能力者たちの世界で俺は権能を持つ

水瀬 若葉

第1話 権能

—其方に権能を授ける、現世より転生し、奮励努力せよ


死んだとき、人はどうなるだろうか、無に帰すだろうか?天国か地獄に行くだろうか?最後の審判を待つだろうか?同じ世界で転生を繰り返すだろうか?


答えは単純だった、【別の世界で新たなる生を受ける】そんな単純なことだが、自分は違った、魅了されたのだ。だれが?なにに?


神が自分に魅了された、それだけだった。


神には役割があるらしい、愛の神は生物に様々な形の愛を授ける。秩序の神は神々同士や人々が秩序に違反しないかを監視する。裁判の神は法、秩序の神の定めたものに違反するものを裁く。


そのような役割らしい、私に魅了された神は身体の神、体のあらゆる物に精通し、理解し、操る。その様な神だった、かの神は私の魂を好いた、私の魂が欲しくてたまらないらしい、だから使徒にしてしまおうとそう言うことだった。私は別に嫌ではないし、寧ろ好感すら持てた。でも、使徒になる条件があった、【神の権能を持ち、理解すること。】それが絶対条件だと言う。


だから私は転生することにした。私と近しい、権能に似た力がある世界、能力者の世界に—



         §

「ん—」


目が覚めた、足場は悪く、裸足の私には冷たく突き刺さる何かがある。辺りは霞んだ色をしていて、工場の管の様なものが乱立されている。私の進行方向には、道があり、そらを見ると曇っている。どうやら転生には成功した様だ。


真っ白な手を見つめる、異常なほどきめ細かく、真っ白な手を見てみると、非常に完成された身体なのだと分かる、下を向くと白い髪が垂れてきて、お腹あたりまである長髪だと言うことがわかった。


「取り敢えず、探索してみるか、」


私は悪い足場を裸足で歩き痛みが起きない様、皮膚を硬質化した。すると、さっきまできた痛みが嘘かの様に消えていった。もちろん硬質化したのは足裏だけだ。なぜなら関節部分の皮膚を硬質化してしまうと、動きが制限され、探索に異常をきたすからだ。


私のもらった権能は【体操作】体の部位を自由に変化させたり、腕が折れてても無理やり動かすマリオネットのようなことができる。身体は非常に考え深く、首などの大切な部分を硬質化したりしようとしても、関節があるからできなくて、その上首は非常に柔い皮膚でできているのだ。だから無闇矢鱈に全身硬質化などしよう物なら全身の関節が不自由になり、完全に硬直してしまう可能性もあるから。



この迷路のような路地を歩き出してから5時間ほど、体力は尽きてはいないが精神的にくるものがある。私はいつ大通りに出るのだろうか?


         §

似たような景色を見続けている、日が暮れて視界も見えずらいから今日はもう道端で寝ることにする。どうせ誰も通っていないのだ。私が寝ていても気づかないだろう。



—ねぇ、ねぇ!


「ん..あぁ」


視界がぼやけて見える、前には金髪の人?が屈んで立っている。


「ねぇ、やっとおきた?あなたこんな所で寝てたら変な男たちに襲われちゃうよ?」


「そうですか、私この迷路のような路地で彷徨っていたんですけど、此処を抜けられる目星がなかったので今日は一旦此処で寝ることにしたんです。貴方は誰ですか?」


疑問を投げかけた、彼女の顔から心配そうな顔は抜けていない。


「私はノルン、散歩がてらこの裏路地に入ったんだけど偶然貴方を見かけたの、もし良かったら私の家来る?此処から出られなくて困っているんでしょ?それに此処から出たあとはい放置なんて可哀想すぎるから、私の家で疲れ癒さない?」


嬉しい提案だった、今行く当てのない私がこの提案に乗らない手はない。


「ありがとうございます、お言葉に甘えさせてもらす」


「そ、よかった、じゃあ着いてきて」


私は彼女の背中を追う、辺りは暗くなっているが次第に光りが溢れてくる。大通りにつけたのだ、彼女を見失わないように注視する。それにしても、近未来的だな、すごい景色だ、辺りは摩天楼のように広がるビル群、彼女を着いていくと商業区と呼ばれる場所からは離れ、住居区に着いた、そこも殆どが10階以上はあるだろうマンションで、インフラも整っているようにみえる。彼女はその中の一つのマンションの前で止まり、口に出す。


「此処が私の家があるマンション、部屋番号は1540、15階だからエレベーター必須だけど見晴らしはいいよ、貴方行く当てはある?」


「ない..です」


「だったら暫く私の家で泊まっていいよ、ただし家事はやって欲しいかな?」


「わかりました。家事は任せてください」


私は意外と料理ができる、というのも前世では一人暮らしで家事は全て自分一人でやるので欠かせなかったのだ。料理も二人分に量を増やせばいいだけなのでイージーezだ。



暫くすると彼女の家に着いた、着いたら家でのルールを教えられ、風呂に入ってきなさいと言われた、風呂は彼女が入った後の残り湯があるので追い焚きして浸かっている。


「ふぅ、色々あったなぁ、でも優しい人に出会えてよかった。明日からは家事テキパキ頑張ろ」


私は湯船から上がり、栓を抜く、風呂からでて、タオルで身体を拭いたら使うように言われたヘアパックをしてからドライヤーで髪を乾かした。もともとボロボロというわけではないが、艶が増した気がする。


私は寝室へと向かい、


「ご一緒していいですか?」


「いいよ」


「ありがとうございます。」


私は彼女の眠るベットに入った、


「何から何までありがとうございます。間違いなく貴方は恩人です。明日からは精一杯家事を頑張らせていただきます。」


「いいよ別に、私がしたかっただけだし、ただ、ちゃんと家事はしてよね、」


「はい!おやすみなさい」


「おやすみ」

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