6.辺境騎士団と竜殺しの皇太子

小路つかさ

第1話 プロローグ

 砥石でよく手入れをされたナイフが、ランタンの灯りを鋭角に反射しながら中空を回転し、年代物のオーク材の板にカツンと突き立った。

 酒場は歓声に溢れた。

「おい、勘弁してくれよ。高価な机なんだぞ」

「なぁ、おい…」

 酒場の主人が厨房から遠慮がちな抗議をするが、ならず者たちは聞く耳を持たなかった。

 ナイフを投じた者は、目隠しを外し、的を外したことを知って悔しんだ。

「あんな大きな的を三回も外すとは、腕が悪すぎる」

「あいつの運が強すぎるんだ」

 目隠しを外した男は、賭け金をカウンターに放り投げた。

「悪いな。これで今晩は贅沢な遊びができそうだ」

 賭けに勝った連れは、黄ばんだ歯を見せてニヤニヤと笑った。

「なぁ、おい…」

「今度は、俺の番だ。ナイフを貸せ」

「なぁ、おいっ!」

 横倒しになった酒場の机に、白い毛皮のうさぎが縛り付けられていた。

 普通のうさぎでは、まるで無い。

 6歳児程度の大きさと、直立姿勢、そして何より…口汚かった。

「このクソ野郎どもがっ!俺の命をなんだと思ってやがる!不当に民の命を弄ぶのは重罪だぞ!」

 一瞬の沈黙…そして、酒場に笑いが巻き起こる。

 ナイフを受け取った細身の男は、絡まった癖毛をボリボリと掻きながら言い返した。

「そりゃ、領民に限っての話だ。さっき、おいらが見ない顔だな、と尋ねたらお前は、流れ者だって答えただろう?お前は、流れの蛮族だ!そもそも、蛮族を守る法なんてねぇよな」

