第5話 ブラスバンド部

博多の春、花々が咲き誇り、街全体が華やかな雰囲気に包まれていた。「中華料理ジャン」でも新しい季節の訪れを感じさせる、穏やかで温かい日々が続いていた。


ある日、店の忙しさが一段落した午後の時間。玲子が店内の片付けをしていると、ドアが勢いよく開いた。元気いっぱいの女子高生たちが、大勢で店に入ってきた。


「こんにちは!」リーダー格の女の子が明るく声をかける。「私たちは近くの高校のブラスバンド部の生徒です。今日、部活の合奏練習のあとで、みんなで一緒にご飯を食べに来ました!」


「いらっしゃいませ!」玲子が笑顔で迎え入れる。「大勢ですね、今日は特別な日ですか?」


「はい、実は来週の定期演奏会に向けて最後の練習を終えたばかりで、みんなでお祝いをしようと思って!」リーダーの女の子が答えた。


店内は女子高生たちの笑い声と元気な声で一気に賑やかになった。美咲も厨房から出てきて、手伝いを始めた。


「お母さん、こんなに大勢のお客様が来てくれるなんて、嬉しいね!」美咲が興奮気味に言った。


「本当にそうね。でも大変だわ。お父さん、頑張って!」玲子は厨房の明に声をかけた。


「任せておけ!」明は力強く答え、いつも以上に気合を入れて中華鍋を振った。


高校生たちは、特製麻婆豆腐や餃子、チャーハンなど、店の人気メニューを次々と注文したが、その中でも一番人気だったのは「豚の天ぷら定食」だった。サクサクとした衣に包まれた豚肉の天ぷらは、塩胡椒と相性抜群で、女子高生たちの舌を唸らせた。


「これ、すっごく美味しい!また来たい!」一人の女子高生が感激の声を上げる。


「ほんと、豚の天ぷら定食最高!」別の女子高生も笑顔で同意する。


店内は女子高生たちの笑い声と活気で溢れ、玲子と美咲は忙しくも楽しい時間を過ごしていた。


「こんなに大勢の若いお客様が来てくれるのは、本当に嬉しいことね。」玲子が笑顔で言うと、美咲も満足そうに頷いた。


「これからも、もっとたくさんの人に喜んでもらえるように頑張らなくちゃね!」美咲は気合を入れて、次の料理を運び始めた。


その夜、店が閉まると、家族全員が一日の疲れを感じながらも、充実感で満たされていた。


「今日は大変だったけど、楽しかったわね。」玲子が椅子に座りながら言った。


「うん、たくさんの笑顔が見られて嬉しかった!」美咲も笑顔で答えた。


「これからも、私たちの料理でたくさんの人を幸せにしていこう。」明は静かに、しかし力強く家族に語りかけた。


その日から、「中華料理ジャン」はさらに多くの人々に愛される場所となり、家族の絆と美味しい料理が、訪れる人々の心に深く刻まれていった。

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