出生と命名

 寝不足、過労様々な要因がたたり、僕は往診に行く途中で心臓の発作により命を落としてしまう。


 これが医者の不養生というやつか、まさか自分が味わうなんて、高田さんの犬は大丈夫か?


 段々と意識が遠くなり、死んでしまうのかと思ったら、次の瞬間僕は思わぬ光景を目にする。


 何だろうこの部屋は随分と豪華な部屋だが、まさか天国か?そう考えているといろんな声が聞こえる。


「おめでとうございます、マリアン様男の子ですよ」

「ありがとう無事に生まれたのね」

「でかしたぞマリアン、我が家もこれで安泰だ」

「もうあなたったたら、ですが嬉しいですね」


 男の子の出産?それに我が家?ん?あれ声は聞こえるが声が出せない、それに……おそるおそる手を見ると自分の手が恐ろしいほど小さくなっているのに驚き声を出せないから泣き叫んでしまう。


「オギャーーー!オギャーーー!」

「とても大きな産声ね、キャシー、私は初産だけど、赤ちゃんというのはみんなこのように生まれたばかりは泣くのね」

「ええ、ですが私には少々違った意味で泣いているように聞こえますが……」

「まあ元気な子で何よりだ、この子はこれから我がテリナン家を継いでもらわねばならんし、気概のあるのは結構なことだ」


 信じられないがどうやら僕は死んだことで赤ん坊に転生したようだ。


「ガリアス様おめでとうございます。ガリアス様のように勇敢で、マリアン様のようにお優しいお子になられることをこのキャシーも願っております」

「さてと数日したら教会に行き、名をつけてもらわねばな」


 とりあえずここまでの会話で僕が理解したのは父の名前はガリアスと言ってテリナン家、王家か貴族の家かは分からないけど、庶民の家ではない事は確かだな。後継者とか言ってたし、いずれにしても父はそのテリナン家を仕切っているんだな。そして母の名前はマリアン、ブロンド髪ですごい美人だな。


 そしてあの女の人はキャシーって言って、この夫婦が頼りにしている事から助産師みたいな人かな?


 ただの産声と、驚きのあまりの泣き叫びを聞き分けられることからかなり慣れていそうだな。


 そして数日後、両親に教会に連れられてそこの神父さんらしき人に名をつけられる。


「ガリアス様、ニックという名はいかがでしょうか?」

「ニック、そうか良かろう!お前はニック・テリナン、未来のテリナン家当主にしてクッキ領主だ!」

「ニック、元気に育ってね」

「3歳になられたらニック様に洗礼の儀を行いますのでまたよろしくお願いいたします」


 こうして僕はニック・テリナンとして新たな生を受け、そして13歳になった僕に転機が訪れた。

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