「バヤール平原から、逃げて来たんだろう!?」

「お仲間は今頃、パヴァーヌの騎士団にめった殺しにあってる頃だぜ!気の毒にな!」

 酒場の客たちは、悪意を込めてうさぎを罵った。

「俺は蛮族じゃない!こんなキュートな蛮族がいてたまるか!」

 うさぎは四肢をバタバタさせて抗議するが、机に縛りつける縄は緩まることもなく、その声は誰もまともに受け止める者がいない。

 うさぎが可愛い…というのは、大方の共通した見解だろう。

 しかし、二足歩行をして人語を話し、それでいて赤くてつぶらな瞳となると、見解は割れ始める。

「じゃぁ、魔族なのかもな…」

「ぉぉ、おっかねぇ…うさぎに取り憑いた魔族かッ」

「取り憑く先を間違ったな!うすのろが」

「どうせなら、美女に宿るべきだった!」

「そうしたら、全員イチコロだった!」

「ちげぇねぇ!」

 再び、酒場は歓声に包まれた。

「やっちまえっ!」

「今度は絶対、外すなよ!」

「…おい、外れる方に賭ける奴はいねぇのか?」

「目隠ししたら、どうせ当たらねぇだろ。もう、うんざりだ」

「何本目に死ぬかってので、どうだ?」

「なぁ、おいっ!」

「一発当ててみろ。魔族なら、それで正体が知れるだろう」

「そうなのか?」

「普通の武器では怪我をしないって話だぜ」

「なぁ、やめろっ!普通に死んじまう!」

 癖っ毛の男は舌なめずりをしてから、ナイフを振りかぶった。

「まじかっ、くっそ」

 うさぎはぎゅっと、両目をつぶった。


 ごつん、と重い金属が柱に突き立った。

 ナイフと、男の人差し指と中指と薬指の三本が、酒場の汚れた床に落ち、ぱたぱたと弾んだ。

「あゃぁっ!」

 ナイフを落とした男は、信じられない光景を見るように、自分の透明な指たちを凝視した。

「すまんのぉ、丁度良い塩梅のナイフがあれば良かったんじゃが、斧しか持っておらんで、堪忍してな」

 酒場の入り口には、白く豊かな髭を蓄えた小柄な老人が、イボだらけの鼻をかっぽじっていた。

 指を切られた男は、しゃがみ込むと泣き出してしまった。

「仲間なんじゃろ?早う、手当をしてやらんか。失血死するぞい」

「このジジィ…」

 酒場の空気は一転し、静かな殺気が室温を下げていく。

 各々が、ナイフや蛮刀、手斧を握り締め、一人、またひとりと、ゆっくりと席から腰を上げる。

 だが、我先にと飛びかかる者はいなかった。

 酒場の入り口から、武装した者がもう一人、入って来たからだ。

 この男も同じように白い髭を蓄えていたが、背の低い方とは異なり、無精髭といった程度。背は大柄だった。長い白髪を綺麗に纏め、後ろに束ねている。日焼けした肌には深いシワと、刀傷でいっぱい。背筋はピンと伸び、豊富な筋肉がより一層、背を高く見せる。その男の立ち居振る舞いから滲み出る貫禄に、酒場の男たちは足を踏み出せなくなってしまっていた。

 背の高い初老の男は、あご髭をポリポリとかいてから、腕組みをして酒場で屯する者たちを眺めた。

 しかし、口を開いたのは、年端もいかぬ子どもの甲高い声だった。

「戦う気概と武器があるのなら、何故ゆえこのような、しけた酒場で昼間から時間を無駄に過ごすのだ?」

 酒場の面々は、老人の足元に子どもがいることに、その声を聞いて初めて気づいた。

「東へ向かえ!手前どもが活躍できる戦場が、すぐそこにあるのだぞ!今すぐ向い、西方世界の平和を自らの手で勝ち取るのだ!」

 見た目、6歳か7歳程度。高価そうな衣装に身を包んだ少年は、少女のような声で、ならずども達を鼓舞した。


 しばし、静寂が酒場を支配した。

 指を切られた男も、キョトンとして状況を見守る。


 酒場の男達は、互いに顔を見合わせ…そして、一斉に笑い出した。

 少年と二人の老人は、彼らが笑い終わるのを待っているようだ。

 指を失った男以外の顔には、笑い涙が溢れていた。

「こりゃ、可笑しい。ガキとジジィが何言ってやがる。俺たちはなぁ、日々せっせと働いて、領主様に税金をしっかりと納めているんだぜ?干ばつの時も、冷夏の時も、決められた額を血反吐を吐きながらな!毎年、毎年、何に使われるかも分からねぇ高い税を、だ。税を真面目に納める領民の命を守るのは、領主様の役目だろ。なぁ、そうだろ?」

