2019/1/3 15:24:55

 久しぶりに地元の友達の家に遊びに行った。高校の美術部で一年後輩だったTちゃん。今は結婚して、私の実家から十五分ぐらいのアパートに住んでいる。

 実家の軽自動車を借りて、おそるおそる運転して行った。カーナビに住所を入れて、場所はすぐわかったので、ほっとする。手みやげを持ってこなかったことに途中で気づいたが、お菓子屋さんなどに寄ることはできなかった。

 旦那さんも顔見知りなのだけれど、少しだけ緊張しながら部屋に上がる。Tちゃんの子どもは一歳五か月になったらしい。テレビの子ども番組を見ながら機嫌よく歌っている。旦那さんがまめまめしく構ったり、洗い物をしたりしていて、すごいな、と思う。もし、子どもができたとして、夫はこんなふうにしてくれるだろうか。

 Tちゃんは紅茶とお菓子を出してくれた。食べながらしばらくおしゃべりし、もう一杯お茶を淹れるねとTちゃんが席を立ったのと入れ違いに旦那さんが向かいに座り、そして、いつものさわやかな調子で、少し笑うような声で言った。


「え、そんなカスまで食べるん?」


 Tちゃんが出してくれたお菓子の中に、小袋のおかきがあった。いつものくせで、袋に残ったこなこなの欠片を、手のひらに載せて口に運んでいた。えっ、あ、ついうっかり、と言ってわたしがへらりと笑うのと同時に、子どもがなにか言ってワッと泣き、旦那さんはあわてる様子なく、はいはい、と言って立ち上がった。Tちゃんも戻ってきて、こりゃおむつかな、ちょっとごめんね、と言って向こうへ行く。中途半端に笑った顔のままわたしは、もし、子どもができたとして、わたしはこんなふうにできるだろうか、と思っていた。


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