二人の休日②
エスカレータを上り、4F映画館へ辿り着いた俺と
「そういえば、なんて映画?」
映画のタイトルを奈央に問うと、彼女はにっこりと笑みを浮かべて言う。
「僕の彼女は呪縛霊」
「ごめん、今なんて言った?」
「僕の彼女は呪縛霊」
「はい?」
……ちょっ、ん? は? えっ、映画のジャンルは恋愛って奈央言ったよね? 間違ってジャンルがホラーに切り替わってたりしないよね!?
映画タイトルに思いっきり呪縛霊が付いてるんですけど!? どうしよう不安しかねぇ!!
「ほら、後ろにも
「ソウデスネ」
内心動揺が激しく、冷や汗を禁じえない俺とは裏腹に、奈央は手際良く学割を利用して、慣れた手つきで目的のチケットを購入した。
ふと、奈央はチケット売り場の近くにあるフードメニューを見上げながら、俺の腕を掴み口を開く。
「
「俺の財布は、かわいい弟に貢ぐためにあるからダメ」
「隣のかわいい幼馴染には?」
「ない」
途端に奈央は爪を立てた。
「地味に痛いからやめて?」
「速攻否定はむかつく。――ふむ」
顎に手を当て何やら思案する奈央。
一瞬、顔を背けてはこほんっと咳払いを一つすると、此方へ向き直り仄かに頬を赤らめながら上目遣いと共に言う。
「一緒にポップコーン食べよ?」
「……割り勘な」
「あはっ、ちょろい」
勝ち誇った笑みを浮かべながら奈央は言った。……うるせぇ。
奈央は塩とバター醤油味のハーフポップコーンとコーラを購入した。
係員のアナウンスに続いて俺達は館内に足を進めた。
映画の内容は確かに奈央が言った通り、恋愛映画といえば恋愛映画なんだろう。しかし、呪縛霊の特殊メイクと彼女が嫉妬に狂った際に起こる怪奇現象含めホラー要素が強過ぎる!
上映中、思わずひっ――と、悲鳴を上げる人達がちらほらいた。そのうちの一人がどうも俺です。
「……ちょっと、霞大丈夫? 怖いなら終わるまで手繋いでてあげようか?」
「……テ、テツナグ」
「何故に片言」
自分にしか聞こえない囁くような小さな声音で問う、幼馴染の言葉に首を縦に振る。
俺は映画が終わるまで、奈央の手を離すことができなかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
映画を観た後、
そこで俺は珈琲を奈央はドーナツを購入する。
俺達は空いた席を見つけて腰掛けた。
「面白かったー!」
映画鑑賞を終えた奈央の感想第一声はそれだった。
「
「……恋愛映画というよりホラー映画に近かった」
「確かに、私もびっくりした。嫉妬に狂った呪縛霊ちゃんの演技と演出がもう最高」
「怖すぎる」
「あ……さっきの映画レビュー確認したら『まんまと騙されました。これは恋愛映画ではありません』って書いてある」
「でしょうね!」
俺の言葉に苦笑する奈央。彼女は若干申し訳無さそうに言う。
「私は楽しかったけど、あんたには無理させちゃった……ごめんね」
「なんで奈央が謝るんだよ」
「えっ、だって――」
「――いや、確かに俺はホラーが苦手だけど……その……奈央が俺の手を握ってくれてたから、結果的にはエンドロールまでちゃんと観れたわけだし……その、内容は面白かった」
「へー」
頬杖をつきながら奈央はにやにや笑みを浮かべる。
「私と一緒だったら霞は苦手なジャンルでも最後まで観てくれるんだ。へー」
……なんかめちゃくちゃ恥ずかしい!
「――ありがとう」
奈央は笑みを絶やさずはっきりと言った。
「また、次行く時はR指定付きのホラー映画を観に行こうね♡」
彼女の言葉に、俺は強張った笑みを浮かべつつ口を開く。
「絶対に行かない」
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