また巻き込まれちゃいました

じぇーんどぅ

第1話 プロローグ


「東大に、落ちた」


 教師どもは俺に京大を勧めてきたが、この俺が落ちる訳ないとタカを括っていた。

 だが、受験は魔物だ。何が起こるか分からない。

 俺の当然のように赤門をくぐり、盟友と共に官僚に…などと言う夢は儚くも崩れた。

滑り止めは趣味で選んだが、しかしやる気が出ない。

 世間では良い大学と言われるのは分かっている。だが、俺は大学受験失敗と共に一度心が死んでしまったのだ。


 授業は好きな物だけ受けた。教授への媚び?なんでこの俺がそんなことをしなければならない。

 そんなこんなであまり授業にも出なくなり、大学へは同好会へ遊びに来ているようなものだった。


 そんな時に、蒼都に出会った。


 蒼都のことは俺でも知っていた。

 所謂キラキラ系と言うのだろうか?俺とは完全にソリの合わない連中の中でも、彼はど真ん中に居た。

 無駄に良い容姿、お坊ちゃんらしい明るさ、教授の覚えもめでたく、成績はオールAだ。


 勿論俺は、キラキラ群を無視して部室に行こうと思ったのだが、


 「西園寺君だよね?、ちょっと待って!」


 蒼都は見覚えのあるストラップを、目の前にかざして笑っていた。

 ANIZOの人型キーホルダー『問題児』

 これは物に執着がない俺が、珍しく気に入っている物の一つで、いつも鞄に付けていたんだ。


 「持ってんのかよ!」

 「うん、お気に入りなんだ」


 俺達は意気投合し、授業が終わってから飲みに行くことになった。

 なんでもない安い居酒屋で、蒼都と2人で馬鹿みたいに話をした。

 蒼都との話は面白く、キラキラとか燻し銀とかつまらない事に拘っていたなと思った。

 いつしか店の終了時間まで話すも、話し足りない気がした。


 「うち来る?」


 蒼都の言葉に、俺は素直に付いていった…



◇◇◇


 都心のタワマンに連れて行かれた俺は気後れして思った。


 『やっぱ俺、キラキラ系無理だわ…』


 そんな俺の気持ちを見抜いたように蒼都が言う。


 「金無いの?だったら俺の親父の会社でバイトしない?西園寺君がIQ180ってのは有名だから親父も文句は言わないと思うし、報酬は結構いくと思うよ。なにより実地だから向いてるんじゃない?」


 蒼都の言う通り、その仕事は俺の性格に合っていた。

 目が飛び出るぐらいの報酬を貰ったが、蒼都はこともなげに言う。


 「そのぐらいの額は当然でしょ?親父はジジイと違って金の計算が下手だから、西園寺君の足元見て値切ろうとしたみたいだけど、長期的に見たら損だってわっかんないかねえ」


 俺は蒼都の言葉に驚いた、割と深いところまで考えてんだなコイツ。

 いつしか俺と蒼都はつるむようになり、大学では凸凹コンビと揶揄された。

 俺は気持ち良かった、蒼都と居ると自分が肯定される。

 しかし蒼都との付き合いが、とてつもなく大変だと思い知るのはこれからだったのだった…

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