第4話 海までの道のり
暫く3人で話に花を咲かせ気付いたら夕食の時間になっていた
みんなでワイワイ言いながらの食事は楽しいもので宿の人もひっくるめて盛り上がってしまった
「あとで海行かん?」
「あ、いいそれ」
「行く~」
明憲の提案にみんなが乗る
「湊龍君も行こ?」
紫音が声をかける
「あ、あぁ」
焚迦釈はためらいながらも断りはしなかった
「じゃぁ準備出来たら宿の前な」
圭希の言葉に皆がいったん散っていく
紫音達3人も慌てて部屋に駆け込んだ
それぞれに準備をして外に出ると気持ちいい風が通り過ぎていく
「風がめちゃくちゃ気持ちいい」
「この時期で正解か?」
「言えてる。もうちょっと後やったら寒すぎる」
そんな他愛のない話がなぜか盛り上がる
海まで歩いて10分
途中にある自販機でみんな飲み物を買うことになった
「・・・ってみんな酒やし」
圭希の言葉にみんなが顔を見合わせて笑い出す
未成年もいるはずで免許の合宿中やけど?なんてことは誰も言わない
「やっぱ乾杯でしょ」
「そうそう。早く行こ!」
美咲が明憲と走り出す
その後を圭希と亮介、愛里が追った
「湊龍君は追いかけないの?」
「別に」
焚迦釈はそう言って紫音のペースに合わせて歩く
「・・・ひょっとしてばれてる?」
「何が?」
「・・・」
紫音は黙り込む
「足の事なら気にすることないんじゃねぇの?」
「え?」
「そのための免許だろ?」
「・・・うん!」
紫音は焚迦釈の言葉に安心したかのように笑った
「紫音ちゃん!湊龍君も早くおいでよ!乾杯しよ」
愛里が手招きしていた
「わかった~!」
紫音は答えると意を決して走り出す
でもその前をふさぐような形で焚迦釈が駆け出した
『かばってくれてる?』
自分からみんなが見えない
つまりみんなからも自分が見えない
「ありがと。湊龍君」
「何?」
予想通りの反応に苦笑する
「何でもない。湊龍君優しいね!」
紫音はそう言って微笑んだ
「・・・変なやつ」
紫音はこのとき初めて焚迦釈の笑った顔を見た
とても綺麗な優しい笑顔だった
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