 そうだ、そうだ、と男たちは喚呼した。

「いざって時に、その役目を俺たちに押し付けられちゃ、たまんねぇぜ。まぁ、ろくな税も納めていない、ガキとジジィには解らねぇ理屈だろうけどよぉ」

 少年は背の高い老人に問うた。

「ベルトルト、これは侮辱か?」

 老人は困ったそぶりを見せて、答える。

「そりゃ、酷だ。まだ、名乗っていない」

「あぁ…そうか」

 少年はうさぎの毛皮をあしらったマントを開き、腰につけた紋章バッジを見せつけた。

「無礼千万な、ならず者どもよ」

 声変わり前の少女の声色で、少年はひとつも噛むことなく流暢に続けた。

「余の名は、アーデルハイム・ハインリヒ四世。シュバルツェンベルグ公爵なるぞ。だらけた態度を止め、かしこまるがよい」


 再び、酒場に静寂が訪れた。


「あの…公爵閣下…」

 机に縛り付けれたうさぎが、逆さのまま遠慮がちに口を開くが、たちまち巻き起こった笑い声にかき消されてしまった。

「ここは、ハイランド王の直轄領だぞ」

「おい、おい、待て。確か、ハインリヒって死んだろ?ぷぷッ」


 ペキリ…。


 面白がって口走った男の手首が、老人に掴まれ、折れていた。

 力任せに握り潰したのではない。

 カウンターの角に押し当てて、体重をかけて折ったのだ。

 やろうと思えば、誰でにもできる芸当だ。

 ただ、何の躊躇もなくそれをやれる気概と、本人がそれをやられる、と気づく隙を与えなければ、の話だが。

 腕はごく自然に、物理法則に従って、すんなりと折れていた。

「頼むから、空気を読めよ。面倒事は、まっぴらなんだ」

 ベルトルトは、腕をへし折った相手に、そう告げた。

「い…痛でぇぇぇっ」

 男の悲鳴が、乱闘開始の合図となった。


 投げ飛ばされた細身の男が、椅子を粉砕しながら床に転がった。

 店主は、その日の売り上げをエプロンにかき込むと、勝手口から逃げ出す。

 大小の老人二人組は、ナイフや手斧を振り回すならず者連中を相手に、素手で渡り合う。

 関節を決められて、落とされた手斧が、うさぎの額スレスレに落ちる。

「なぁ、おい!やめろ!巻き込むな!」

 誰かの血が、うさぎの顔面に飛び散った。

「まじかよ…病気とか持ってないだろうな…」

 鼻頭をへし折られた男が机に倒れ込み、うさぎを挟み込む。

「なぁ、おい。痛い…頼むよ…」

 乱闘中の誰かのブーツの踵が、鼻頭を襲う。

「貴様、初めて見る種族だな。何と言う種族なのだ?」

 アーデルハイムと名乗った少年が、乱闘の中、座り込んでうさぎの顔を覗き込みながら、そう尋ねた。

 逆さに張り付けられ、鼻血を流す“うさぎ人間“を前に、その目が、爛々と輝いている。

「公爵閣下、できる事なら、まず先に自由にしてください」

「逃げぬと約束するか?」

 うさぎは、思わず眉…らしきものを寄せた。

「…約束します」

「良し。ならば、貴様の願いをひとつ聞いてやる代わりに、後で余の願いをひとつ聞いてもらう。それであいこだ」

「…それは、願いの内容にも…」

 アーデルハイムは、机を蹴り、乱闘の中へと転がした。


「見ろ、お前を助けるために、余の兵士たちが傷だらけになってしまった」

 背の高い老兵士は、顔を数箇所殴られ、背中から手斧を生やしていた。背の低い方は、あまりに髭が多すぎて、様子が分からない。酒場の乱闘は、二人の勝利で幕を閉じた。二人が手加減したおかげで、おそらく…きっと、死人は出ていない…だろう。

 うさぎは少年に助けられ、酒場の外へ出ると、そこにはさらに三人の老兵たちと、身なりの良い女性が待っていた。女の歳は、少女でもなく、中年でもない。社交ドレスでもなく、部屋着でも無いが、仕立ての良さと生地の高価具合は、うさぎにも判別がついた。少年の母親か、保護者に違いない。

