第3話 チート能力もらったのに全部使えないのは詐欺? ちゃんと強いから文句は言えない?

 『という事で私はあんたについていくから! べ、別にあんたが心配だからついていくとかそういうのじゃないから! 変な気持ちを抱かないでよね!?』


 あの途中で現れた魔物との戦闘の後、俺は神様からありがたいメリットやらなんやらを叩き込まれた。


 もう勘弁してくれよ。


 こっちが反発したらそんなの想定済みとか言って謎の寛容見せてくるし、こっちが矛盾やらなんやらを言ってきたら完膚なきまでに罵倒してくるし。


 正直メリットデメリットとかどうでもよくただ単にうるさい。


 『それからあんたは変に慣れない敬語を使うと私に対して変な持ち上げをするみたいだからそういうのは無し! あと私のことはクラウと呼び捨てで呼ぶこと!』


 神様相手に!?


 いや最初の驚いて気が動転した時とかムカついて激昂した時にちらほらため口を溢しているから今さらではあるんだけどさ……


 「そういうのは『出来るの? 出来ないの?』


 「出来ます!」


 『敬語!』


 「出来る!」


 『よろしい!』


 という事で今より神様こと、クラウと俺は世界救済の為に世界に負をもたらす敵を目指して旅をする事が決まったのだ。






 「とりあえずこの世界でやるべき事を教えてくれ。」


 『あんた万能の力があるんだし自分で調べられるでしょうが!?』


 それだとお前の存在意義がなくなるぞ?


 「情報解析ってチートスキルは頭の中にあって今使おうと思ったんだがなぜか使えないんだよ。」


 他にもそれに似た能力を色々試しているが使用が出来ない。


 『そんなことある訳がな……あー。これはあれね。あんたの体が能力に慣れてないや経験が足りないのが理由ね。』


 「というと?」


 『わかってないの? つまり今のあんたはその能力をまだ使う事が出来ないということよ!』

  

 え? 異世界で無双出来るチート能力をもらったのに使う事が出来ないとかそんな事あるのかよ?


 「じゃあもしこのまま敵と遭遇したらどうするんだよ?」


 『そんなに騒がないの!』


 騒ぎたくなるわ。


 こんな一大事なのに。


 『とりあえず今、あんたが使える能力だけを頭で識別出来るように変更しておいたから。もし経験を積んで能力が使用出来るようになったら随時更新されていくわ! 感謝しなさい!』


 最初からそうしてくれよ……


 さっきは運が良かったから良いものの危うく死にかける所だったぞ?


 「で、今クラウからの変更を受けた今確認をしたところ情報系の能力が使えないから、悪いんだけど改めて情報を……」


 『はい、これでいい?』


 クラウが素っ気なくそういうと頭の中に情報が入り込んでくる。


 『この世界の救済方法 この地の勇者と魔王を滅ぼした神すら寄せ付けぬ堕天使の撃破。』


 これだけ?


 いや当てがないよりはましなんだけどさ、もっとこう敵の細かな潜伏先とか戦力とか戦績とかそういうのはないの?


 『今私の事をこんな少ない情報しか送れない神とか思ったでしょ?』


 そこまで思ってないけど……


 「そんなことは……」


 『わかっているわよ。私だって何でこんな少ない情報しか寄越さないのよって思っているし。』


 それはつまりこの情報はクラウが持っていたものではないということか。


 『敵が情報を制限してるとかもあるかもだけど、多分私の上の奴らが試練だなんだでわざど伝えないとかそういうのも原因なのよ! ほんっとに世界の非常事態に何を考えてるのよあのジジババどもは!?』


 アニメの知識になってしまうがおそらく世界の流れを守るために最初は手解きするがその後はなるべく一方に肩入れしないとかそういう事なんだろうよ。


 だがまあ神が敗北しているであろうこの状況下でその方針は少々頑固すぎる。


 




 「とりあえずこの世界の目的についてはなんとなくわかった。礼を言う。ありがとう。」


 本当はこんな魔王とかじゃなくていきなり堕天使を倒してくれとか冗談じゃねーよとか文句を垂れたいところだけど、クラウはクラウで苦労がありそうだしここは感謝の気持ちを述べることにした。


 『は、はあ!? いきなり何よ!? 素直に感謝なんかしちゃって!? あんたらしくない!』


 いや、クラウと出会ったのはさっきが初めてだし俺らしいかどうかとかわからないだろ。


 「別に? やってもらったことに対してお礼を述べただけだよ? だからクラウは気にしなくてもいい。」

  

 感謝する度に一々何でとかどうしてとか言われてもこっちが困るし。


 『そ、そう? そこまで言うならあんたの語彙力のない感謝の気持ちを受け取ってやってもいいけど?』

 

 「そうか。」


 なんとかこの場収まったという事でいいんだよな?





 「それでクラウ。最終目的がわかったのはいいが途中の情報が乏しいのでどこかの国や町に行きたい。近い所はあるか?」


 野宿は堪えるから今夜の拠点とか生活用品の購入とかあるし。


 『そうね……今軽く候補がいくつか』


 ドオオオオオオオオオオオオオン!!


 「『!?』」


 何か大きな爆発音が聞こえたぞ!?


