第26話 子供
「ふんっ……とにかく次からはちゃんと私の作戦に従ってよね!」
「まあ、納得できたらね」
「っ……ああいえばこういって!スキル無しの雑魚の癖に!」
イラッ
「まあまあ、落ち着いて美玖ちゃん」
そう言って加奈ちゃんは美玖ちゃんをたしなめるようにして動く。
美玖ちゃん、なんていうか沸点が低いのか?
「……まあいっか。それより」
「それより……何よ?」
俺は美玖ちゃんの後ろを指さす。
「魔物、来てるよ?」
「え⁉」
言われて美玖ちゃんが振り返ると、蜘蛛の魔物がいた。
サイズ的にはさっきのロックボールの二倍くらい。
あいつは……ふむふむ。
「……どうする?俺が一人で倒してもいいけど?」
「ふ、ふんっ!私一人で充分よ」
そう言って剣と盾を構える。
「さあ来なさい!」
そう言って高らかに宣言して突撃していく。
「あ、あの盛り上がってるところあれかもっスが……一応、俺もパーティの一員なんスけど……って行っちゃったっス」
「美玖ちゃん一人じゃ危ない……行っちゃった」
二人が呼び止める暇もなく、美玖ちゃんは蜘蛛に突撃し……
「……キャッ⁉ちょっと、いきなり糸を吐かないでよって……あれ?」
突撃した美玖ちゃんは蜘蛛が出した糸に絡み取られ……
「キャー!!」
「美玖ちゃん⁉」
「美玖さん!あわわ、大変な子となったっス」
そんな様子を見て、俺はあくびを一つする。
「ちょっと百鬼さん⁉欠伸してる場合じゃないっスよ!?美玖さんが大変なことに……」
「大丈夫大丈夫、たぶん」
「たぶん……⁉」
蜘蛛は身動きが取れなくなった美玖ちゃんを地面に転がしてこちらに向かってくる。
「ほら大丈夫だった」
「本当っスねーって……」
「こっちに来てますよ……!?」
二人がそう叫ぶ通り、蜘蛛の魔物はこっちに一直線に向かってくる。
「そうだねー」
そう言って頷くと俺は大太刀を構え、一撃のもとに一刀両断した。
ぐしゃりと体液をまき散らし、地面に倒れた蜘蛛は少ししたらドロップアイテムを残して消えていく。
「い、一撃……」
さっきの戦いでは見てなかったからか、加奈ちゃんは、俺が一撃で魔物を仕留めたのを見て口をあんぐりと開けて驚いていた。
「す、すげーッス」
そう言ってキラキラ輝かせる大輔君。
そんな二人の反応を横目に転がってる美玖ちゃんに近づくと……
「大丈夫?」
「大丈夫に見える?」
「いんや、まったく」
そう言ってから俺は美玖ちゃんを助けだした。
「……ありがと」
「どういたしましてー」
「くっ……」
そう言って彼女は悔しそうにしていた。
手も足も出ずに負けたんだから、まあ仕方ないっちゃ仕方ない……けど。
「悔しい……」
「まあ仕方ないよ★四の魔物だったからねー」
俺がそう言うと三人はぎょっとした顔をした。
「え、今の★四の魔物だったんスか⁉」
「うん、そう」
そう言って頷く。
★4って言ったら、あれだ。初心者ではなく、プロの……それこそ探索者を仕事にしている奴らが狩る魔物だ。
到底、初心者の三人が戦えるような魔物じゃない。
「ちょっと!?それ知ってたなら早く言いなさいよ!?」
「えー?だってさー、”雑魚”の俺が美玖ちゃんが声かける前に走り出しちゃうんだもん―俺は何もできなかったよー。それに”雑魚”の俺じゃそんな直ぐにこえかけることなんてできなかったしサー」
だから言えなかったのは仕方ない!うん!
「あからさまな棒読み……もしかしてっスけど……」
「ぼうよみじゃないよー」
「百鬼さんもしかして……雑魚って言われてイライラしてたりしたんスか?」
そう言われ俺は目をそらす。
が、それが答えになった。
「子供っスか⁉」
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