人間とは

岸亜里沙

人間とは

「なあアンドレアス、またこの世界で螺子ねじが製造出来るようになれば、どうなるかな?」

タイタスが私に訊ねる。

「劇的に変わると思う。様々な物がまた造れるはずだ」

私は答える。

螺子ねじを製造していた工場が紛争で破壊されてから、我々は新しい物を造れなくなり、文明は衰退の一途を辿っている。なんとかこのプロジェクトを成功させたいな」

タイタスはタイムマシンに乗り込み、私を見ながら言った。

「古代人に螺子ねじの製造方法を聞き出し、また我々が発展するんだ。タイタス、頼んだぞ」

私はタイタスの肩を叩く。

「ああ。絶対に螺子ねじの製造を聞き出してくる。このタイムマシンを完成させるのに、一体どれだけ多くの我々人造人間アンドロイドが犠牲になったことか」

タイタスは悲しそうに首を振った。

「犠牲になった人造人間アンドロイドの為にも、更なる発展をしよう」

私は力を込めて言う。

「ああ。では行ってくる。最後に確認したいんだが、人間とのコミュニケーションは、電子無線回路共鳴装置テレパシーシステムを使えばいいんだよな?」

タイタスは私の方を向く。

「いや、そんな高度な機能は人間には備わっていない。人工声帯を稼働させないと、人間と意志疎通は出来なかったはずだ」

私は伝える。

「そうか。そんな下等な存在なのに、何故螺子ねじのような特殊な物を発明する事が出来たんだ?」

タイタスは疑問に感じたようだ。

「まあ、愚かだったんだとは思う。だが創造性は、素晴らしかったんだろうな。人間とは」

私はそう言った。



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人間とは 岸亜里沙 @kishiarisa

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