「なぜ、わざわざ騒ぎを起こすのですか。ハイランド王に何と言い訳をすれば良いのやら」

 女は、肌が透けるように白く、波を打つようにクセをつけた美しい金髪を持ち、薄い水色の瞳は、神経質そうな細い眉に飾られていた。

「通過時の旅の安全は、オスカー王が保証するところです。非は王にこそあれ、余らにはありませぬ。ですから、ご安心を母上」

 母と呼ばれた女は、ため息をつきながら、仕方なしに微笑んだ。


「おい、うさぎ人間。貴様の名は何と申す」

 アーデルハイムの問いに、うさぎは座り込んだまま答える。

「…シャルルだ」

「おい、公爵の前だそ、立ち上がって答えろ」

 ベルトルトが剣をケツに当てて、うさぎを立ち上がらせる。

「もう一度だ」

「良いのだ、ベルトルト。余はこのシャルルが気に入った。余の道化として、一切の無礼を許すぞ」

「おぃ、道化だと?」

 ベルトルトは、剣の腹でシャルルの背を叩いて諌める。

「もう一度だ」

 渋々と、シャルルは答えた。

「シャルル・フーファニーだ」

「貴様の種族は何と申す」

「俺も、知らないんだ。物心がついた時から、この姿だった」

「人間に育てれたのか?」

「そうだ」と、うさぎは頷いた。

 興味津々のアーデルハイムの質問は続く。

 側から見れば、6歳の“児童“と同じ背丈の“うさぎ“との、何とも微笑ましい構図となる。


「ここの生まれか?」

「もっと南方の港町だ。そこからずっと、旅を続けている」

「なんで、あのような処遇に遭っていたのだ?」

「なぁ、質問に答えることが、望みなのか?じゃぁ、この質問が終われば、俺は自由になれるんだよな?」

 背中を剣で叩かれた。

「ちっ…職を探してたんだ。南の方じゃ、しばらく働けなくなってな…あぁ…スミゥナ公爵の息子を怒らせて、いられなくなった。それで、北の方の酒場で働こうと、あの店に入ったんだが、蛮族と間違われたんだ」

「ふむ。今は蛮族との大戦争中だからな。あの者たちも、職や住まいを失った者たちなのかも知れない。小鬼の奴隷たちも、そこかしこで虐待を受けている昨今だ。無理もなかろう。だが、もうこの西方世界では、安全な場所はどこにもないぞ」

 幼児…と言っても良い歳の子が、仕立ての良い服を纏って流暢に話す姿は、なんとも言えぬ、微笑ましさを醸し出す。

「どうせ、無頼な態度で、いらぬ角を立てたんだろう」

 ベルトルトは髭を撫でながら、ニヤリと笑った。

「お前のために、余が贈り物を授けよう。そこへ膝まづけ。これで、貴様の苦難は、きっと解消されるに違いない」

 アーデルハイムは腰の短剣を抜いた。

「おぃ、助ける約束だろ」

 シャルルは恐怖を感じ、思わず後ずさった。

「まさか、公爵…」

 ベルトルトは、アーデルハイムの目配せを受け、その意図を確信する。

 肩を掴まれ、後ろ膝を蹴られて、シャルルはたまらず、地面に両膝をついた。

 シャルルの頭に、鈍い色の短剣が当てられる。

「おぃ、待て。これは、まさか」

「シャルル・フーファニーを余の騎士に任ずる。以降、余に尽くせ」

 母親は、天を仰いで、額に手を当てた。

 簡略的だが、まごう事なき、アコレードだ。

「どういうつもりだ?」

 シャルルの問いに、アーデルハイムは腰に手を当てて答えた。

「これが、余の願い事だ。文句は言わせぬぞ」

「いや、しかしだな」

「武器は使えるか?」

「多少なら…おぃ、俺の話を…」

「これで、貴様は蛮族として命を狙われることは無くなった。念願の職も得た。これからは、余と共に旅を続けるが良い。何、連れが出来たまでのことだ。文句など、あろうはずもないな、そうであろう?命を救った恩人と交わした、誓約の結果だ。断れるはずもない」

