Page.02 俺とさよなら
アンジェリカというお姫様は俺の方に視線を向けてこういった。
アン姫「召喚の際に色々と変わってしまうこともあるとは聞いております。
ゆきさん(?)の方は、服も合わなくなっていらっしゃるようですね」
そうなのだ。
先程からズボンやらなんやが
ベルトで調節しようにも、1番きつくしめた状態にしたが大差なかった。
腰幅が大幅に縮まった訳ではない。
それよりも、腰の筋肉がごっそりなくなっていて、その代わりに柔らかくなった。
だから男もののベルトじゃ締め付けが足りず、重力で落ちるズボンの重さを支えきれなくなったのだ。
アン姫「こちらのスケジュールとしてもあまり
隣を見ると、ライトも
俺が女になった、というのもあるが、さっき俺が取り乱してあんなことを口走ってしまったからかもしれない。
ーー
数分前。
お姫様に鏡を見せられて俺はものすごく
全身の血の気が引いていき、頭が真っ白になっていく。
それに伴い、気持ちがどんどん落ち込んでいった。
俺「ライト……どうしよう。
俺、女になっちまった……。
もしもさ、もしもなんだけど。
このまま俺の体が元に戻らなかったらさ……
俺、
しかも、もしお前に嫁とか子供とかができたら、俺は一生孤独に……
そっか……俺、1人で死ぬんだ……」
俺の
ライト「いやいや、ゆきちゃん。
それはちょっと
俺「俺、俺……尽くすからさ、ライト。
もし俺が女のままだったら……俺の事、もらってくれんか……?」
ライト「ゆ、ゆきちゃん!?それってほとんど〇✕△□☆@※っ!?」
ライトはなにやらダメージを受けたように、目を白黒させながら口を押えてもごもごと声にならない呻きを漏らした。
こんな状況でライトにまで
俺「いや、きしょいよな、そうだよな……わかってる……
ライト……俺、死ぬんだ……」
ライト「なっ、なんでそうなるのさ!?」
俺「だって俺、きしょいし……ライトに見捨てられて……1人……」
ライト「いや、いいよ。
むしろ、いいの?
僕なんかで」
俺「ライト………………お前……
こんな俺でも受け入れてくれるのか……?
本当にお前ってやつは……!
めっちゃ良い奴だな!
はは、知ってた。
ごめんな、無理やりそんなん言わせちまって。
ああー、俺きっしょいわ。
悪かった。
ごめん、今のは無かったことにしてくれ。
ノーカンノーカン!
さっすがにキモかったよな?
うん」
ライト「は?」
俺「いや、突然女になっちまったもんだから、ちょっと
持ち直した。
だからもう大丈夫。
ライトのおかげかもしれん。
サンキューな。
これからも頼むわマジで」
いつもFPSをやっている時に、ライトが絶妙なタイミングで回復サポートしてくれた時に言う言葉が自然に出てきた。
ライト「あー、まあ、そ、そう?
それなら、うん。
よかった(?)。
けど、もう死ぬとか言うなよ?」
俺「おう。
もう大丈夫だ。
つか、お前ってもう彼女いんじゃんな。
もし俺が女のままでも、さすがに彼女持ちの奴にすがるのはガチで間違ってた。
もう言わん。
絶対言わん。
約束する」
ライト「いや、それは……。
先輩のことは……うーん。
いったん置いといて、こんな状況で話すことじゃないからさ。
そのうち落ち着いたときに話すよ」
俺「ん?
ああ、おう。
わかった」
そうだった。
こいつ、先輩となんかあったっぽかったっけ。
アン姫「ふふふ。
お2人はとても仲がよろしいのですね」
俺「そう。
俺たちの友情は不滅。
無敵だぜ」
アン姫「まあ。
すてきな友情ですこと。
うふふふふ」
ー現在ー
いやさ、急に体がこれまでの自分じゃなくなったら、そりゃね?
誰だって取り乱します。
そう。
だからさっきのはほんとにノーカンなんで、ライトさん。
急によそよそしくなられても
とはいえ、とはいえ。
俺が一人で取り乱して、みっともない所をさらしただけなんだよな。
我ながらひどすぎる……
俺の精神は深刻なダメージからまだ完全には立ち直っていなかった。
全身の血の気は引きっぱなしだ。
周りにいる人達はローブで顔が隠れていて表情が見えないのが救いだった。
今誰かに冷え冷えの極寒な視線でも
ガチめのオーバーキル。
アン姫「ここにいる皆には、今日この場で見聞きしたことを口外することを禁止します。
もし
お姫様はローブの人たちに何かしらの指示を出して、数人を部屋から退出させた。
そして改めて俺とライトに向き直り、話しはじめた。
アン姫「ライトさん?
ゆきさん?
