俺、幼女に転生した…。

序章

0話 全てのはじまり

「まるで、ウサギみたいだな。」


 静かに、だが力強く燃え盛る炎に包みこまれ、自嘲を込めて呟く。

 支えてくれるものが、支えてあげられるものがなくなったいま、俺の生きる意味は消え去った。誰も俺を必要としない。同僚も家族も妹も俺自身でさえ。

 誰かと過ごす世界を知ってしまっては、1人の世界は寂しくて心細くて寒くて受け入れ難いものになっていた。だから、ここに立っている。

 後悔がないと言えば嘘になる。やりたいことだって沢山あるし、まだやり直せるのかもしれない。でも、そんなことがどうでもなくなるくらいこの世に疲れてしまった。むしろ、やっと解放されて清々しい気分ですらある。頑張ったんだ。ただ、目標も救いもない努力なんて続くわけがない。

 開き直って何もかも投げ出した俺に呼応するように炎の進行が速くなる。

 辛うじてこの世に繋ぎ止めていたものが些細な過ちで一瞬にして切れてしまったように、俺の意識はぷつんと糸が切れたように呆気なく無くなった。


 最後の言葉すらも素直になれなかったせいか、あんな事態になるなんて思ってもみなかったが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る