大親友と一緒にTS異世界召喚〜なぜか俺だけ女子に……あいつってこんなにかっこよかったっけ?〜

そらぺり

Page.01 異世界召喚で性別が俺だけ変わっちまった件

最近、小学生来の親友である頼斗らいとに彼女が出来た。

しかも上級生で結構美人、だけどちょっと、なんというか、失礼ながら、なんとなくだけど……ガサツっぽい。

雰囲気というか服装とかカバンのほつれ具合とか、ちょっと日焼けしてる感じとかからそう思ったのだろうか。

笑い方もガハハって感じで、なんというか豪快?

なんでこいつはそんな人とお付き合いすることになったのだろうか?


正直な話、最初にライト《親友》から彼女が出来たとか言われた時は耳を疑った。

単なる冗談だと思ってしまった。

だって、あいつは結構大人し目で目立ってモテるタイプではなかった。

俺よりちょっとだけ、誤差の範囲で背は高いかもしれんが、ちょっと太く見える体格。

腕相撲は僅差で負けたけど、八割方のスポーツで俺の方が勝てる気がする。

まあ、そんなやつで、四六時中俺と一緒にいるから、俺と同じように女には縁遠くて、どうせ学生時代に彼女なんてできずに、いつまでも俺と放課後遊んでいるんだろうなと思って疑わなかった。

少なくとも、もし俺が女だったら絶対にこいつを彼氏にしたいなんて思わないと断言できる。


そんな親友のライトに彼女ができて数日間が過ぎた。

めっきり一緒につるんでいる時間が少なくなってしまった。

授業中以外の休み時間、登下校とも、あいつは彼女と一緒に過ごしていて、俺とは徐々に遠い存在になりつつあった。

彼女ができたての数日なんてそんなもんだよなと、予想はしていたのだが、俺はなんとなく何事なにごとにも意欲がわかない日々が過ぎた。


そんな中、思いがけずライト《親友》の方から放課後に一緒に帰ろうと誘ってきた。

期間限定のバーガーセットが食べられることや親友と一緒の下校が久しぶりすぎて、テンションが爆上がりしたまま2人でマッケ(ンジー)に向かって歩いていたのだった。

突然、俺とライトの足元から強烈な光が発っせられ、あたり一辺を影が差しこんだように暗く染めた。


俺「うわっ!?なんだこれ!?」


いや強烈な光が足元から噴き出して、周りに影がかかったような明暗の視差ができたと言った方が適切だろう。

目を開けていられないくらいの閃光であるにもかかわらず、足元の光のみなもとを俺はハッキリと見た。

魔法陣だ。

水色と明るい緑色、それから明るい黄色が織り交ぜられた魔法陣がぐるぐると俺たちの足元で回ったり弧を描いたりしている。

見る間に魔法陣の輝きが増していき、俺とライトの視界は光だけになった。


視界の眩しさにたまらず目をつむった。

目をつむった瞬間から足が地面から離れたようなふわふわとした浮遊感。

さらにグワングワンと脳みそがかき混ぜられるような、体を狭いところにぎゅうぎゅうと押し込められて息もできない状態であべこべな方向に回転させられ続けているような感覚にも襲われた。

吐き気を催しそうになるも、おそらくほんの一瞬だったのだろう。

案外と早くにそれらの感覚から解放されて、閉じたまぶたの外側が徐々に暗くなっていくのを感じた。

暗さとともに浮遊感も消え、地面に足が着いた感覚。

なぜかズボンがずり落ちそうになったため、慌てて手でつかんで腰にとどめた。

ベルトが外れてしまったのだったら目を開けてしめなおしたいが、まずは今がどういう状況なのか確かめるのが先だろう。


恐る恐る目を開けると、そこはどうやら石の壁に囲まれた部屋のような場所だった。

窓はなく、20本を超えるロウソクの炎が揺らめいて室内を照らしていた。

俺とライトの周りにはローブに身を包んだ人が十人くらい居て、正面には俺よりも少し若そうな少女が一人。

しかしその少女は、周りのローブ姿の人たちと明らかに違い、結婚式でもするかのような豪華なドレスに身を包んでいる。

まつ毛が長く、くっきりと二重の瞼とクリっとした丸い目、瞳の色は緑がかった青で宝石で例えるならアクアマリン、まっすぐでクッキリとした鼻筋、綺麗な金のブロンドの長髪を要所で編み込みを入れてまとめていて、その頭の上に結婚式で女の人がかぶるティアラとかいう王冠?がのっていた。

