。お前、意外と胸が大きかったんだな」


「─────!!!

 や、やめて下さいっス、有真センパイ。恥ずかしいっス(///」


「恥ずかしがる必要はないぞ。むしろ逆に誇るべきだ。実に見事だ。素晴らしいぞ、温美」


「そんなにジロジロ見ないで欲しいっス……(///」


「どうして今まで気づかなかったんだ。温美の胸がこんなにも立派だったことに」


「有真センパイにはひとつだけ嘘をついていたっス。ワタシがオーバーサイズのパーカーを着てる理由っス。ワタシは胸が大きくて、それを周りから見られるのが恥ずかしくて、それでオーバーサイズのパーカーで隠していたっス」


「そうか。お前がブカブカのパーカーを着ていたのにはそんな理由があったのか。すまなかったな、温美。そんなお前に気づいてやれなくて。だがもう大丈夫だ、温美。これからは俺がお前を守ってやる。そして俺とふたりっきりの時はもう隠す必要はないぞ。さあ、温美。それでは一緒に温泉に入ろう」


「は、はいっス、有真センパイ。宜しくお願いするっス」


「足元が滑るから気をつけるんだぞ。危ないから俺が手をつないでやろう。

 ───おい、温美」


「は、はいっス、有真センパイ。優しくエスコートして下さいっス」


「───おい、温美」)



「───……」


「───おい。温美」


「───……。

 ───なんスか、有真センパイ」


「なんスかじゃねぇよ。またフリーズしてんぞ。それとヨダレ。お前ヨダレ垂らしてんぞ」


 俺がそう注意してやると温美はハッと気づいて慌ててパーカーの袖口で口をぬぐった。


「なんか旨いメシの事でも考えていたのか?」


「そ、そうっス。ワタシは今、とてもお腹が空いてるっス」


「そうか。だがそれならもうちょっとの辛抱だ。俺たちはすでに温泉旅館の近くまで来ている。そしてそんなに腹が減ってるなら、温泉に入る前に先にメシにしてもらうか?」


「そ、そうっスね。先にお食事にしてもらうのもいいっスね」


 ふむ。温美の言う通り、先にメシにしてもらうのも悪くない。

 何故なら俺たちはまだ朝メシを食べていないからだ。


 そこで俺はフロが先か、メシか先かを思案し始めたが、そうしていると温美が自分の胸をまさぐり始めた。


「なんだ、どうした温美。なぜ自分の胸をまさぐっているんだ?」


「な、ないっス……」


「何がないんだ? 何かなくしたのか?」


「ワクがムネムネしていたのはワタシの妄想だったっス……」


「───はぁ~? なんだそれ? 何を言ってるんだ?」




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【後書き】


 私の小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。

 (⋆ᵕᴗᵕ⋆)ウレシイデス


 温美の妄想はこれからも爆発しますよ~୧(˃◡˂)୨

 乞うご期待です(๑•̀ㅂ•́)و✧


 皆さまに「面白い!」と思っていただけるよう頑張ります!

 (๑•̀ㅂ•́)و✧

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2024年7月2日 09:00
2024年7月9日 09:00
2024年7月16日 09:00

会社の温泉旅行で誰とも喋らずポツンとしている女性に声を掛けたら「あら?あたな私が視えるの?そりゃそうよね。だって私がこうなったのは貴方のせいなんだから!」と睨まれました 柳アトム @Atom_Yanagi

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