第12話 ”最強”と言う一要素
ゴクゴク……ぷはぁ……
水筒代わりのペットボトルから水を飲み、木陰に入ってるベンチに腰を下ろす。
「……平和だねえ」
公園を見渡せば、休憩中であろうOLさんの姿とかカップルさんとか子供連れの家族とか、そんな平和な世界が飛び込んでくる。
「ダンジョンに入れば血肉飛び散る殺伐と世界、そして外に出れば平和な日常……あまりにも寒暖差が激しくて風邪ひいちゃいそうだよ」
そんなことを思いながらもう一口水を飲むと遊具が設置してある公園の一角へと足を運ぶ。
「さ、筋トレしますか」
そういって俺はちょうどいい大きさの鉄棒をつかみ、懸垂を始める。
「……よいしょ」
探索者はみんな日常から体力づくりをしている……かと言えばそうではない。
もちろん、体が資本だから体がなまらない程度に運動したりすることは大切なのだが、如何せん探索者として強くなるにはレベルとスキル。
レベルとスキル。
それはこの世界にダンジョンが出現したのとほぼ同時期に人間が覚醒した特殊な能力である。
初めは一部の人しか覚醒していなかったが、今となっては殆ど全員レベルとスキルを持っている。
レベルとスキルはいうものはざっくり言うと、ゲームのようなものだ。
スキルは、簡単に言うと特殊能力のようなものだ。剣術や斧術のようなもの、魔法なんかがこれに当たる。
そして、レベルを上げれば身体能力とかの基礎能力が上がる。
レベルを上げることによる身体能力の強化は、筋トレよりも効率がいいとされる。
レベルには人によって上限が決まっており、平均は最大50レベル。
ダンジョン探索の最前線組になると最大レベルは90を超えるらしい。
因みに俺を差し置いて世界最強と言われているルーカス・アンダーソンは最大レベルが100を超えているそうだ。
「……ま、俺よりは弱いんだがな」
懸垂を”1分”で百回終え俺は地面に降りる。
強くなるには筋トレより、レベルを上げる。
それがこの世界の常識だが……
……俺の場合は、レベル上限が1という最下級の状況だ。
レベルによる身体能力強化は無い。
だから代わりにこうやって筋トレを毎日のようにしている。
「よし、あとはスクワット……腕立て100回、うさぎ跳び公園一周だな」
そういって俺は筋トレをする。
俺は最強だ。
最強で最前線の探索者だ。
誰も俺に追いつけない。誰も俺を追い越させない。
ダンジョンの最下層を見たいから、何て理由じゃない。
強いやつと戦いたいなんて言うバカみたいな理由じゃない。
すべては俺が有名になるため。
「……最強で最高の配信者になる」
そのための”最強”という一要素。
俺は絶対に守らなきゃいけないんだ。
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