幼馴染と生徒会長②

 二つの旗を抱えながら運ぶ俺に、前方を歩く九条くじょう先輩は口を開いた。


「助かったよ北崎きたざき君」


「いえいえ、これくらいどうってことないです」


 生徒会室へと足を進めて、鞄を手に取る俺と九条先輩。


「遅刻扱いにはならないから、慌てずに行きたまえ」


 柔和な笑みを浮かべながら九条先輩は言った。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 ――昼休み。


 購買部でパンと飲み物を見繕い、体育館裏まで足を進める。


「――私と付き合ってください!」


 不意打ちとばかりに、俺は体育館裏での告白現場に遭遇した。


「……っ!?」


 不意に、告白された相手と目が合った。驚きに満ちた彼女の目が大きく見開く。


 女子生徒に告白された人物は、九条くじょう先輩だった。よし、引き返すか。


 うん、俺は何も見ていない。昼食は、久し振りに教室で食べるとしよう。


 2年C組の教室へと踵を返そうとした矢先、九条先輩は苦微笑を浮かべて、俺にも聞こえるような声音と共にはっきりと言った。


「……すまない。僕は君の気持ちには応えられない」


「……私が女だからですか?」


「違う、そうじゃない。もちろん君の告白は嬉しい。けれど、僕にも好きな人が居るんだ」


「そうですか……」


 咄嗟とっさに俺は壁際に身を隠す。九条先輩にフラレた女子生徒は、嗚咽交じりに体育館裏から走り去って行った。


「……居るんだろう。隠れてないで出て来たらどうだ?」


「……王子は伊達じゃないですね」


「見ての通りだ」


「好きな人がいるなら相手も諦めがつきますよ」


「僕に好きな人はいないよ。嘘も方便というやつさ」


「さいですか」


「彼女の勇気ある行動を無下にしたんだ。最低だろ?」


「どうでしょう? 相手に期待を持たせる曖昧な返事をする奴よりかはマシです」


「……あははっ、確かに」


 苦笑気味に言う九条先輩。


 咳払いを一つした後、続けて彼女は口を開いた。


「それで、君はわざわざこんな所で何をしてるんだ?」


「俺はいつも此処ここでお昼を食べてるんです」


北崎きたざき君……ひょっとして君は教室に居場所がないのか?」


「唐突に辛辣ぅ!」


 思わず、くすっ――と笑う九条先輩。なんかツボったぽい。


 俺はいつもの場所に腰を下ろした。


「隣、良いかな?」


「……どうぞ」


 言って、九条先輩の座るスペースを空ける。


「ありがとう」


 九条先輩はちょこんと腰を下ろした。


「昼食はいつも購買部のパンなのか?」


「そうですね。九条先輩は?」


「僕は弁当だよ。今は鞄の中だけどね」


 苦笑交じりに言う九条先輩に、俺は袋から玉子サンドを取り出して言う。


「玉子サンド食べます?」


「えっ……あ、いや、別にそういうつもりで言ったわけじゃないんだが」


 九条先輩は慌てたように口を捲し立てた。


 しかし、タイミング悪く、ぐうううぅぅぅ〜――と、九条先輩のお腹が鳴った。


「……っ〜!?」


 恥ずかしそうに耳まで真っ赤に染める九条先輩。悪戯染みた笑みを浮かべて俺は彼女に問うた。


「食べないんですか?」


「……食べる」


「どうぞ」


「……ありがとう」


「いえいえ」


「……」


「……」


 暫しの静寂。ふわりと心地よい風が頬を撫でる。


 堪えることが出来ず、俺は思わず吹き出して笑ってしまった。


 九条先輩は小さく頰を膨らませながら、俺の肩をぽかぽか叩く。


「すみません。可笑しくてつい」


「笑い過ぎだ!」


「九条先輩の可愛らしい一面を見た気がします」


「――へ? か、かわ……こ、こ、こら、先輩をからかうな!」


 仄かに顔を赤らめながら若干上擦った声音を上げる九条先輩。


 飲み物が入った袋からコーヒー牛乳を取り出したところで――――、


「――随分と楽しそうね?」


 聞き慣れた声音が耳に届いた。


奈央なお?」


 体育館裏へとやって来た奈央は、穏やかな笑みを浮かべて、弁当を持ったまま腰に手を当て仁王立ち。


「随分と楽しそうね?」


 笑みを絶やすことなく重圧の籠もった声音と共に、俺の幼馴染は――――再度同じ言葉を口にした。


―――――――――――――――――――――――

友人から、手塚あああああああぁという感想が飛んで来て、龍騎をどこまで見たか悟る。ペース早ない?→王蛇の声がイケボ過ぎる←(めちゃくちゃわかる)ところで555は?

メガニケのアーカイブでハーフアニバーサリーのイベントOVER ZONEのストーリーを見て、無事ドロシーに沼る。あの闇堕ち具合最高!!


作品フォロー、いいね♡コメント、レビュー★ありがとうございます!

小説フォローやいいね♡レビュー★★★等頂けると執筆活動の励みになります!

よろしくお願いします!m(_ _)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る