失恋した俺は漫画を描くことになった。超絶美少女と。

夜兎ましろ

第1話 失恋

「好きです! 付き合ってください!」


 中学校の卒業式の日。

 俺、三嶋奏太みしまかなたは三年間同じクラスだった吉川真美よしかわまみを体育館裏に呼び出し、告白した。


 俺みたいな友達すらいない男にも毎日のように声を掛けてくれた彼女に俺は中学一年生の頃から恋心を抱いていた。

 今日を逃せば告白するチャンスは巡ってこないだろうと思った俺はフラれる覚悟で告白した。というか、フラれる確率の方が圧倒的に高いだろう。


 それでも、俺は想いを伝えないで後悔するよりは、想いを伝えてフラれてしまった方が良い。

 ……そのはずだったのだが、俺は告白しない方が良かったと考えてしまうようなフラれ方をされる。


「え、奏太が私と付き合いたいの?」

「……うん。一年のときから好きだったんだ」


 俺の言葉を聞いた吉川さんは突然、腹を抱えながら笑い始めた。


「あははっ! 奏太がこの私と? 何を勘違いしたのか知らないけど、私は奏太のことなんて興味ないよ? 好みじゃないし」

「えっ……」


 フラれる覚悟はしていた。

 だけど、ここまで言われるとは思っていなかった。嘘だと思いたかった。

 毎日笑顔で俺に話しかけてくれていた優しい吉川さんがこんな酷いことを言うなんて思ってなかった。


 誰か、嘘だと言ってくれ。


 俺の心情を一切気にしない様子の吉川さんはまだ続ける。


「もしかして、私が毎日話しかけてたから勘違いしちゃったのかなぁ? あんたのことを好きになるわけないじゃぁん! それに、あんたはいつもノートに絵を描いてて気持ち悪いと思ってたのよ。ま、もう会うことは無いだろうし、じゃあね」


 吉川さんはそう言うと、俺の言葉を何も聞かずに背を向けてその場を去って行った。

 止めることは出来なかった。

 これ以上傷つきたくなかったから。


 俺は、その場でただ涙を流すことしかできなかった。


 吉川さんの言う通り、俺は勘違いしていたんだろう。

 俺は友達がいないから、毎日話しかけてくれるだけで仲良くしてくれていると勘違いしたんだ。

 好きになってくれていると思ったことは無かったが、それでもあんな酷いフラれ方をされるほどの関係性だとは思わなかった。


 いつも話しかけてくれる優しい吉川さんは、ただの俺の幻想だったのだ。


 俺は休み時間にノートによく絵を描いていたのだが、いつも吉川さんは「上手だね」「すごい!」と俺の絵を褒めてくれていたのだが、まさか心の中では気持ち悪いと思っていたなんて……。


 俺だけじゃなく、俺の好きなことまで否定された。

 今までのことを頭の中で振り返れば振り返るほど、涙が溢れてくる。止まらない。


「はぁ……告白なんてするんじゃなかった……」


 もちろん誰にもこのことを言うつもりはないが、俺が吉川さんにこんなことを言われたと言っても誰も信じてくれないだろうな。

 絶対に「嘘つくなよ」とか、「あの吉川さんがそんなこと言うわけないだろ」などと言われるだろう。


 吉川さんはそれだけ周りからの信頼を得ている。


「俺と吉川さんが対立した意見を言えば、百人中百人が吉川さんに賛同するに決まってる」


 俺は誰もいない体育館裏でそう呟いた。

 すると、突然、背後から声が聞こえてくる。


「そんなことないよ! 私は君の意見を信じる!」


 俺が振り返ると、そこには仁王立ちで腕を組む、女子生徒の姿があった。

 彼女はテレビに出演する女優やモデルすら霞んで見えてしまうほどの超絶美少女だった。


 そんな彼女が一体なぜここにいるのだ。



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