2018/12/14 23:58:48
中学二年生のころ、クラスで目立つグループの子たちは「あゆ」が好きだった。何の気まぐれか、その中のひとりの子がテスト前、○○さんの(※わたしの苗字、わたしはクラスの子には苗字にさんづけでずっと呼ばれていた)家で勉強してもいい、勉強教えてほしいんだ、と言ってきたことがある。彼女たちのことがすごく嫌いだったはずなのに、ほおが緩むのを止められなかった。
うちには、あゆのCDが一枚だけあった。ブックオフで買った「A BEST」。自分の部屋にはアニメのポスターが沢山あったから恥ずかしくて、CDコンポを畳の部屋に持ち込んで彼女を迎えた。
わたしはうまく勉強を教えることができず、それでもそれなりに会話は交わした。沈黙は、リピートで流し続けた「A BEST」がかき消してくれた。あゆっていいよね、とわたしが言うと、彼女はふだん、ほかの子たちとあゆの歌を口ずさんでばかりいるくせに、え、うん、と言って気まずそうな顔をした。
彼女が家に来たのは、あの一度だけだった。翌日、廊下で、彼女が同じグループの子に、○○さんち行ったんだよね、どうだった、と聞かれ、ださいださい、と答えているのを聞いた。
あゆの曲は、本当にわたしも好きだった。そして、いまでも好きだ。でも、あまり人には言っていない。大学時代は逆に、バンドとかが好きな子が多くて、一度わたしが、あゆの曲を聴いていると言ったら、え、いまさら? と、少し笑われたからだ。
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