この寝取られ人生を終わらせたい

桜井正宗

第1話 幼馴染を寝取られた

 年中可愛いとささやかれ、学校中の話題にもなった美少女『わか あか』とは幼馴染。

 そんな紅音とは付き合っていた。

 幼馴染という特権が大きかったのかもしれない。

 おかげで誰にも邪魔されず、最高の毎日を送れていた――のだが。


 夕方の誰もいないはずだった教室。


はるくんより……気持ちいです』

『若葉さんっ!』


 俺の彼女である紅音と知らない男が交わっていた。

 その光景が信じられなかった。


 なんで紅音が……ウソだ。


 紅音は俺の幼馴染であり、彼女なんだぞ。

 今までの記憶がまるで走馬灯のように脳裏を過ぎる。……あの笑顔はウソだったというのか?


 どうしてだよ、紅音……!


 止める気力もなく俺は教室の前から去った。

 トボトボと歩いて、ただただ絶望した。

 この世から消えてしまいたいとさえ思った。



 …………もうだめだ。おしまいだ。



 それから俺は毎日が地獄だった。

 学校は不登校になり、家に引きこもる毎日。紅音からの連絡はすべて絶った。家族との連絡すらも――。


 今の俺に生きる気力はない。

 ただ闇の中でうずくまるだけ…………。



 このまま時が過ぎ、俺という存在は忘れ去られていく。

 紅音という存在も忘れていく。



「…………」



 きっと楽になれる。

 そう思っていた。



 ある日。



 スマホに謎のメッセージが届いた。



【URL:http://1879K.173dB=K.183K551】



 なんだ、この無茶苦茶なURL。明らかに怪しいというか、スパムのような。しかもURLだけしか書いていないって……あからさま。


 いったい、誰のいたずら?


 どうせ詐欺だろうと思っていた。

 でも、なんだか気になって俺はそのURLをタップした。



 ――すると。



 いきなり意識が…………遠く、なった。



 ◆



「…………ッ!?」



 目を覚ますと何故か外にいた。

 見覚えのある校舎。グラウンドや生徒の話し声。……あれ、なんで外に?


 俺はずっと家にいたはずだ。


 って、学生服を着たままだ。


 なんだ、寝ぼけていたのか?


 焦っていると声を掛けられた。



「どうしたの、陽くん」

「え……紅音!?」


「ん~? そんなに驚いてどうしたの」



 紅音の透き通るような瞳が俺の姿を映し出す。……そしてこの距離感。あぁ、なにもかもが懐かしい。そうだ、この時だけは紅音は俺の幼馴染であり、彼女だった。


 いや、だけど――おかしい。


 俺は彼女を寝取られて絶望して家にこもっていたはず。


 なにがどうなっている?


 スマホを取り出してみると日付に驚いた



【6月3日(月)】



 不登校になり、ひきこもりなってから俺は7月6日まで家で過ごしていた。約一か月前に戻っていたんだ。


 なんだ……なにが起きた?


 覚えがあるとしたら、謎のURLをタップして……あ!


 スマホに見覚えのないアプリがインストールされていた。そこには【BE】という文字だけのアプリがあった。……まさかこれが?



「……まさか、な」

「スマホを見つめてどうしたの?」


「い、いや、なんでもないんだ。それより、紅音……」


「うん?」



 俺は“あの男”との関係を探ろうとした。

 だが、タイミング悪くチャイムが鳴り響いた。……クソッ、昼休みが終わった。



 そして、その夕方。


 またも紅音は、あの男に寝取られてしまった。



(うああああああああああああああああああ…………!!!)



 なぜまたあの光景を見なければならない……。


 どうなっているんだ。


 どうして俺は二回も紅音の寝取られシーンを見なきゃならないんだ!!



 学校を飛び出し、スマホを覗く。


 アプリ【BE】に自然と視線が向く。こ、これを使えば……また戻れるのかな。そうだ、一回目だってこれを押して俺は戻ることができた。



 ならば。



 今度こそ未来を変える……!


 この寝取られ人生を終わらせたい!!

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