いつかまた・・・

真那月 凜

第1話 出会い

20歳の秋、紫音しおんは免許の合宿へ参加することにした

『どんな人がいるかなぁ』

電車の最後の乗換えをしてあたりを見回す


2両しかない田舎のローカル電車

この中に同じ合宿に参加する人もいるかもしれない

そう思うと期待と不安が交差する


すこし離れた席に年上だろう男の人がいた

『でも荷物小さいし違うか・・・』

20日間ある合宿に行くにしては彼の持つデイバックは小さすぎるように見えた


他には特に見当たらず紫音は鞄から本を取り出した

電車で走ること20分、ようやく目的の駅に着いた

10人くらいが同じ駅で降り、それぞれの目的に向かって歩き出す


「免許の合宿へ行かれる方~」

マイクロバスの前で男の人が声を張り上げていた


「あ・・・」

紫音がそこへ向かおうとしたとき誰かが横を通り過ぎていった

「あ、さっきの人・・・」

紫音は呟きながら彼の姿を目で追った


『え?』

合宿に行くにしては小さすぎる荷物の彼は驚くことにマイクロバスの運転手と話し始めた


「君も?」

運転手さんは立ち尽くす紫音に尋ねた

「あ、はい。お願いします」

そう言って頭を下げるとさらに後ろから声がする

「俺もです」

少し大柄な、でもとてもにこやかな笑顔の男性が走ってきた


「これで全員だな」

運転手さんは一人頷いてバスを出した


「3人ですか?」

「いや、別のルートで何人か来てるはずだが・・・」

「へぇ・・・」

それきり話は途切れた


5分ほど走ったとき教習所が見えてきた

「うわ、田舎・・・」

最後に現れた彼の言葉にみんなが笑い出す


「そう。この田舎の教習所が君たちの勉強する場所だ。降りたら受付だけ先に済ませて」

「はい。ありがとうございました」

3人は止まったバスから降りて建物へ入った


待合室らしきところに4人の男女が沈黙したまま座っていた

3人は運転手さんに言われたように先に受付を済ませて視力検査を行ったが誰も話をしようとしない

・・・と言うよりはあまりにもバラバラなキャラに戸惑っているようにも見えた


「とりあえず今日は何もないので食事の後宿へ案内しますが・・・」

「どっか食べるとこあるんですか?」

「駅前かその前の通りのうどん屋になります。駅方面にバス出しますので駅に向かう方は乗ってください」

運転手さんが声を張り上げて言ったため流されるようにみんなが乗り込んだ


「大きな荷物は先に宿に運んでおきますので貴重品の管理だけ各自でしてください。次駅に回ってくるのは1時間半後ですのでそれまでに集合してもらえると助かります」

「は~い」

どこからともなく返事が聞こえた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る