第18話 ハッピーエンド

「……座れよ」

「あ、ああ」


 そう言っておっちゃんは横に座り、俺は黙ってポテトを食べる。

 座るように勧めたが、何か話すというわけでもなく。なんていうか……凄い、気まづい。


「……お前さんは、大丈夫だったか?」


 そう言われて俺はコクリと頷く。


「ああ、まあ……いや、俺よりも。お前の方が大丈夫なのかよ……ネットに写真で回っちまってんだろ?」


 そう言って尋ねてみると男は苦笑いをした。


「まあ、な……」


 そう言った男は笑顔だったが、明かに引きつっていた。

 今、おっちゃんたちに対して世間の風当たりは強い。

 

 理不尽な言葉の暴力で殴られ続けている。


 ……ただ、本当の事を言っているだけなのに。

 

 俺が、全部倒しちまったばっかりに……おっちゃんたちのいう事が嘘扱いされて……


「別に、俺の責任でもあるし……その……すまない、ことをしたっていうか。ごめんなさい……っていうか」


 そういって俺はモジモジとしながら、罰が悪そうにポテトをしゃぶる。


「いいや、あんたの責任じゃない」


 そんな俺に、おっちゃんは強い口調でそう言った。


「あんたは、偶々あそこにいて、偶々あの魔物どもを倒すだけの力を持っていただけだ」


 そう言って男は天を仰ぐ。


「……あんたは、街に魔物があふれ出ないようにあの場で倒しきった。称賛されることはあっても、攻められることじゃねえさ」

「だけどよ、俺が倒したせいでおまえらが……」

「安いもんさ、それくらい」


 そう言った男は、何処か誇らしげだった。


「確かに俺たちは世間から酷い言葉を投げかけられている。そりゃ、結構心に来るものがあるさ」


 そう男は苦しそうに言うが、「けど……」と言葉を繋げる。


「なんの被害が出なかった。それだけで最高にハッピーエンドって奴だ。凄い事だぜ?スタンピードで被害0だ。誰も成し遂げたことのない事だ」


 確かに、スタンピードで被害が0というのは効いたことが無い。

 どんなに小さなスタンピードでも数10人の死傷者が出るのが普通なのだから……


「その上、深層の魔物までいたわけだ。誰も成し遂げたことのない偉業……って、まあ誇らし気に言ったが、俺が成し遂げたわけじゃねえけどな」


 そう言うとおっちゃんは俺の顔を見て笑顔になった。


「……そうだな。あんたがやったわけじゃない。俺が達成した偉業だ」


 そう言って俺が胸を張ると、おっちゃんは少し驚いた顔をした後……「わっはっは」と笑顔になった。


「言うねぇ……謙遜とかはないか」

「当たり前だ。俺は別に……謙遜なんてしないからな?」


 それが俺だ。


「……そう言えばまだ名前聞いてなかったな」

「俺は桃瀬 雄太、あんたは?」

「百鬼 良太郎だ」

「良太郎か……男みたいな名前だな」

「男だからな」

「え⁉そ、そうか」


 そう言っておっちゃんは驚いた顔をしていた。

 まあ、俺は可愛いからな!

 女の子と勘違いさせてしまうのは仕方ない。


「なあ……」

「なんだ?」

「ポテト食うか?」

「いただこう」


 そう言って俺達はポテトを食べながら、何事もない日常を眺めていたのだった。


「……あ、ちなみに雄太お前年齢は?」

「21歳」

「……俺より若いだと!?」

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