 「クラウ! 今の音は!?」


 本当は厄介事に首を突っ込みたくはないのだがこういうのはアニメとかの知識だとこなす事で道が切り開かれるとかよくあるパターンだ。


 『誰かが魔術を発動したみたい! べ、別にチート能力を多少使える状態だと判明したあんたの事を心配している訳じゃないけど本当にいく気!?』


 そういう事か。


 あとさっき戦闘中もそういうの考慮して静観してて欲しかったな。


 うるさいと気が散るから。


 「まあな? 世界を救う事はその世界の人々を救うことになるんだから。目先の人々の問題を見捨てるというのは後味悪いだろ?」


 『ふ、ふん! べ、別に異世界転生慣れしてないのに変に無茶して大見得を切っても全然かっこよくも偉くもないからね!?』

 

 はいはい。

 

 そりゃあどうも。


 「場所は?」


 『ん!』


 頭の中に詳細な場所が表示された。


 『あんたの走りじゃ少々時間がかかるみたいだから、転移を使うといいわ!』


 転移? えーと転移転移……


 『あーもう! 早くしないと人が死んじゃうでしょ!? これよ!』


 あったこれか!


 ぶつぶつ文句を言って来て鬱陶しいと思っていたがこういうピンチの時に支えてくれるのは助かる。


 「転移!」


 俺はその場から爆発のあったとされる場所まで移動した。








 「っと。ここ……か!?」


 俺が現場に直行するとそこには一人の青い髪の女の子と先程俺が討伐したのと同じような魔物数体がその場に対峙していた。


 「新たな敵!? ……いや人間!? 一体どこから現れて……」


 女の子が俺を見て驚いていた。


 そりゃいきなり目の前に知らない男が出てきたら驚くよな。


 「なんだ貴様!? どこから現れた。」


 魔物側のリーダー格の方も俺を見て驚いていると。


 「人に名前を聞くときは自分から名前を名乗れよ?」


 「人間ごときに名乗る名はない!」


 またそれかよ……正式名称わからないのはさすがにダルいな。


 「クラウ。あいつらの名前とかわかる?」


 『あんた私を都合の良い女扱いしようとしてるでしょ!? はあ……あいつらは堕天使に分類される魔物。脆天使=ゴ=ブリン。これでいい?』


 =ゴ=ブリン?


 ゴブリンじゃなくて?


 「何で=がついてるの?」


 『知らない。特別だからとかじゃないの?』


 そうですか。


 まあ言い方は普通と同じだからこの辺は特に気にしなくてもいいか。


 「誰と話して……?」


 女の子が不思議そうな顔をしていた。


 おっといけない。


 クラウの声は頭の中でしか聞こえないからこんなところ見られたら俺が独り言をしているおかしなやつにしか見えないよな。  

 

 「さっきから何をこそこそ独り言を話している。」


 こっちにはどう思われようがどうでもいいか。


 「ごめん! ちょっとボーッとしていた。」


 「我々を前にしてボーッとしていただと? ワハハハハハハ! 何という愚かな人間だ!」


 魔物側は高笑いをしていた


 「そうだよね。お前らみたいな堕天使を前にしてこんな態度は失礼だよな?」


 「なに?」

 

 俺の言葉を前にしてそいつらは静まりかえる。


 「お前ら脆天使=ゴ=ブリンなんだろ? 何かゴブリンなのに大層な名をもらってるやつ。」


 「その名で……」


 「ん?」


 「そのゴブリンという脆弱な名を呼ぶな!」


 何かめちゃくちゃ怒ってるよ。


 どうやらその名前はあまり好きではないみたいだな。


 「すまん! 脆天使=ゴ=ブリンなら問題ない

?」


 「そうだな! だがもう遅いわ! やれお前達!」


 「「「はっ! 脆天使による雷!」」」


 魔物達の前に魔方陣が展開されて、中央には光のエネルギーのようなものが形成されている。


 あれでこっちを打つのね。


 なら適当に能力使って交わす……


 「ヒィッ!?」


 という手段を取ってしまったら女の子を守れないな。


 ならここは

 

 『防御を使って! 早く!』


 「防御。」


 俺がそういうと目の前にシールドが出現する。


 「ワハハハハハハ! なんだその脆そうな壁は!」


 「しょうがないだろ。今はこれしか出せないんだから。」

 

 こんな堂々と受けようとしないで先に攻撃を仕掛けても良かったんだけどその隙に女の子を狙われたら目も当てられないからな。


 ここは辛抱。


 「良かろう! ならこのまま死ね!」


 その発言の後魔物達のエネルギーがこちら向かって一直線に伸びる。


 こういう事を言うのはあれだが何かアニメとかで見慣れているせいで迫力がないなと思う。 

 まあこんな余裕かませるのは神様からのチート能力があるからこそなんだ。


 それがなかったら今頃俺は泣き叫んでいるところだよ。


 だって丸腰であんな光が向かってくるのは普通に怖いし。  

 




 


 「フハハハハ! なんだその間抜け面は? 言っておくがこの魔術はな? かつてこの世界に存在した勇者と魔王の防御魔術がなす術なく敗れたものだぞ? それをそんな薄いもの一枚で防げると思うな!」


 まじで!?


 これそんなにすごい物なの!?


 じゃあ最悪この防御能力を貫通する可能性があると言うことか!?


 ヤバい!! 今からでも遅くない!!


 降参を……



 その攻撃は俺の考えなんてお構いなしにこちらの壁にそのまま直撃する。


 終わった。


 俺の異世界転生は終わりだ。


 くそ!! なんだよこの理不尽な冒険はよ!?


 出会って直ぐに魔王レベルとかあり得ねーだろ。


 大体……ん?


 気がつくと攻撃はいつの間にか消えていた。


 「馬鹿な!? あの攻撃を受けて何ともないだと!?」


 「え? もしかしてこいつらそんなに強くない? もしくはこっちの能力が強すぎる?」

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