第14話 F5:指導開始 Partire la lezione
サヤ、ゲッツと三人で初心者指導所の教室で待つ。
「どんな教官が来るのかな?」
「そうだな。私は確り指導してくれれば問題ない」
「俺は、美人だったら文句は言わん!」
少しの時間だが、雑談で過ごす。これで仲良くなれるかな?
しばらくして、好青年風の教官が入って来る。
「
テキパキと進めて、なかなか有能そうなキャラだ。
「これで、君たちは初心者指導所に入ったことなる。左胸の略綬を見てくれ」
言われて、左胸辺りを確認すると略綬が増えている。 “朱鷺色の地に剣とハートの組合せ„ だ。
「君たちに、称号 “冒険者を目指せし者„ が付与された。ちなみに指導修了時には、称号が ”冒険者„ となる。朱鷺色が真紅に変ので、楽しみにしていてくれ」
「さて、指導の時間だが、第二昼刻から第三昼刻が講義、第五昼刻から第六昼刻が実技だ。まぁ堅く考えることはない、朝飯が終わったら講義で、昼飯が終わったら実技、夕飯前に終わり、くらいの感覚でいればいい。
サヤが軽く手を挙げると、教官が頷く。
「実技についてだが、みんな一緒に行うのか?」
「いや、みんな武器や才能が違うので、それぞれに担当が付くことになる」
ゲッツが声を掛ける。
「俺の初期装備は槍なのだが、槍術中心の実技になるのか?」
「そうなる部分が多いとは思うが、それだけではない。指導の中で教えることになるが、職業で能力を制限することはない。つまり、剣術と魔法を同時に使うことが可能だ。職能ということだな。才能に制限はない。数学者が歴史を研究してはいけないのか? そうではないだろう。そういうことだ」
「あの」
さっきから疑問に感じた。これは質問してみなくては
「魔法を使いながら、剣で攻撃できるんですか?」
「その通りだ。例えば、剣に炎を乗せることや身体に風を纏って槍で突くことも可能だ。火・水魔法などは生活して行く上で有用だろう。スキルの全ては本人の才能と研鑽による。ああ、誤解して欲しくはないが、“スキル„ という言葉は、この世界では “熟練の技„ を表す。つまり、魔法も剣も全て “スキル„ だ」
「そうなれば、弓で魔法攻撃ができるということか?」
「そのとおり、弓の攻撃は多彩でまた華麗だ。研鑽を期待する」
「槍使いの俺でも、魔法が使えるのか?」
「全く魔法が使えないという者は極めて稀だ。君たちにも教えることとなる。たいていは、生活に使える程度の魔法は直ぐに覚えると思う。指導中に色々試してみるといい。みんな熱心だが、焦り過ぎても身に着かない。今日はこれくらいにしよう」
みんな揃って頷くというか、頷いてしまった。
「さて、指導期間は夫々に夫々に部屋が割り当てられる。今日はゆっくり休んでくれ、明日からかなり密度の濃い指導となる」
教官に案内されて、初心者指導所の二階というか樹の上の方に並んでいる。
「結構な部屋数だな。いつもはこんなに指導を受ける初心者が多いのか?」
サヤの疑問は納得だ。
「いや、ゲームが開始された時期は初心者ばかりだったからな。これでも足りないくらいだった」
「時間が経つと、いわゆる初心者が減って来る?」
「そうだな、オープン時には興味本位で来る人間が多かったし、最近は再チャレンジする人間も増えたということだ」
部屋は別々でプライベートも完璧だ。
「個室って、なかなか贅沢ですね」
思わず聞いてしまう。
「それは、キャラクタの外見と中身が違うからだ。以前は同室のこともあったのだが、女性キャラクタを同室にしたところ、片方が中身男で問題が発生した。こういうところは頭が痛い」
運営も思わぬ苦労が多そうだ。
「指導中の一週間は酒場の食事が無料になる。大いに利用してくれ」
教官は話が終わると帰って行く。
「さて、教官の仰るとおり、夕飯にしないか? タダ飯ほど旨いものはない」
ゲッツが笑いながら提案して来る。
「全くもって同感だ」
こちらは立ち上がって弓を背負う。
「ボクも同感だね!」
そう、食事ほど楽しいことはない。
「それでは、部屋に荷物を置いたら集合だな」
「分かった直ぐに来るよ」
酒場は冒険者ギルドのある樹の2階にある。
宿屋と併設されている。
初心者指導所を卒業したら、こちらの宿に移動することになる。
まぁ、そこまで甘やかされないよね。
酒場は何人か居て、結構騒がしい。
食事はかなり豪華だ。
「支給ということであまり期待していなかったが、なかなかだな」
「俺もそうだ。森の中なので肉など期待していなかったが、十分だ」
「量も多い。ボク食べきれるかなぁ」
「エール付とは、また配慮が行き届いてる」
「エルフもアルコール飲むの?」
「わたしはエルフではないと言っているだろう。
「まぁ同期だ。仲良くやろうぜ」
ゲッツが持ち上げたカップに、二人ともカップを合わせる。
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