ドレスは白と青を基調とし、すっきりとしたシルエットを形つくっている。

彼女の白い肌とあいまって、お人形さんのようなと形容してもいいのかもしれない。

豪奢なドレスやティラナなどの装飾品を身につけているが、着せられている感はなく、むしろ着こなしているように見える。

不躾ながらその姿を見回していると、その少女もこちらをみていたので目が合ってしまった。

少女は俺を見つめ返しながらにっこりと微笑むと口を開いた。


少女「ようこそお越しくださいました。

ここはヴェールス王国の首都ヴェルナにございますジグラート城。

わたくしはアンジェリカ・エト・ジョルジアーナ・ノエル・ウィンザールトン・ヴェールスと申します。

この城の城主であり国王エリトールの娘。

一応、第三王女という位にございますが、異なる世界からいらっしゃったあなた方は、どうかわたくしの身分などお気になさらず、ありのまま接していただけると幸いです。

わたくしはこの国を代表して、あなた方お2人を歓迎いたします」


よかった。

話し言葉がわかるみたいだ。

顔つきから言葉が通じないと思い込むのは日本人の悪い癖かもしれない。

このお姫様は俺たちを歓迎してくれているらしい。

名前は呪文並みに長くて覚えきれない。

アンなんとか、なんとかなんとかさん。

俺が頑張って名前をひねり出そうとしていると、隣にいるライトが口を開いた。


ライト「なるほど、お姫様でいらっしゃいましたか。

では、失礼ながらアンジェリカ姫とお呼びしても?」


アン姫「ええ、お好きなように」


長い名前だったから一瞬で名前が出てこない俺に対して、ライトはさすがの記憶力と言うべきか。

一発で名前を言えるのは正直にすごいと思う。

ライトがこっちを向いて、なんだが困ったような、しかもちょっとよそ行きの時の顔をしている。


おかしいな?なんかこいつでかくなってね?

俺と身長差はほぼないはずなんだけど、軽く見上げるようにしないと顔が見えん。


ライト「では、こちらの男装の女性は?

僕と同じ制服を着ているように見えるのですが?」


アン姫「まあ。

あなた方はお知り合いではないのですか?

わたくしはてっきり同じ場所からこちらにいらした方々なのかと」


俺「ごめん、ライト。

男装の女性ってどこにいんだ?

俺とお前とお姫様と、あとはローブの方々しかこの部屋にはいないように見えるんだけど?」


俺は部屋の中を一通り見まわしたが、それらしい人は見当たらない。

ライトは鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をした。

俺、なんか変なこと言った?


アン姫「あらあら」


お姫様は少し眉をひそめ不思議がり、思い出したように後ろにあったテーブルの上から鏡を手に取った。

そしておもむろに鏡を俺に向ける。


アン姫「もしかしてご自身のことだと、お気づきになっていらっしゃらないのかしら?」


鏡にうつったのは、たしかに男子高校生の制服を着た少女である。

男装の女子って俺の事!?


俺「女の子になってる、だと……?

嘘……だろ?」


俺は隣のライトの顔と鏡を交互に見比べて、驚愕が張り付いた見知らぬ顔をなんども往復する。

というのも、良く見知ったライトの顔だけが、今の俺の唯一の精神安定剤だった。


俺「ライト……どうしよう。

俺、女になっちまった……」


ライト「ゆ、ゆきちゃん!?それってほとんど〇✕△□☆@※っ!?」


俺は唯一の精神安定剤を見上げながら助けを求めた。

明らかに安定剤の効き目を不安要素が上回ってしまっている。

ライトはライトで、なにやら口を押えて声にならない呻きを漏らしていた。

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