第13話 F4:旅立ちの村 Paese di partenza
澄んだ女性の歌声、柔らかい木漏れ日
暖かい空気に人の騒めき
様々な背景に少しウキウキする。
振り返ると、通過したはずの扉がない。ただ大きな幹が見えるだけ。
ここは広場みたいになっているが、いまキャラクタは誰もいない。
正面に大きな樹洞が見える。冒険者ギルドだろう。
あのおっさんに言われた通り、そちらへ向かうことにする。
樹洞の入口は大きな木の扉
中に入ると、二人のキャラクタが受付のお姉さんと思われる人と話をしている。
ひとりは、弓を背負ったお姉さん、もうひとりは、槍を持ったお兄さん
お姉さんは、エルフっぽい雰囲気、耳は……長くないので、
お兄さんは、背が高く、確りした体格、何だか頼りになりそうだ。
「めげずに二度三度とチャレンジしてくる方も結構いらっしゃいます」
「わたしたちは、初めてなので指導して貰うのが良いと?」
「確かにその方が良いかもしれん。無闇に敵と当たるのは賢明ではない」
皆様の話は盛り上がっているようだ。
「あの……」と声を掛ける。
「おう、同期がひとり増えたようだ」
槍を持った男性が振り向く。
もうひとりの女性が、手を差し伸べながら話掛けて来る。
「
澄んだ声だけど、少し冷たく感じる。
「ボクは……」
見た目から、ボクで行こう。
「
握手を交わしながら、頭を少し傾けて可愛さを出してみたけど、やり過ぎだったかな?
「俺は、
野太い声でなかなか男らしい。
「みんなから?」
思わず聞き返す。初心者じゃないのか?
「お、これはすまない。別ゲームの話だった。ここは始めてだ。よろしく頼む」
黒い髪に整った風貌、笑顔がなかなか
「二人とも、初心者指導所へ行くの?」
「そうだ。このゲームは初めてだからな」
「俺もそうだ。ゲームではソロ主義なのだが、さすがに来たばかりでは右も左も分からん。初心者指導所は渡りに船だ。確り情報を得ようと思う」
「やはり初めては指導を受けた方がいいよね!」
「それでは、アルフィさんに指導所の紹介状をお渡しします」
受付のお姉さんから書類を受け取る。
それから、しばらく待ってみたけど、新しい人は来ない。
「三人だけのようだから、初心者指導所へ移動しないか?」
「そうするか」
サヤの話にゲッツが応える。
三人並んで指導所に向かう。
「ゲッツさん」
「いや、ゲッツと呼び捨ててくれ、同期だしな。誕生日も同じと聞いている」
「それでは、ゲッツ! 槍が得意なの?」
「いやそういうわけではない。まぁ前衛ばかりやってたからな。今回は槍になったということだ」
「キャラ・メイクで槍になったの?」
「そうだ。出来れば騎乗したいから、機会があれば馬を調達したい」
「サヤは
「ああ、そういう雰囲気は感じるが人間だと思う。耳も長くないしな。なんとなくエルフっぽいだけだ。エルフの血を引いているということではないか? 初期装備も弓を貰ったしな」
「いつも
「ああ、私はどのゲームをやっても弓手のような遠距離職ばかりだな」
「弓って難しい?」
「ああ、というか、近接職とは違って独特の感覚が必要だ。敵を発見しても近づくのではなく距離を取るような行動することもある。位置取りというのが他の職より遥かに重要になる」
「そうだな。弓は魔系とよく似て、意外に脆いしな」
「ああ、このゲームのように、死亡即退場というのは防御の弱い弓職には、かなり過酷だ。アルフィは弓はやったことがないのか?」
「確かに弓職はほどんどやらない。いつもシーフをやってるから」
「職のメリット・デメリットは当然あるが、まずはこのゲームの特徴を知ることが先だろう。チュートリアルでよく学ぼうぜ!」
「あぁ、そうだな」
話を聞きながら、このゲームについて何も知らないと思い知らされる。
初心者指導所は広場の右端にあった。四角っぽい広めの樹洞が入口らしい。
「ようこそいらっしゃいました。初心者指導所へ」
大きな木製扉を開けると、事務所みたいな所に居る人から声をかけられた。
ちょっとキツメの眼鏡を掛けたおば……いや、お姉さん
こーゆー人、苦手だな。
サヤが前に出て話始めた。任せて置こう。
「冒険者ギルドで、紹介された。ここでチュートリアルがあると聞いたのだが」
「ギルドから聞いております。三人ですね。まずは教室に集合して、教官の話を聞いて下さい」
奥の方にある教室に案内される。
中に入ると結構広い。これが樹の中なんだからファンタジーだな。
「これは、二十人くらいは入るかな?」
弓を置きながら、中央あたりに座る。
「そうだな。なかなかの広さだ。人数が少ないから、詰めて座ることはないだろう」
こちらは槍を立て掛けながら、左端に腰を下ろす。
しようがないので、右側の中央寄りに座る。武器はダガーだしな。持っていても邪魔にならない。
さて、どんな人が指導教官なのかな?
少し楽しみだ。
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