第39話 M19:竪琴の響き Suono di arpa
元の所に戻ったと思ったら、ジョルジョくんが居る。
「わたしの居なかった時間ってどれくらい?」
「
「そっかぁ」
ゆっくり待っててくれたらしい。座るに手頃な石が傍にあったからかもしれないけど
“マスター・スライム討伐„ の時とはだいぶ違う。
インスタンスってこんなものなのか? もっと単純だと思っていたけど、色々なパターンがあるようだ。
「おぉ、略綬が増えておりますな」
言われて左の胸を見ると、確かに略綬が増えている。
草色の
「珍しい略綬ですな。フュルベール師匠やルノー殿も多数の略綬持ちですが、見たことがありません」
「なんだかレアを引いたみたいだな」
次はもう少し楽しいインスタンスならいいな。
季節が変わったせいか、
町から少し離れた砂漠の中の丘陵、ここには割合まとまった緑がある。
タイムみたいなハーブ、クミンみたいな小さな種を集める。両方とも良い香がする。本物を参考にしているのか色々な植物がある。
「ね、ジョルジュ。人がいないんだけど、こんな
ポロロン♪
「こういう収集は、他の依頼と一緒にやるか、何かのついでに収集していく。くらいでしょうか」
「まだ時間もあるし、天気も良いし、お茶にしようか?」
手早く竃を造って、お湯を沸かし、茶葉を入れる。
「器用なものですな。最前線の冒険者たちは、こういうことを常にやっているわけですな」
出来立てのお茶を渡しながら応える。
「うん、フレにこういうことが得意な人が居て、教えて貰った」
久しぶりに時がゆっくり流れるような気がする。
「ことね殿は、何故この依頼を?」
「何だかね。このゲーム始めてからずっとハイテンションで来てたから、少し落ち着いて出来ることをひとつひとつやってみようかな? と」
ポロロン♪
「良いですな。
「何だか面白いね」
「こういう地味な部分はほとんど謡われることがないのですが、勇者にも弱々しい時期があったと、とても感じ入ったことがあります」
「実話なのかな?」
「脚色はあると思いますが、根幹部分は実話だと思います。英雄の業績を称賛するのでしたら、華々しい戦いを謡えば良いのです。英雄は最初から英雄ではなく英雄に成って行く。それが真実なのでしょう。この叙事詩はそのことを語っています」
「ね、聞いていい?」
「何なりと」
「ジョルジュは何で
「これは……少々
「あ、無理して言わなくてもいいのに」
「いえいえ、大丈夫です。
「え、プロの音楽家?」
「まぁそんなに大袈裟なものではありません。
「現実は聞かないようにしますね」
「お互いそれがマナーですな」
楽しいお喋りもゲームの一部だよね。
「
「吟遊ですので、携帯しやすいものが良いのです。
楽器の世界も奥が深いなぁ
「現実での
「“竪琴„ ってライアーとかリラとか言われるんじゃない?」
「語源を言い出すと、また難しくなりますが、古代ギリシアでは
「いや、面白い話を有難うございます」
「いえいえ、茶菓子代わりになればと思います」ポロロン♪
「ジョルジュは冒険とかしないの?」
「
「ジョルジュ、
「請われて
町を遠くに眺めながら
自分だけの演奏会、こんな贅沢なことはない。
風が吹き抜ける
生命と滅びを運び、やさしさと恐怖を残す
幾重にも集い、別れ、こころを紡ぐ
人も人でなきものも、等しく恵みを受ける
その恵みを受ける人の住まう地
……
ジョルジュの
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