天使と悪魔の契約

志水命言

1(始)

 雨が降っていた。私の世界は暗過ぎる雲に覆われていた。この世界を睨んで、星座すらも冷たい目で見つめていた。そんな時、雫がひたっと落ちた……。

「助けて……」

 手が見えた。今にも儚くそれは消えてしまいそうで、気付いた時、私はその手を掴んでこう言った。

「友人になろう」

 彼は独りで苦しんでいた。黒い黒い鎖に身体を縛られ、鋭い茨に心を囚われていた。

「大丈夫だよ」

 私は彼を救うために、何度も何度も言う。物語を語り続けるように話した。その縛りを、少しでも忘れられるように。だが、その裏で苦しみ続けるのは私だった。助けを求める声が聞こえるのは……私が、癒されたかったからである。他人を癒し続ける反面、傷付いていたのは私。知らなかった。 

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