「子どもだと思って甘く見ていたが、好き勝手が過ぎると…」

 シャルルの両耳が掴まれ、剣が当てられた。

「誓約破りには、代償が伴う。だが、命まで取ろうとも思えない。流石に、この俺もいささか不憫だと感じるからな。だから、耳を切り落とす程度で済ませてやるぞ」

 ベルトルトは、耳を掴み上げ、シャルルの足は地面を離れた。

 彼は静かな口調で続ける。

「意外に重いな…だが、考えろ。耳を失ったら、“うさぎ“でもいられなくなるぞ?そうなれば、いよいよ、蛮族との区別がつかなくなっちまうなぁ?」

「痛いから、とにかく降ろせ」

「承諾するか?」

「…」

 片手剣の幅広い刃が、白い毛皮の中に侵入していく。


「わかった。騎士になる!拝命します!有り難く、頂戴します!」

 うさぎは下ろされると、すぐに立ち上がって服の汚れを落とした。

「名誉なことだ。断るはずもない。領地はもらえるのか?税は取っていいんだよな?盾は?甲冑はあるのか?俺のこのサイズにぴったりの物がこの世にあれば、だがな」

 アーデルハイムは短剣を納めると、ぴょんと飛び上がった。

「それは、いい案だ!うさぎが甲冑を着た姿を見てみたい!」

「アーディ、おふざけは大概にしなさい」

 母の苦言に対し、幼い公爵は一礼を返してから言った。

「前公妃のご懸念はごもっともです。しかし、余らはここで情報を集めねばなりませぬ。しばらく、この村に滞在するのです。その間にできることがあれば、同時にこなすべきです。何も、全身甲冑を作るわけではありません。胴鎧と兜があれば、身体も小さいので事足りるでしょう。さすれば、数日のうちに完成するはず…」

 彼は、ちょうど良いタイミングで酒場から出てきた、血だらけの男を捕まえると、すぐに鍛冶屋をここへ連れてくるように命じた。

「まったく…誰に似たのやら…」

 母親は呆れ顔で、息子とうさぎを交互に眺めると、諦めたのか近くの木陰へと移動した。

 シャルルは、ベルトルトに話しかけた。

「ところで、自己紹介をいただきたいところだ」

「そうだな…まずは、あそこにおわすのがヒルダ前公妃殿下だ。アーデルハイム公爵の母君だな…そんで…」

 老剣士は、仲間を呼び寄せる。

 老人が五人、うさぎの前に並んだ。

 ベルトルトはまず、大斧を持った背の低い、髭顔の男を指差した。

「こいつはビョルン。ドワーフだ。こいつの酒には付き合うな。キリがない」

 次に、地味な革マントを羽織った細身の男。腰のベルトに短剣を数本挿し、バックラーもぶら下げている。

「野伏のフーゴだ。早寝早起きが趣味だ」

 白髪混じりの金髪持ちで、すっかり細くなってしまった長い前髪が片方の目を隠している、長剣を持った老人。

「その隣が、ラルフだ。これでも、昔はモテたんだ。今は、ただのお寝坊さんだがな」

 全身甲冑を着た、ベルトルトよりも背が高く、しかもガタイがよい老人。この男の手には、竿の先に棘付きの錘をつけた、モールという竿状武器が握られている。

「鎧の男は、ヴィクトル。力持ちだ。趣味は居眠りだ」

 最後に、白い長髪を後ろに束ねた、背の高い老剣士。

「俺はベルトルト・ブルクヘイム。男爵位持ちだから、お前とは対等だ」

 老人たちは、気さくに応じた。

「仲良くやろうじゃないか」

「すぐに死ぬなよ」

「いびきはかくな」

 シャルルは、よろしく、とだけ答えてからベルトルトに質問した。

「どういう一行だ?他に騎士はいないのか?」

 ベルトルトは、道端の荷車に腰をかけて答えた。

「最初は大勢いたが、逃げちまった…」

「大将が子ども、だからか?」

「まぁ、それもあるが…」

 ベルトルトは、手巻きタバコを取り出し、慣れた手付きで仕上げると、火口箱で火を付ける。

「嫌な予感がビンビンしてるぞ。公爵の自領は、ずっと北だろう。この旅の目的は何だ?」

 タバコをふかしながら、老剣士は気だるげに答えた。

「ドラゴン退治だ」

 シャルルは、はっきりと聞こえるように、彼の側まで近づいてからもう一度尋ねた。

「なんだって?」

「だからよ…ドラゴン退治だよ。竜を殺すための、旅をしている」

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