俺のことを嫌いなはずの幼馴染、俺が眠ってる時だけ甘えてくるんだが

八星 こはく

第1話(睡眠時)結婚してくれる?

※ASMR形式。ヒロインの台詞+ト書きのみ





 アラームが鳴り響く。次いで、ガチャ、とドアが開く音。


「ねえ、まだ寝てるの?」


 足音が近づいてきて、ベッドの上に胡桃くるみが乗る。


「本当に寝てるんだよね?」

「……お兄ちゃん?」


 頬をつつかれる。そして、胡桃がアラームを止める。


「本当、しょうがないなぁ。私がいないと、朝もちゃんと起きないし」

「おばさんだって、困ってるって言ってたよ」

「……まあ、私が起こしてあげるから、別にいいけど」

「こんなにぐっすり寝ちゃって……」


 胡桃が耳元に近寄ってくる。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

「ふふっ」

「いい匂いする」


 胡桃の髪が首筋にあたる。


「昔からシャンプー、変わってないよね」

「一緒にお風呂入ってたの、覚えてる?」

「私は覚えてるよ」

「お兄ちゃんの匂い、落ち着くなぁ」


 ちゅ、と首筋にキスされる。


「お兄ちゃんがちゃんと起きないからだよ?」

「だぁい好き」

「好き、本当に大好き」

「……昔は、ちゃんと言えてたのに」

 

「覚えてる?」

「毎日一緒に遊んで、お兄ちゃんと結婚する! とか言ってたの。お兄ちゃんだって、結婚するって言ってくれたんだよ?」

「……なのになんで、素直になれなくなっちゃったんだろ」

「……はあ」


「ねえ、お兄ちゃん」

「私のこと、どう思ってるの?」

「素直じゃなくて……可愛くない? もう、私のことなんて好きじゃない?」


「私と……結婚してくれる?」


 再び目覚まし時計が鳴り響く。

 胡桃がすぐに止める。


「……もう時間だ」


 すう、と大きく息を吸う胡桃。


「もう朝だけど、いつまで寝てるの!?」


 急に声のトーンが変わる。どんっ、とベッドを叩く音。


「さっさと起きてよ! 毎朝アンタを起こすこっちの身にもなってよね!」

「ほら、いい加減にしなさい!」


 布団をはがす音。


「ようやく起きた? さっさと着替えてリビングにきてよね。おばさん、もうご飯作ってるんだから」

「ちんたらしたら許さないからね!」


 どすどす、と大きな足音を立てて胡桃が去っていく。

 そして、乱暴に部屋の扉が閉められた。

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