おもしろ夫婦のゲーム・ライフ (改修版) La dolce vita per due giocatori
第41話 F15:明日に向かう町 La città che va verso il domani
第41話 F15:明日に向かう町 La città che va verso il domani
馬車は大きな門の前に止まる。東門というらしい。
えぃっと馬車の屋根から飛び降りる。
「やっと着いたね」
「俺はもっと時間がかかると思っていたが、早かったな」
「確かに幸運だった」
「じっさま、おっさん、御者さん、有難う!」
愛想よく手を振っておこう。
「これ、じっさま言うな」
「おっさん言うな!」
「良ければ儂らの店にも来てくれ!
じっさま風は白髭を撫でながら、報酬の袋を渡してくれる。
赤やら白やらの石が入っている。青っぽいのもある。
行掛かり上で引き受けた
衛兵から簡単なチェックを受けて町に入る。
「これが、明日に向かう町か……俺が思っていたよりもずっと大きい」
見渡すと町全体がコンクリート造りで白っぽい感じだけど、人は多く活気がある。
日本ではないと不思議な感じがする。
「旅立ちの村とは全然違うな」
「新たな出発だね。なんだかウキウキする!」
「まずは住む処を決めないとな」
サヤが独言のように言う。
「ねぇ、来たばかりだし、立ち話も嫌だな」
「そうだな。日も高いから酒という訳にはいかないが、茶でも飲みながら話そうぜ!」
東門の南側は酒場や宿が林立しているようだ。
三人でゆっくり歩きながら、店を探す。
「色んな店があるな」
「そうだね。適当な店に入ってみようよ」
「散策も悪くないが、取り合えずその辺で話をしようぜ」
店構えの良い店を選んで入ってみる。
びっくり!
奥まった所の席に座って、とりあえず聞く。
高音が良く伸びて、澄んだ綺麗な声だ。
時は来てそして去り行く
日々も、月々も、そして歳々も
おお何と悲しいことよ 私は何と言えば良いのだろうか
私の苦悩はただ一つ
私の望みは変わることはない
彼女の望みしこと、私の望みしこと
それは決して私に喜びを与えはしない
彼女は微笑みを失うことはない
私は苦しみ、途惑うのみ
このような戯れに私は身を置く
二人の間は失われてしまったのだ
それゆえ、愛は失われる
もし片方が続いていたとしても
応えることなどない
歌は続く。
「ほぅ、悲恋の歌か?」
「ふむ、店同士の競争が激しいのだろう。こうやって客の関心を惹いているわけだ」
「でも
「色々な
「さて」
ゲッツが叙事詩をBGMに話始める。
「俺からの提案だが、とりあえず住む処は近くにしないか?」
「確かにね。このまま、ハイサヨナラって悲しいもんね」
「みな夫々の職能を磨くのだろう。師匠を探すことも必要だ。金も稼がないとな」
「そうだな」
「それでだ。互いに情報を交換するため、近くに住んで時々会わないか?」
「ふむ、生命の腕輪に記録されるデータは互いに教え合っても増える。時々会って話合うのは合理的だ」
「決まりだ。まずは冒険者ギルドに行って情報収集しよう。俺たちのような冒険者がたくさん居ると思う。それなりの対応はしてくれるだろう」
「分かった!」
ボクたちは、お茶を切り上げて冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドは東門の直ぐ北、間違いようがない。
一際目立つ、白い大きなコンクリートの建物
正面入口は、大きな木の扉
何人かの冒険者らしき人たちが出入りしている。
中に入ると、床は綺麗に磨かれた石張り
木造りのカウンターが並ぶ。さすがに旅立ちの村とは大違い。
「ここに着いたばかりなのだが、これからのことについて相談に乗ってくれないか?」
ゲッツがカウンターのおにぃさんと話してる。こういう時は押しが強い。
「三人ですか?」
おにぃさんがにこやかに応えてくれてる。
「先にギルドに登録します。その後、職能が違いますので、別々にお話しさせていただきます」
なかなか親切、ひとりひとり相談に応じてくれるらしい。
「随分と応対が良いね」
「そうだな。冒険者が増えるというのは良いことなのだろう。この町にとっても運営にとってもな」
「それで歓迎する訳かぁ!」
「結果を報告し合おうぜ!」
「そうだな。立ち話ともいくまい。近くの店を探そう」
「いいとこ聞いて来たよ!」
酒場兼宿屋 “ピエトロの店„
冒険者ギルドの直ぐ南、大きな目立つ看板。一階が酒場で二階から上が宿、典型的な冒険者ご用達。
「ね、ここなら良いでしょ」
「おう、いいな。宿もここにするか」
「拠点にするにも、集まるのも良い場所だ。とりあえず今日はここにしよう」
「よし、相談の結果を確認し合うか」
サヤは、
ゲッツは、槍の職能持ちが集まる場所があり、そこで師匠を探すとのこと。
「で、お前はどうなんだ? アルフィ」
「えとね。旅立ちの村の教官していたリネカーさんと約束してる。師匠になってくれるらしい」
「おぉ、それは良いな」
「シーフは個人主義で群れるのを嫌うが多いらしから、見つけるのが難しいらしいよ。運がよかった」
こうして、明日に向かう町の第一日目はなんとか過ぎて行く。
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