幼馴染視点

 今朝、私の幼馴染が――校門前で挨拶運動をする生徒会長に捕まっていた。なにやってんだか……あのバカ。


「朝から王子の御尊顔を拝めるなんてまじ眼福♪」


 生徒会長は、一部の生徒達から「王子」と呼ばれている。


「幼馴染くんは、何をやらかしたのかな?」


「……さあ?」


 クラスメイトの問うた言葉に、私は同じく首を傾げた。


 校門をくぐり抜けたタイミングで、ちらり幼馴染へ視線を移す。不意にかすみと目が合った。


「先週の昼休――――体育館内――――騒ぎがあった――――受けた」


「あっ……」


 ……わあぁ。


 喧騒交じりに響く生徒会長の声音に、聞き覚えがある単語が脳裏を過ぎった。


 霞も思い当たる節があったのか、思いっきり表情に出ていた。なんともわかりやすい奴である。


「――昼休み生徒会室に来てくれるかな?」


「……はい、わかりました」


にいさん?」


 霞の隣に立つ千尋ちひろは、強張った笑みを浮かべた。


 ――昼休み。


 2年A組教室にて、お姉ちゃんが作ってくれた弁当を鞄から取り出す。


「「奈央なお〜、一緒に食べよう」」


芽生めいゆいちゃん、いいよー」


 クラスメイト――芽生と唯ちゃんが、自身が座る椅子を持ってやって来た。


 手に持っていたコンビニ袋から、サンドイッチを取り出しながら唯ちゃんは言う。


「奈央の旦那、なにやらかしたの?」


「……別に、旦那じゃないし」


「はいはい、幼馴染幼馴染」


「まさかのやらかし前提」


「まあ……実際、生徒会に目を付けられてるし、やらかしてるのは事実なんだけどさ」


 苦笑交じりに言った私に、二人は顔を見合わせた。続けて口を開く。


「心配なら弁当食べた後にでも、生徒会室に行けばいいじゃん」


「……でも」


「案外、会長と仲睦まじくしてたりして」


 は?


「待て待てそれはない」


 芽生の言葉を即座に否定する唯ちゃん。


 私も唯ちゃんの言葉に同意する。何故、唯ちゃんが否定したのかは一瞬疑問に思ったけど……気にしたら負けだ。


「えー、会長ってで「王子」って呼ばれてたりするけれど、案外、男子にお姫様のような扱いを受けたら即メス堕ちするタイプの人かもしれないじゃん」


「なんてこと言うんだこの子は……。はぁ。芽生、九条先輩(非公認)のファンクラブ(※過激派)に背中を刺されるような……とにかく、滅多なことは言うんじゃありません」


「えっ、なにそれ怖い!」


「そうでしょうそうでしょう」


 というか、あの人ってファンクラブあるんだ……。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 弁当を食べ終えた私は、生徒会室へと繋がる渡り廊下を行ったり来たりしていた。別に、芽生めいの「美人」という言葉にイラッとしたわけではない。……あっ、来た。


 渡り廊下を歩いて来る幼馴染に対して口を開く。


「――生徒会長様との話は終わった?」


奈央なお?」


 ……会長のことをなんでそんな嫌味たらしく言うんだ? 見たいな表情を浮かべながら、かすみは首を傾げた。


 ――霞から生徒会室での話を聞いた私は、思わず眉間に皺を寄せて言う。


「ふーん、へー、奉仕活動の一環ね?」


「なんで、ちょっと不機嫌そうなの?」


「別に。……会長美人だもんね」


「はい? ……いや、まあ、確かに九条くじょう先輩は美人だけども」


 ……ごめんなさい。やっぱりイラッとしてました。


「……えい」


 苛立ち交じりに、私は霞の頬を両手で抓っていた。


何すんじゃいふぁにふぇんじゃい


「いや、なんとなくイラッとした」


 うん、ちょっとすっきりした。


 抓っていた霞の頬を解放する。自身の頰を優しく触れながら、ふと、何を思ったのかにやにや口角を吊り上げた。


 からかいに交じった口調と共に霞は言う。


「なんだなんだひょっとして嫉妬か〜」


 ……は?


 嫉妬?


 …………は??


 誰が? 


 私が?


 ………………は???


 誰に?


 霞に?


 ……はあああああぁぁ!!!?


 ……い、いや、落ち着け私。うん、そう、まずは落ち着いて――このカスに平手打ちをキメよう。


 私はなんとか平静を装いつつ、にこっと笑みを浮かべて、


「――よーし、カス。ちょっと歯食いしばろっか?」


 肩を回しながらはっきりと言った。


「良い笑顔でなに言ってんの? 待て待て待って? 準備運動みたいに肩を回すな――シンプルに怖ええぇよ!?」


「問答無用」


「ひぇ――」


 ――ぱちんっ! という大きな音が渡り廊下にこだました。


 ――――――――――

 ――――――

 ――


 2年A組の教室へ踵を返した私は、芽生と唯ちゃんに霞に対して平手打ちをキメたことを懺悔する。


「……どうしよう、会心の一撃キメちゃった」


「キメちゃったかー」


「さぞかし良い音がしたんだろうなぁ」


 芽生には優しく肩を叩かれ、唯ちゃんには、よしよし――と頭を撫でられた。


―――――――――――――――――――――――

『悪友と生徒会長』時の幼馴染視点挟みます。

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