承認欲求モンスターな世界最強配信者さんは今日も日陰者
青薔薇の魔女
第1話 俺の方が最強
世界最強。
このダンジョンだらけの世界でそう呼ばれている男がいる。
ルーカス・アンダーソン
世界最強の探索者。最もダンジョンを知る男。最高の冒険者。
今日もまた、彼は伝説を打ち立てたらしい。
ランク★10の魔物。魔物の王……ドラゴン。
誰もが倒せないとされていたその魔物を彼とその仲間たちが”ぼろぼろ”になりながらも倒したそうだ。
誰もが成し遂げられなかったことを成し遂げた彼はまた”世界最強”という称号を不動のものとしていた。
だけど、俺はこう思うのだ……
「明らかに俺の方が最強だけどね!?」
”確かにw”
”そうですねとしか言えないでござる……”
一撃必殺で真っ二つにされた★20の魔物、エンシェントドラゴンを尻目に、俺……百姫(本名、百鬼 良太郎)は今日も二人しかいない配信をしながらそう叫ぶのだった。
「はぁ……グ、ぐぬぬ……このサイトも、こっちもルーカスばっかり……俺だってもうとっくにドラゴン倒してるのに……ブツブツ」
”配信中だぞー”
「知ってるよ⁉ はぁ……」
配信中にも関わらず俺は不覚にもため息をついてしまう。
”ドンマイでござる……”
「ありがと……ねぇ、どうして俺って誰にも見られないのかな……?」
そう『ネモ』さんと、ござる口調の『ムサシ武将』さんに尋ねてみた。
この二人が基本的に俺の数少ないいつも来てくれているリスナーさんである。
”そりゃ、インパクトに欠けるからじゃね?”
「インパクト?」
ネモさんにそう言われて俺はカメラにバンッと胸を張る。
「この見た目美少女な究極の可愛い男の娘が、深層モンスターを一撃で屠り、まだ見たことないダンジョンの世界を届けるこのチャンネルにインパクトが欠けると⁉」
”改めて聞くと属性盛盛過ぎて草w”
”インパクトは十分あるでござるな……”
「そうだろう!?」
うんうんと頷いた。
俺以上にインパクトあるダンジョン配信者なんてそうそういないさ。
"うーん、やっぱりみられてないのはフェイク動画配信だと思われてるからというのもあるかもでござる”
「そう?」
”まあ、姫ちゃんの見た目がそれだからねー。初見じゃフェイクって見られても仕方ないよ”
「そうなのかー」
うーん、まあでも冷静に考えてみれば普通の人間からしたらこんな服装で、こんな美少女がダンジョンのモンスターを一撃で倒せると思うかというと……
「普通はフェイク認定されちゃうかー」
”そう言う事でござる”
「けどさ、フェイク認定されるのは分かるけど……フェイクてそんな悪いかな?まあ動物園から像が逃げ出した―とか、人が言ってないことを捏造したりとかはダメだけどさ……一応俺がやってることってエンタメだろ?誰にも迷惑かかってないと思うんだが……いや、勿論俺の配信はフェイクなんて一切ないリアルタイム映像なんだけども……」
”うーん、ダンジョン関係の話題は結構フェイクかどうかが厳しいからねー”
「そういうもん?」
”そう言うもんでござる”
そういうもんか。
”昔、ダンジョンで到達してない階層をフェイク配信した配信者が居て、その情報を本当だと思って潜った探索者さんがひどい目にあったって事故が多発しちゃったそうだよー。それからフェイク配信関係にはみんな敏感になってるそうな”
ネモさんの説明を見て俺は納得した。
「……なるほどなー」
”ダンジョン探索は自己責任と言う物の、わざわざ間違った情報を流すのはだいぶ悪質でござるな”
そう言われて、ムサシさんの言葉に頷いたのだが……。
「……まあでも、俺の配信はフェイクじゃないからな?」
”それは分かってるよー”
”分かってるでござるよー”
そう言って俺がジト目でそう言う。
「分かってるならよし」
わかってくれた二人にとびっきりの笑顔を見せる。
キュートで可愛い俺様の笑顔だ。
「……にしっ……ってあれ?もしもーし二人とも―?」
”は、見とれていたでござる”
”鼻血でた”
何の反応も無くてちょっと心配になったが、どうやらただ見とれていただけのようだ。
「そっかー、見惚れてただけならよかったー」
全く、反応来ないからびっくりしちゃったじゃないか。
”初見です!”
そう思っていると、コメント欄に二人以外のコメントが書き込まれたのが見えた。
「っ……初見さん!?」
それを見て俺は思わず声が裏返ってしまった。
久々の初見さんだ!
「は、初めまして。俺、えっと私?は百姫って言います。いつもは、というかいつもダンジョン攻略の方の配信をしておりまして……」
俺がそうてんぱりながら自己紹介をしていると、コメント欄で動きがあった。
”テンパリすぎて草w”
そう、ネモさんに笑われていた。
「っ……仕方ないでしょ⁉だって久々の初見さんだよ⁉そりゃてんぱるし、焦るしあばばばばばば……」
”落ち着くのでござるよ~”
「そ、そうだね。ひっひっふー」
そう言って呼吸をする。
”滅茶苦茶かわいいですっ!”
「あ、えっと……ねこねこさん、ありがとうございます!あ、よかったら、ゆっくりみてってくださ……」
初見さん……『ねこねこ』さんにそう言っていたその時だった、俺の後ろから巨大な斧が振り下ろされ土煙を上げて地面に突き刺さった。
”主さん!?大丈夫ですか!?”
砂煙の中、コメント欄に心配そうなコメントが書き込まれた。
”あ、あぁ……私がコメントを書き込んだばっかりに……”
そう落ち込む『ねこねこ』さん。
そりゃそうだ。自分に気を取られて、魔物に不意打ちされてしまったわけだから、責任を感じる事だろう。
だけど大丈夫だ。だって……
”姫ちゃん!?”
”姫様!?……まあ、大丈夫でござるか”
”まあ、確かに”
突然の攻撃にいつもの二人も驚いていたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
いきなりの不意打ち、そして地面が割れるほどの攻撃。
普通の人間なら死ぬだろうが……
「ん、大丈夫だよ。だって知ってたもん後ろから魔物来てたの」
砂煙が晴れるとそこには無傷の俺がいる。
”良かった……”
”知ってたw”
”まあ、当然でござるな”
いつもの様、何時もの通り。
俺は流れるようにして背中に括りつけていた野太刀を抜き……奇襲を仕掛けて来た魔物……★18の魔物であるミノタウロスキングに斬りかかる。
”終わったな”
”終わったでござるな”
「はあっ……!」
そして、反撃しようとしたミノタウロスキングを一撃のもとに脳天から真っ二つにしたのだった。
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