第5話 鋭さ
「カンパ~イ」
みんなで輪になってお酒を飲み始めた
思い思いにしゃべりながらやはり時間はすぐにたっていく
「やば。もうすぐ門限」
「マジ?」
「急いで帰ろ」
みんな立ち上がると早足で歩きだす
「・・・」
紫音は一人どうしようか迷いながらも何とかみんなの後を追う
その時体を支えてくれる人がいた
「湊龍君・・・」
「酔っ払った振りでもしてろ」
焚迦釈はそう言うと紫音の足に負担がかからないように支えて歩き出す
「何泣いて・・・」
「だってぇ・・・・・・」
驚く焚迦釈に必死で笑おうとする
「・・・」
焚迦釈は何も言わず紫音の頭を軽くなでて再び歩き出す
「どうしたの紫音ちゃん」
「ちょっと酔っ払っちゃって・・・」
苦笑しながら答える
「え~大丈夫?」
「大丈夫。湊龍君には迷惑かけちゃったけど」
そう言ったときにはもう焚迦釈は部屋へ入った後だった
「相変わらずつかみどころのない・・・」
愛里と美咲は顔を見合わせた
「あ、これ明憲君のみたいだから美咲から返したげたら?」
「本間に?じゃぁ今から持って行って来る」
美咲は嬉しそうに部屋を飛び出していった
「本当に嬉しそうだね?」
「あの素直さ羨ましい」
2人は笑いあう
「愛里さんはどんな人と付き合ってるんですか?」
「私?ん~実は元旦那なんよね~」
「はい?」
「あはは・・・そんなに驚かんでも・・・。もうとっくに切れてるんやけど・・・」
「?」
紫音は首をかしげる
「向こうはもう女いるんだ。でも都合のいいときだけこっちに来るあいつを切り捨てられなくて・・・」
愛里は寂しそうに言った
「・・・じゃぁこの合宿で誰かに心許せるといいですね」
「ありがと。でも湊龍君だけはやめとくね」
「え~なんでですか?!」
「紫音ちゃんに勝てるとは思えないし私は面白い人のほうがいいから」
「・・・」
紫音が複雑そうな顔をした
「沈黙苦手なの。だから口数少ない人はパス」
「そうなんですか?」
「そう。だから安心して」
愛里はそう言ってケラケラと笑った
「美咲当分帰って来そうにないし先お風呂行こっか?」
「そうですね」
2人は準備をして大浴場に向かった
「大きいお風呂って気持ちいいですよね」
「本当に。こうやって足伸ばせんのって最高」
愛里がそう言って伸びをしたときだれかがかけこんできた
「ずるい!」
「?」
突然悔しがる美咲に首をかしげる
「2人で先にお風呂来るなんてずるい!」
「あはは。ごめんごめん。でもいつ帰ってくるか分からんかったから」
「う~・・・」
「でも今来たところだよ?」
「本当に?」
「本当だって。それより早くつかったら?気持ちいいから」
愛里が苦笑交じりに言う
「本当や気持ちい~」
美咲は満足そうに言った
途中洗い場へ行ったりまた浸かったりしながら3人は大浴場を楽しんでいた
「私先上がるわ」
「あ、美咲も!紫音ちゃんは?」
「私はもうちょっと浸かってる。先戻ってて?」
「OK~のぼせる前にあがりや」
「あはは。ありがと」
苦笑しながら答えるのを見て2人は先に上がっていった
紫音は2人が出て行くのを見てから足のマッサージを始めた
丹念に足首からほぐしていく
「痛っ・・・」
走ったことがあだになったのかかなり疲労がたまっていた
暫く痛みに耐えながらマッサージをして浴室を出ると部屋から出てきた焚迦釈と目が合った
「あ・・・」
「今日・・・ありがと」
紫音はそう言って微笑む
「すごい嬉しかった」
焚迦釈は何も言わずに自動販売機でコーヒーを買った
「ん」
取り出したコーヒーを紫音のほうに突き出した
「あ・・・りがと」
ためらいながらも受け取ると焚迦釈はもう一本コーヒーを買った
「無理すんな」
「え?」
「足もやけど・・・お前目が笑ってへん。あいつらは気付いて編見たいやけど」
焚迦釈はそう言い残して部屋へ戻っていった
『何で・・・』
紫音の缶コーヒーをつかむ手に力がこもる
その日の晩紫音は2人が寝静まった後も眠れずにいた
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