お二人の様子ではどうやら元いた世界とは変わってしまったこともあるようなので、1つ確認をとらせてください。
ゆきさんは、この世界では女の子。
でも、元の世界では男の子だったということで、間違いありませんか?」
ライト「はい。
僕の認識ではそうです」
俺「ちょっ、ちょっと待って。
か、確認させて。
念の為。
あ、ええと、みなさん申し訳ないけど、いいって言うまでこっち見ないで」
お姫様がローブの人たちに目配せをしてローブの人たちが壁の方を向いてくれた。
アン姫「ええ、どうぞ」
ライト「わかった」
お姫様とライトもこちらを見ていないことを確かめ、お礼を言いつつ俺は素早く自分の体を確認した。
鏡には知らない顔が写っているが、つねったり、舌を出したらシンクロするし痛みもある。
これが今の俺の顔なんだ……かなり、元の俺と違うな。
手がちっちゃい。
背も低い。
少しだけ胸が邪魔で下が見えにくい。
全く見えないって程じゃないけど、下半身はほぼ見えない。
ズボンがなければつま先が辛うじて見えるくらい?
1番大事な……手の感触的には…………ついて、ない……
おう、のー……
いや、うすうすそうだとは思ってた。
いつもはある位置に、なんというか、重みがないというか、ぶら下がりがないというか。
感覚的にもなくなってるのはなんとなくわかってはいた。
でも、本当に無いってことを確認しちゃうと、なんか泣けるよね。
童○のまま死ぬんだ……って。
いや、それが全てではないけどさ、けどけっこう男子高校生にとっては重いんよ。
大きめのアイデンティティを喪失した感じがズシンとくる。
俺「もう、大丈夫……です。
はあ……」
ライトとお姫様がそっぽを向いていてくれてたけど、俺の特大ため息で改めてこちらを見る。
俺「はい……
女、です……
男だったのに……女……くっ……」
目尻にうっすらと涙がういた。
アン姫「少し、おつらいようですね。
こちらへ来なさい」
俺の手をくいっと引っ張るお姫様。
抵抗する気力もなく俺は引っ張られた。
俺の頭をお姫様の手が包み込み、そっと傾けられ、抱き抱えられる格好に。
アン姫「ゆきさん。
少し落ち着くまでわたくしの胸を貸してあげます。
よしよし、つらかったですね」
優しく頭を撫でられる感触が新感覚。
血の気が引いて冷たかった体の内側から少しずつ温かい血液がめぐり始めた。
親友の前で自分より年下っぽい少女に胸を貸されて頭をなでなでされるのは気恥ずかしいが、不思議と離れたくない気持ちの方が
これがバブみってやつなのか。
お姫様のナデナデで俺のメンタルは若干だが回復してきた。
俺「ありがとうございます。
もう、大丈夫。
なんとか落ち着きました」
そういってお姫様の元を離れた。
ライト「アンジェリカ姫。
ゆきちゃんは確かに今は女性ですが、つい先程まで男だったのです。
そのようなことをされて大丈夫ですか?」
今俺が聞きたかったことをライトが
アン姫「ライトさん。
わたくしにとっては、ゆきさんは初めから女の子ですもの。
なんの問題もございません」
ライト「そう、ですか。
なるほど……
言われてみると、そう、ですね」
な、なるほど……?
お姫様の中で俺は最初から女判定なら、別に女同士気兼ねすることはないってこと?
かなり複雑だけど、たしかに男だったらあんなことされると、もっとこう、スケベな心が湧き出てきそうなもんだけど。
不思議とそういう感情は出てこなかった。
俺自身もすでにこの体に馴染んでしまっているって、こと?
アン姫「でも、ゆきさん。
これからは言葉使いとか、身だしなみとか、女の子らしくしないといけませんよ。
もし『降臨前は男だった』なんて、噂程度でも知られてしまったら、大変なことになりかねませんからね。
ですから、その事はここにいるもの達だけの秘密としたいのですが、
俺「は、はい」
アン姫「ゆきさん。
ではまず差し当たって、『俺』というのはこの部屋を出たら絶対に禁止です。
よろしいですね?」
お姫様の言葉にうなずいてから、ハッとした。
そうか、俺はもう、俺じゃないのか……。
お姫様に促され召喚された部屋を出ると、メイドさんと
私(俺)とライトは手渡されたローブで学生服を隠しながら移動することに。
お姫様の話では、召喚された人を
私(俺)は身の丈に合っていないローブとズボンを引きずりながら、慎重に歩いていた。
ライト「ゆきちゃん、大丈夫?
歩きにくそうだから、足元に気をつけるんだよ?」
私(俺)「おう。
すげぇ歩きにくいけど、今がんばってるとこ。
と、とっと!うわっ?」
言ってるそばからローブを踏んづけてしまう。
ライト「ゆきちゃん、あぶな!」
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